属の破断面で神経を研磨するようなディストーション・ギターの音色とエレクトロなシーケンスとファルセット満載のハイトーン・ヴォーカルが決して寄り添うことなくぎりぎりの引力を保ちながら響き合う音像からは、ロックの文学性を無効化した跡地にまったく新たなアンサンブルの美学を構築しようとする鋭利な探究心が濃密に滲み出してくる。
08年に突如ディス・エトールを解散させた後、フロントマンだったウーがソロ・ワークの場としてスタートさせたプロジェクト=ストーキング・ホース。遊びの延長的スタンスからレコーディングが始まったはずが、次々に周囲を巻き込み共犯関係を築いているのも、まさにこの音の、目映く輝く暗黒のような妖術的ヴァイブによるものだろう。メランコリアが軽やかに弾むM1"キー・ストロークス"も、グロッケンとピアノが織り成す残響音の海の底に身を沈める背徳的な悦楽に満ちた最終曲"ラメント"も最高。(高橋智樹)