余裕の新展開

スティーヴン・マルクマス&ザ・ジックス『ウィグ・アウト・アット・ジャグバッグズ』
2014年01月08日発売
ALBUM
スティーヴン・マルクマス&ザ・ジックス ウィグ・アウト・アット・ジャグバッグズ
ペイヴメント云々はあったにせよ、間違いなく『ミラー・トラフィック』はスティーヴン・マルクマス&ザ・ジックスの最高作であった。あれから約2年半ぶりの新作となるが、その間、彼はベルリンに住んでたそうで、クラウトロックやドイツの現代美術家、電子音楽家にインスパイアされたと語ってもいる。ではそうした要素が前面に押し出されているかというとそんなことはなく、いつものスティーヴン流にねじ曲がったロック感覚とサイケデリック・テイストがうねうねと展開しているわけだが、その奥にある軸の歪みが醸し出す心地よさには深ヨーロッパの地の影を感じないわけにはいかず、それこそ本作の醍醐味だ。すっとぼけたホーンと絡みあう“ランブル・アット・ザ・レインボ”あたりのポップな倒錯感は栄華と没落を見てきたベルリンならではかもしれない。レコーディングそのものはベルギーの田舎の農家で、ペイヴメント時代からの仲間レムコ・シャウテンとの共同プロデュースで行われ、ドラムスが元スリーター・キニーのジャネットからTheJoggersのジェイク・モリスにかわったが、バンドとしての風通しの良さは相変わらずで快適だ。(大鷹俊一)
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