ねごとを、ひたすらに天真爛漫なミュージシャンだと思っていた。au LISMO!のCMに起用された“カロン”で一躍注目を集め、その後も着実にスケールアップ、前作『sharp#』でオリコンシングルトップ10入り……改めて書くと、順風満帆な成長ぶりに驚く。サウンドも「透明感」「浮遊感」「煌めき」「みずみずしさ」に溢れ、のびのび音を楽しむ様子が微笑ましかった。しかし今作では、そんな彼女たちがいま変化の季節にいることがわかる。《なんとなくうまくいく気になって/掲げていた自信は/いつしか気づいた時にはもう/空っぽの栄光》(“Lightdentity”)と、音楽家としての自身をシビアに見つめ、おっかなびっくりではあるかもしれないが、赤裸々なメッセージを発するようになったのだ。キャリアを重ねリスナーとの絆を紡ぎ、「ねごと」という土台を完成させたからこそ、心をさらけ出す強さを手に入れたのだと思う。ぽわんと浮遊するイメージだった彼女たちも苦悩を抱えている、私たちとなんら変わらない一面を見せてくれたことが、とても嬉しい。強くなったねごとの、今後が楽しみだ。(藤田華子)