SF文学ロックの新先鋒

SuiseiNoboAz『ubik』
発売中
ALBUM
SuiseiNoboAz ubik
バンド名がカート・ヴォネガット著の『タイタンの妖女』から生まれたのなら、『ubik』はフィリップ・K・ディックの同題作品と見て間違いないだろう。そんなことを想像させるだけで嬉しくなるのだが、米SFかぶれなサウンドというわけではなく、むしろ日本語で歌うことに軸足をしっかり置き、研ぎ澄ました音がが真っ直ぐ脳天に刺さってくる。

3年前の初作で向井秀徳をサウンド・プロデュースに迎え、スパルタ録音で経験値を高めているだけに、本作も説得力のある歌と音作りになっている。ギターの歪みは必然で、声はあくまで強く。ドラムは遠慮せずベースはブレない。“T.D.B.B. PIRATES LANGUAGE”はザゼン・ボーイズを髣髴させるハードエッジな曲だが、オマージュであると同時に今の彼等を全力投入した成果だ。詞・曲のバランスのよさはアナログフィッシュに通じるし、頻出する《14歳》というワードは話題の本よりハイロウズを連想したりもする。こんなにオマージュを詰め込んだその先にオリジナリティが炸裂し、乾いたメランコリーに酔わせる。このメジャー初作で宣戦布告だ。(今井智子)
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