ロック性善説

ASIAN KUNG-FU GENERATION『藤沢ルーザー』
2008年10月15日発売
ASIAN KUNG-FU GENERATION 藤沢ルーザー - 藤沢ルーザー藤沢ルーザー
藤沢から鎌倉まで15の駅を持つ江ノ電。そのなかから10の駅をピックアップして曲名に冠し、実際の駅の順番通りに並べたという、緊急リリース・アルバム『サーフ ブンガク カマクラ』。その冒頭を飾る曲であり、先行シングルとなる“藤沢ルーザー”。プレイボタンを押した瞬間に初期のアッシュを彷彿とさせるような陽性のギター・リフが飛び出してくる。この時点で、バンドとして大きなギアチェンジがあっただろうことを感じる。エレキ・ギターが本質的に持っている喜びの感情。エイト・ビートが身体に訴えかけてくるムーヴ。更に身体を揺り動かすように、振動を伝えてくるベースの音圧。そうしたロックが持っている当たり前のパーツだけを使って、シリアスなロックを鳴らすことに成功している。ここではロックンロールがロックンロールというだけで瑞々しい輝きを放っている。

性悪説が当然のものとなりつつある世界の中で、性善説としてロックを鳴らすこと。ロックンロールのシンプルな力を信じ抜いてみせること。それを絵空事にしないための決意を、この新しいアジカンには感じる。(古川琢也)
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