破壊の先にあるものは究極の美

女王蜂『蛇姫様』
2012年05月23日発売
ALBUM
女王蜂 蛇姫様
何という破壊感! そして創造性! スクラップ&ビルドとは言い古された言葉だが、本作のために用意された言葉のようだ。これまでチラ見しかさせてこなかった自らの内面を、解体新書のごとく腑分けして見せ、痛みも恐怖も生々しく曝け出す。取り返しのつかないほどの破壊と、そこから始まる新しい生命と未来。今の日本のように満身創痍となりながら、アヴちゃんは進むために七色の声で歌う。
 
既にライヴでは御披露目済みの“ストロベリヰ”はデストロイと韻を踏み、リスキーな恋愛は甘美な運命共同体だと歌う。前作『孔雀』での“告げ口”に続く、起きてはいけないリアルな物語は“無題”。堕胎という余りにも悲しい物語の、言葉にならない思いを長いインストで表す。アヴちゃんのピアノが生かされたドラマチックな演奏が更に切々と迫る。やはり彼女のピアノを中心に歌う“鉄壁”では、不安を抱えながらも「あたしが愛した全てのものに不幸が訪れませんように」と祈る。歌が埋もれるほどパンキッシュでパワフルな演奏に身を任せ抑えきれない感情が涙となってこぼれたら、それが女王蜂の最上の作品だ。(今井智子)
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