サブポップ太鼓判のベスト新人
メッツ『メッツ』
2012年10月10日発売
2012年10月10日発売
ALBUM
今年のサブポップが最大出力で推している期待のニューカマーがこのトロント出身の3ピース、ザ・メッツだ。幾度もリヴァイヴァルを重ねていく中で洗練され、元来の意味とかけ離れて系統整理されたジャンルになりつつあるポスト・パンクというものを、彼らは徹底して原初の、整形前の歪なかたちのままこの2012年に蘇らせようとする強者達だ。納屋に籠もって1週間でレコーディングしたという本デビュー・アルバムを通して聴くと、もはやそれは「カオス」という正義を掲げたコンセプチュアルなアートを目撃している気分になるし、いかに自分の耳が昨今のお約束に飼いならされていたかに気づかされる痛快無比な一枚でもある。ただし、ゴチャッとカオスでありながらも茫洋とした瞬間は一時もなく、音像は恐ろしくソリッドで、ジーザス・リザードやシェラックと比較されるのも納得だ。また、漆黒のスーパー・ハードコア・サウンドを突き抜けた先に半ばヤケクソのような乾いた笑いが宿っている点はピクシーズの狂気に近いものも感じる。見た目は超地味なネルシャツ眼鏡君であるのも小洒落た退路を絶つ覚悟が滲み出ていてナイス。(粉川しの)