はじまりを掴んだ

plenty『plenty』
2012年02月15日発売
ALBUM
plenty plenty
『拝啓。皆さま』というファーストアルバムを聴いて、こんなに繊細でどうやって生きてくんだよ!?なんて思った。その印象がガラッと変わったのが“人との距離のはかりかた”。距離なんてはからない関係になりたいと聴き手に歌いかけ、小さな部屋を出て、世界と、音楽を作って生きることに向き合っていく。そんな柔らかなメロディの決意表明のようだった。アルバム『plenty』は、そこからドラマーの脱退というアクシデントも経て、世の中の不条理や、愛という得体の知れないものに揺り動かされながらも正直に、ミュージシャンとして誠実に1曲1曲に向き合ってきた彼らの、もがかなければ見えなかった美しい結晶のような作品だ。
 
ラストの“蒼き日々”で《朝が来るまでは僕だけが正義。》と歌う切実なフレーズが、江沼のガラスの心そのものみたいなハイトーン・ヴォイスで胸に迫る。でも壊れそうな心を守るのではなく、ちゃんと生きたくて誰かを愛したくて強くあろうとする気持ちが響いてくる。この制作を通じ自分たちが音楽を選んだその理由にも気付いたのでは。バンド名を冠した今作に、ここから始まるという決意を感じた。(上野三樹)
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