キング・オブ・ユガミ

ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・ エクスプロージョン『ミート・アンド・ボーン』
2012年10月24日発売
ALBUM
ザ・ジョン・スペンサー・ブルース・ エクスプロージョン ミート・アンド・ボーン
キャット・パワーの新作『サン』にジュダの名前を久しぶりに見つけて本体は、と思っていたところに届いた新作だ。一度は取っ払ったジョン・スペンサーの看板もルイジアナの沼地を突進するにはやっぱ必要とドロを落として傾いた玄関に掲げたわけだが、やっぱりこのざらついた音は最高だ。むやみに人の気持ちを不安と昂揚のスパイスまみれにしながらねじ込んでくるテンションはかつての『エクストラ・ウィドゥス』などに興奮した瞬間にタイムスリップさせる。しかし、そこにノスタルジックな匂いはまったくせず、より深い地点に到達した達成感だけが脳裏で激しくフラッシュする。

スライ・ストーンの『暴動』録音時のミキシング・コンソールを使ったということだが、その必要性と成果がはっきりと音でも吐き出されてくる。夾雑物まみれ、歪みっぱなしのサウンドで、バランスも展開も完全無視だが、それだからこそ持ちうるギリギリの快感がトルネード状態であちこちから吹き出してくる。まさにJSBXに求め続けているのはこの音だ。いっさいまとまりも熟成もしないトリオ全員の気持ちが乗り移った音に酔いしれる。(大鷹俊一)
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