メジャー移籍を果たした前作『ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ』を「有能なシンガー/模倣者」と評したニューヨーク・タイムズ紙の言葉(特に後半)が最大の賛辞として響いてしまうあたり、このメイヤー・ホーソーンという人の特殊性が如実に表れている。フィリー・ソウルもモータウンも含め「古き佳きソウル・ミュージックを21世紀型ポップに変換する」のではなく、自らを「60sソウル系譜の末端」に位置づけ丹念に楽曲を磨き続けることで、「今」を照らす輝度を獲得しているーーそんなねじれた、しかし切実なメイヤーの音楽探究心が、約2年ぶりの新作アルバムとなる今作にも結晶している。そのソウル・クラシック偏愛感を、ファレル・ウィリアムスをはじめ辣腕外部プロデューサーの導入や、新世代ヒップホップ旗手=ケンドリック・ラマーのラップ(M8〝クライム〞)によって大胆にアップデートしてみせているのが面白い。そして同時に、彼のソウル感が実はサウンドという「外観」によって演出されたものではなく、メロディや音符の積み上げ方、グルーヴといった「核心」の部分から醸し出されるものである―ということもリアルにわかる、重要な1枚。(高橋智樹)