お茶でも入れて、じっくりどうぞ

People In The Box『Whether Report』
2013年10月16日発売
ALBUM
People In The Box Whether Report
21曲をひとつにつなげた、1トラック、トータル70分のニューアルバム。その「かたち」は確かにあまり見ないものではあるが、そう驚くことでもない。しかしその代わり、アルバムの内容については思い切り驚いてもらいたい。何しろ、People In The Boxがこの作品で描こうとしているのは歴史であり、人間であり、土地であり、国であり、地球であり、すなわち世界そのものだからだ。

《ここは歴史のまんなかさ/チクタク回転している》と歌う“気球”にはじまり、砂漠を越え、丘を越え、あらゆる争いを経験し、いくつもの死を受け止めながら、音楽の旅は続く。時間も空間も超越しながら、最後にたどり着くのは“開拓地”。そこで波多野裕文は《向かう場所はいつでも荒れ地だった》と断じる。その《荒れ地》で、彼らは《歪なかたちした楽器》を手に取り、《歌をおぼえたての外国語で歌う》のだ。最後に残るのは意味も記号もない「音楽」。それを表現するために、この構造が必要だったのだろう。2周、3周と聴くたびに、聞こえる音が豊かになっていく。音楽的冒険も随所にちりばめられた、渾身の1作だ。(小川智宏)
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