2008年のサード・アルバム・リリース後、彼らは活動休止状態にあった。リード・シンガーのケリーはスパンク・ロックのトリプルエクスチェンジと組んでソロ・アルバムをリリース。ギタリストのラッセルはアッシュにゲスト参加する一方、女性シンガーをフィーチャーしたニュー・ウェイヴ寄りポップ・ユニット、ピン・ミー・ダウンとしても活動していた。ベーシストのゴードンは、USオルタナティヴ・ロックっぽくもあるバンド、ヤング・リージョネアーを始めた。そのまま自然消滅か? 残念すぎる……と思わせておいて、シンプルに『フォー』と題された4作目をなにくわぬ顔で発表してしまうのも、実にかっこいい。
2000年代なかば、結成直後から大きな注目を集めていたころの彼らは、UKポスト・パンク・ミュージックの( 25年以上をへた)継承者のひとつと目されることが多かった。新作『フォー』では、当時のフレッシュな躍動感が復活している。それと共に、ソロ活動で試みられた幅広い音楽性も理想的に反映されている。ウィチタを離れて新しく契約したのはニュー・ヨークのフレンチキッス・レコーズであり、アット・ザ・ドライヴ-イン.マーズ・ヴォルタやロカスト、そしてヤング・リージョネアーのEPなどを手がけてきたアレックス・ニューポートをプロデューサーに迎えたという事実も、彼らの新展開に大きく寄与している。(伊藤英嗣)