音が、実在して、そびえ立っている

ワイアー『チェンジ・ビカムズ・アス』
ワイアー チェンジ・ビカムズ・アス
2年ぶりの新作。1979〜1980年の間に作られ、録音されることのなかった楽曲を発掘して新たなアレンジを施した作品だそうだ。新曲作りのネタ探しのために、アーティストが昔作ったデモ・テープを聴き直し、ヒントを得る、というのはよくあることだ。だがここに提示されたものはまるで事情が異なる。普通なら今の時代に合わせブラッシュアップして意匠を凝らすはずなのに、ここでは紛れもなく、1980年、ポスト・パンクの時代に、怠惰で古臭いロックンロールの形式を完全に脱構築した、20年早い「ポスト・ロック」を提示していた、あのころのワイヤーの音がさらに強度を増して鳴っているのである。1980年の楽曲(素材)が2013年にそのまま接続され、しかも、その差33年の時代差などまったく感じない今の音になっている。いかに当時の彼らのアイディアが時代を超えて普遍的であるか、彼らの姿勢や本質が不変であるかということだ。徹底して情緒を排した鉱物的なテクスチュア。いかなるルーツからも切り離された彼らだけのオリジナルであるからこそ、その音は誰にも真似されず、従って消費されることもないのである。(小野島大)
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