しらないあいずしらせる子時にUSインディーだったりポスト・ロックだったりする凸凹なサウンド・テクスチャーは相変わらずだが、それらが鮮やかな流線型を描いて鼓膜にするりと入り込んで、どこかファニーですらある空気感と同時に「本当は怖いグリム童話」のような不穏さを描き出していく……昨年のアルバム『アルファベータvs.ラムダ』以降、ART-SCHOOLとのスプリット・ツアー、アジカンのツアーへの参戦などで格段に認知を広げたOGRE YOU ASSHOLEの新作ミニアルバムは、エンジニア中村宗一郎&プロデューサー石原洋というゆらゆら帝国の制作陣を迎えたことによって、その「不安と書いてポップと読む」的なサウンドスケープがいっそう鮮やかに花開いている。そして、子供時代の気持ちの震えをそのまま音に置き換えたような“しらない合図しらせる子”や“なだらかなんだ”といった楽曲が、エモやパンクが描く渾身の切なさとはまったく別種の、ぬるりとろりとしたセンチメンタリズムを心の襞の奥底まで流し込んでくる。衝撃力や爆発力ではなく、不可抗力としてのロックがとぐろを巻く、名盤にして怪盤。(高橋智樹)