ビリー&ザ・スマパンズ

スマッシング・パンプキンズ『オセアニア~海洋の彼方』
2012年06月20日発売
ALBUM
スマッシング・パンプキンズ オセアニア~海洋の彼方
21世紀のビリー・コーガンが奏でる音に賛否両論は付き物なんで、スマッシング・パンプキンズ通算7作目となる本作に対しても、既に両極端の評価が飛び交っている。ただ嬉しいのは、前作とは異なり、今のところ"否"より"賛"のほうが目立っていること。

ビリー本人、『メロンコリー~』以来の手応えを感じたと宣言した『オセアニア』。ロッキング・オン2012年8月号に掲載されている写真がその象徴だが、本人は"バンド"を強調しているとはいえ、本作におけるスマパンとは、平等の立位置にいるメンバー4人で構成されたユニットではなく、あくまで"ビリーと他3人"である。そして、それこそがこのアルバムの勝因だと思う。かつてのビリーは、もはや人々が記憶するスマパンはそこにはないというのに、そのフォーマットにこだわり、しかしその裏腹にそれが自分の独壇場と公言し、宙ぶらりんになっていた。しかし、複数人から構成されているバンドであると同時に独壇場でもあるという矛盾を、一回り年下のメンバーたちとスマパンを"再結成"させることで実現したビリーは、スマパンとしてのサウンドを、初めて完全に自分のものとして鳴らすことに成功しているのだ。なので、ギターのディストーションから、メランコリックな旋律まで、本作ではスマパン印の"あのサウンド"が炸裂する。しかし、それはあくまでひとつの要素として使われているだけ。作品自体は、刹那を大事にする90年代のオルタナとは正反対に、複雑で大儀なものに仕上がっているから面白い。ビリー・コーガンという男の、若干面倒臭い魅力が詰まった傑作と言えるだろう。(内田亮)
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