渾身の集大成

M83『ハリー・アップ・ウィ・アー・ドリーミング』
2011年10月12日発売
ALBUM
M83 ハリー・アップ・ウィ・アー・ドリーミング
M83が転機を迎えたのは05年の3rd『ビフォアー~』。相方が辞めてアンソニーのソロになったというのが大きいが、音楽性のスケールが大きく変わった。初期のエレクトロ・シューゲイズな作風から、大作志向とも取れる大仰なアレンジとメジャー感を増したポスト・ロックとニューウェイヴの折衷へ。ケン・トーマス(シガー・ロス、コクトー・ツインズ)と組んだ前作は高い評価を得たが、ファンの間では好みの分かれるところもあったのではないか。そして続く新作は、2枚組・20曲超のヴォリュームと、さらに突き抜けた様相を呈している。集大成的作品と本人が語る通り、大掛かりなコンセプトも窺わす作りはプログレ的ともいえ、インタールード的なインストを挟み進行するシネマティックな展開など構成に抜かりがない。シューゲ~アンビエントなサウンドスケープから近作のダンス・ポップ調まで織り交ぜた曲が並ぶが、本人によれば、とりわけ自身のヴォーカルに手応えを掴んでいるようだ。それは話題のゲスト、ゾラ・ジーザスの歌声さえ後景に押しやるようにエモーショナルで力強い。この覚醒というか肥大ぶりはミーカにも近いか?(天井潤之介)
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