ジャック・ジョンソンのブラッシュファイアー・レコーズに所属したこともある、フリー・サーファーとしても名高いドノヴァン・フランケンレイターの3枚目『パス・イット・アラウンド』。以前ジャックのライブを観たときに気付いたが、俗に言うサーフ・ミュージックとはレイドバックして気持ちいいだけの音楽じゃない。下手なエモ・バンドよりも一体感を味わえて、なおかつ多幸感で胸がいっぱいになるのだ。それは彼らがひとえにグッド・メロディにこだわっているからで、それが結果あらゆるストレスから解放された、ハッピーなヴァイブとなってリスナーに伝わっているからなのだろう。
G.ラヴやベン・ハーパーらスウィートなゲストも参加した本作もまさにそんな至福の音世界を味わえるアルバムであり、華やかなホーンやアーバンなシンセなど音色もバラエティに富んでいて、柔和なドノヴァンの声の上でファンクの躍動とアコースティックの穏やかさが絶妙な温度で共存している。聴きながらじんわりと幸せが溢れてくるようで、体がふわーっと軽くなっていく。ひたすらシンプルなのに、心はどんどん満たされる、そんな音楽。(林敦子)