もう「リバイバル」は成立しない? インディ・ポップの現在を象徴するハイブリッドな才能に注目

  • もう「リバイバル」は成立しない? インディ・ポップの現在を象徴するハイブリッドな才能に注目 - pic by Olivia Bee

    pic by Olivia Bee

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憧れのヒーローであるトッド・ラングレンビッグ・スターのジョディ・スティーヴンスらをゲストに迎え、満を持してロック・オペラ的コンセプト・アルバム『ゴー・トゥ・スクール』を作り上げたザ・レモン・ツイッグス

60年代のブリティッシュ・インヴェイジョンやウエスト・コースト・サウンド、70年代のグラム・ロックやハード・ロック、さらにはソフト・ロックやアダルト・コンテンポラリー、はたまたオペラやボードビルまで、ジャンルも時代も超越したレモン・ツイッグスのバックグラウンドは、両親が膨大なレコード・コレクションを所有していたというアドバンテージも含めて、特殊な環境下での英才教育の賜物であると捉えられてきた。

しかし、前作『ドゥ・ハリウッド』が未だ10代だった兄弟が鳴らした、その若さに似合わぬ古のロック、ポップスの博覧状態に驚かされたアルバムだったとしたら、ある種の「キワモノ」だった彼らのそのレトロ・フューチャーなアイデアの数々が、壮大な設計図を有するコンセプト・アルバムを構築する資材として贅沢に使われた本作は、驚きが納得に変わった一作だったと言える。



ちなみにこの数年間のインディ・ポップ・シーンを見渡してみると、程度の違いはあれどレモン・ツイッグス的な才能があちらこちらで出現し続けているのも事実だ。同様の感覚はこの夏のフェスの現場でもしばしば感じた。例えばヒップホップを当たり前の下地にしつつも、ギター・ポップやガレージ、ジャズやAORをひょいひょい横断していくレックス・オレンジ・カウンティーのマジカルなステージや、80年代のニューウェイヴやゴス、インダストリアルと90年代的なトリップホップやガラージ、そして今風のアンビエントなエレクトロ・ポップを、二人の少女の危ういファンタジー的世界に落とし込んでいったレッツ・イート・グランマのパフォーマンスがその代表例だろう。


レトロでマニアックなエレメンツを編み上げた結果、なぜか風通しのいい極上のモダン・ポップが生まれてしまう彼らのサウンドに共通しているのは、過去と現在が完全な横並びの感覚から生み出されるネオ折衷主義のようなもの。そしてそれは、レモン・ツイッグスや彼らが属する世代そのものが、○○リバイバルといった「過去との距離感」を必要としないフェーズに丸ごとアップデートされた結果だと考えるのが妥当だ。サブスクのストリーミングとレコード・ショップを足で回ってのアナログ収集を当たり前に使い分ける彼らは、情報の処理能力の向上というよりも、むしろ処理されない膨大な情報の飽和をそのまま心地良い常態として受け入れ、その時々の気分やモチベーションで自分たちらしくトリミングしていくセンスを持った世代だとも言える。


10代の兄弟バンドとしてデビューしたレモン・ツイッグス、現在20歳のROC、そして19歳コンビのレッツ・イート・グランマと、そんなハイブリッド・ポップの主役たちは皆とにかく若いわけだが、その究極と呼ぶべき新星が平均年齢13歳(!)の三姉妹、Honey Hahsだ。彼女たちはネオ折衷主義のメルティング・ポットと化しているサウスロンドン出身で、ゴート・ガールやムーンランディングスのサポートを務めるなどシーンの妹分として可愛がられてきた。しかし、彼女たちのデビュー・アルバム『Dear Someone, Happy Something』は、その年齢の話題性を差っ引いても素晴らしいのだ。


元パルプのスティーヴ・マッキーが保護者兼プロデューサー的な立場でサポートしているのだが、彼は3姉妹のやりたいことを先回りして示すような野暮をやる大人ではない。姉妹のおしゃべりをそのまま譜面に写し取ったようなフォーク・ポップや、ふと大人びた瞬間をのぞかせるラウンジ・ポップ、さらには驚くほど端正なハーモニーやコーラスが誘うサイケ・ポップと、鼻歌のように何気無く始まる曲が、気ままな足取りで次々と表情を変えていく様は本当に驚異的。もちろん、彼女たちがその一つ一つにいちいちインデックスをつけてジャンルを整理しているわけもない。

ちなみにこちらの“Stop Him”で歌われる「Him」とはトランプ米大統領のこと。


レモン・ツイッグスの本拠地であるNYからも、彼らに続くハイブリッド・ポップの新星が続々と登場している。例えば50S、60Sのガールズ・グループを彷彿させる砂糖菓子のようなレトロ・ポップと、ダークでスプーキーな90年代オルタナ・サウンドが併走するThe Shacksのデビュー・アルバム、『Haze』は出色の出来だった。


また、一見して露悪的なまでにケバケバしいビジュアルとグラム・サウンドで話題のUniは、ゴスやインダストリアル、はたまたソウルやAORまで、片っ端からその過剰の中にさらに突っ込んでいく、存在自体がハプニング・アートのようなバンドだ。


そして最後に紹介するのが再びロンドン出身のSons Of Raphael、彼らはレモン・ツイッグス同様の21歳と19歳の兄弟デュオ。まだシングルしか出していないのだが、もろノーウェイヴなアヴァン・パンクもあればブライアン・ウィルソンばりのサイケ・ポップもあるし、ローファイ、ガレージなやりっぱなし&鳴らしっぱなしと、ジョー・ミークを彷彿させる偏執的サウンド・プロダクションが同居する矛盾も当たり前にまとっているという、早くもエキセントリシティが炸裂中の異色のニューカマーだ。この折衷の先でデビュー・アルバムがどんな地点に着地するかは全くの未知数だ。


ただし、可能性は未知数ではあっても彼らの中でSons Of Raphaelとしての譲れないテイストは既にしっかり確立されているのが重要なポイントで、この点は本コラムで紹介したアーティストたちに共通する感覚だ。彼ら、彼女たちは自分たちが「ハズれた」こと、「奇をてらった」ことをやっているつもりは毛頭ないはずで、あくまでも自分たちらしさに基づく折衷主義なのだ。

兄弟が通っていた名門ボーディング・スクールで撮影を敢行したデビュー・シングルのMVも強烈だ。“Eating People”なんてタイトルの曲を、卒業生だからとチャペルで演奏させてくれたカトリック系スクールというのも懐が深すぎるというかなんと言うか……とにかく、色々な意味で目が離せないニューカマーなのです。(粉川しの)

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