先行するシングル曲とアルバム『クレイジー・クラウン・タイム』で2010年代にシンガー・ソングライターとしてのソロ・デビューを果たし、何やら完全に勢いづいているデヴィッド・リンチ御大のセカンドアルバム。前作はポスト・パンク風エレ・ポップをシネマティックに展開していて驚かされたし大きな話題となったが、本作はリンチのアメリカ観がより率直に描かれている印象の狂気と哀愁の狭間を往くハイブリッド・ブルース作品であり、ジョン・ルーリーやトム・ウェイツの表現世界をベックがプロデュースしているかのような、くたびれているのに相変わらず現代的なセンスの良さを受け止めさせる好盤となっている。
個性豊かな登場人物たちのディテイルを歌い込む情景喚起力の高さはさすがに素晴らしくて、一曲一曲がさながら短編映画のサウンドトラック・コンピのように届けられる。前作よりも気負った感じがないリンチの取り組みが伝わってくるので、ずるずると愛聴してしまいそうな一枚だ。先行してMVが公開されていた、スウェーデンのリッキ・リーを招いた〝アイム・ウェイティング・ヒア〞はダウンロード用のボーナストラックである。 (小池宏和)