つぎはぎの魔法

フレンドリー・ファイアーズ『フレンドリー・ファイアーズ』
2008年09月24日発売
フレンドリー・ファイアーズ フレンドリー・ファイアーズ - フレンドリー・ファイアーズフレンドリー・ファイアーズ
すでに“パリス”があちこちでアンセム化しているし、サマソニも盛況だったので期待していたが、届いたこのデビュー・アルバム、恐ろしいほどよくできてるな、というのが第一印象で、とにかく踊れない曲がない! ビートもシンセもエレクトロニック、というベース部分だけとってみれば、このサウンドは真新しいものじゃない。しかし、個人的にも一連の「踊れるロック/ポップ・バンド」のなかでも、フレンドリー・ファイアーズがすごく好きなのは、彼らのサウンドにはハードコアにソウル、ブリティッシュ・トラッドにテクノetcいろいろなものが詰め込まれていて、それでいながらじつはものすごくシンプルだから、だ。

音の要素だけを考えると、ブロック・パーティー〜フォールズの継承者とも呼べるだろう。けれどこの、たとえばまったく憂鬱を抱え込んでいないようなところや、複雑で緻密なサウンドスケープや幾通りにも解釈できるような文学的な歌詞に走ってしまわないところが、とてつもなく爽快なのだ。何しろ、「いつかパリに住みたい」とか「恋の病だ」とか、そんなことばかり歌っている。しかし、そんなどこにでもありそうで、じつはなさそうな、どうでもいいようなことこそがポップ・ミュージックの醍醐味であり、そこに呑み込まれてしまいたい、と思わせるものなのだ。そういうわけでこの人達は、どちらかと言うと、(サウンド面がということではなく)フランツ・フェルディナンドやシザー・シスターズ、!!!が持つ快楽性に近いものを宿している。けれどもそれを力むことなく飄々と放ってみせる、そんなスマートな新世代である。(羽鳥麻美)
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