オルタナティブ&インディの「2000年代」が、いよいよ歴史になりつつある件

昨今、2000年代のオルタナティブ、インディ・シーンの総括にも似たアクションが続いている。

例えば11月に13年ぶりの来日公演を控えているインターポール。彼らのその来日公演は最新作『マローダー』を引っさげての新作ツアーであり、同時にデビュー・アルバム『ターン・オン・ザ・ブライト・ライツ』(2002)の完全再現ライブとの二部構成になっている。


デビュー・アルバムの再現ライブと言えば、ブロック・パーティも『サイレント・アラーム』(2005)の全曲再現ツアーを行い、同作のライブ・アルバム『Silent Alarm Live』を来年2月にリリースすると発表した。また、ザ・ナショナルは彼らのブレイクのきっかけとなった初期の名盤、『ボクサー』(2007)の10周年を記念した再現ライブを収録した『Boxer (Live in Brussels)』を7月にリリースした。

インターポール、ブロック・パーティ、ザ・ナショナルに共通しているのは、2000年代にデビューしたバンドだということだ。そして、2000年代を代表するバンドであった彼らの原点を見つめ直す動きは、彼ら自身の総括であると同時に2000年代という時代性に対するセルフ批評の意味合いも孕んでいると言える。


また、ヴァンパイア・ウィークエンドが過渡期を、MGMTが原点回帰を、そしてダーティー・プロジェクターズが再発見を表明した今年のフジロックも、期せずして2000年代デビュー組の過去と現在を見渡す機会になっていた。


昨年には2000年代のNYシーンを振り返ったオーラル・ヒストリー本、『Meet Me in the Bathroom』が刊行され、大きな話題を呼んだ。「Rebirth and Rock and Roll in New York City 2001–2011」なる副題にも説明されているように、この本はストロークスの登場によって世界的ムーブメントになったロックンロール・リバイバルや、LCDサウンドシステムを筆頭とするブルックリンのダンス・パンク・シーン等を、彼らの膨大な証言と共に振り返った貴重な資料で、ドキュメンタリーとして映像化も決定している。


これらの一連の動きから思うことがあるとしたらそれは、2000年代がようやく「歴史」になりつつあるということだ。2010年代も後半に差し掛かった現在、2000年代のバンドや曲を今改めて知った新世代が音楽を作り始めている。ついこの間まで自分たちの横で並走する同時代のものだったはずの2000年代の音楽が、90年代や80年代のそれと同列の過去として再発見、再評価される時代になったのだ。

2000年代はどういう時代であったのか。当事者であったアーティストたちも、今新たに知り始めている新世代のリスナーも、その定義を意識的にせよ無意識にせよ、求めているように思えるのだ。

ちなみに、従来アーティストのキャリア総括と言えば、手っ取り早いのはベスト・アルバムを出すことだった。でも、2000年代組の彼らはベスト・アルバム的な縦割りのダイジェストがどうもしっくりこない世代でもある。そう言えば、ストロークスもアークティック・モンキーズもベスト・アルバムは出していない。現在、ベスト・アルバム的な機能はすでにサブスク・ストリーミングのプレイリストによってプリセットされているわけで、彼らの再発見や再評価、2000年代の歴史化は、これまでのどんな時代よりもスムーズかつフラットに進む土壌になっていると言えるだろう。


「20年経つと時代はリバイバルする」ということがかつて言われていた。例えば90年代にはダサいと見なされていた80年代は、20年経った00年代にニューウェイヴ・リバイバル、ポストパンク・リバイバル、ニューレイヴ等の名前を与えられて一気にブレイクした。ファッションの面でもいきなりジャケットが肩パット入りになったり、ハイウエストが流行したりしたのも記憶に新しい。そして2010年代のオルタナ、インディ・シーンにも、グランジやローファイ、シューゲイザー、トリップホップといったいわゆる90年代オルタナのリバイバルが再び20年の周期でやってきた。


じゃあ、来たる2020年代には2000年代がリバイバルするのだろうか? 現在の2000年代の歴史化の作業はその前段階なのだろうか? 少なくとも、音楽に関してはそうはならないんじゃないかと私は感じている。そう思う根拠の一つは、ここ(https://rockinon.com/blog/yogaku/179977)でも書いたように、リバイバルという過去との距離感を必要としない新たな世代観の誕生だ。

2001年に初代iPodがリリースされたことにも象徴的だが、2000年代は音楽の作り方に加えて聴き方が根本からひっくり返った時代だった。そう、そういう前例なき時代を、2011年のSpotifyアメリカ進出を契機にストリーミング時代が到来したこの2010年代に歴史化するとしたら、きっとそれは今までにない新たな歴史との付き合い方の第一歩になるはずだ。(粉川しの)
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