未踏の境地を踏み固め

ザ・ディリンジャー・エスケイプ・プラン『ワン・オヴ・アス・イズ・ザ・キラー』
2013年05月15日発売
ALBUM
ザ・ディリンジャー・エスケイプ・プラン ワン・オヴ・アス・イズ・ザ・キラー
これまた強力盤。のっけから噴き出すエネルギーに煽られ、聴いていると高笑いが湧き起こってくるようだ。コンヴァージの音楽が恐ろしい熱量の背後にストイックな視座を感じさせるのに対し、このバンドは緻密な計算を積み上げて狂気をブチまける。相変わらずジャズからテクノまで食い散らかした独自の音像は、普通のメタル・バンドには有り得ない世界。「ハチャメチャ」みたいなニュアンスでよく誤用される「破天荒」という言葉は「前人未到の地を切り拓く」が本来の意だが、まさに彼らを形容するのに相応しい。

キャリアの節目節目で、マイク・パットンやナイン・インチ・ネイルズとの邂逅も糧にしつつメンバー脱退の危機を乗り越え突き進んできたザ・ディリンジャー・エスケイプ・プラン。今作もセカンド・ギタリストが抜けて4人編成で作られている。ただし、もともとケガで離脱したメンバーのサポート的な人間だったので、むしろドラムのビリー・ライマーが固まったことで安定した印象。前作ではピアニストのマイク・ガーソンを取り込むほど風呂敷を広げてみせていたが、この最新アルバムでは照準を定め直したような腰の据わった余裕も感じられ、心の底から頼もしい。 (鈴木喜之)
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