「スタイル」の有無が占うもの 

椎名林檎『いろはにほへと / 孤独のあかつき』
発売中
SINGLE
椎名林檎 いろはにほへと / 孤独のあかつき
椎名林檎を長年聴き続けてきて思うことは、「スタイルとは何なのか」ということだ。彼女の場合、それは美意識と言い換えてもいいが、ある時点までは「スタイル」はきっと彼女の価値観のすべてだったのではないだろうか。と同時に、それが「表現」に先だってしまうリスクに誰よりも自覚的だったのも林檎自身だった。だからこそ、東京事変の楽曲は、「スタイル」と「表現」のせめぎ合いが美しく、どこか一点のバランスが狂えば途端に崩れてしまいそうな完璧性という背反した世界観を保つことができた。

――のだとして、デビュー15周年の記念日に突如リリースされるこの新曲には一転、「スタイル」がない――とは言わないが、えらくシンプルな歌謡曲的構造が肝であるこの楽曲からはあの強烈な美意識が匂い立ってこないのだ。じゃあ何が際立っているのか。歌だ。歌とアレンジ/はったりがあくまで明確な主従関係にある。そして、この林檎は明らかに解放されている。これを15年目の原点回帰と言うのは安易だろうが、このイントロに“歌舞伎町の女王”を連想させるのは偶然ではないと思う。(小栁大輔)
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