自力で二兎を捕らえた統合的傑作

ブラッド・レッド・シューズ『ブラッド・レッド・シューズ』
2014年02月26日発売
ALBUM
ブラッド・レッド・シューズ ブラッド・レッド・シューズ
今作のレコーディングにあたり、ローラとスティーヴンはベルリンへと赴き、プロデューサーもエンジニアも一切つけず完全に2人だけで作業に集中したという。4作目にしてセルフ・タイトルが冠されているのは、これぞまさしく混ざり物なしのブラッド・レッド・シューズだ!という意識の表れなのだろう。ヴォーカル&ギター/ヴォーカル&ドラムという最小単位の編成から想像できる通り、彼らのアルバムは常に「ライヴで発揮されるエネルギーをいかにしてスタジオで捉えるか」というトライアルを課されてきたように思う。前作では、思い切ってライヴと切り離したところで、もう少し作り込んだプロダクションを追求し、かなりの成果を得ていた。

最新アルバムでは、前述したような制作環境を反映し、このバンドの核にある荒削りなダイナミズムをあらためて充填しつつ、前作で試みた音楽性の幅を持たせる方向性も同時に活かすという結果を出している。一見ムチャなように思えるかもしれないが、実際に完成した作品を聴けば、これはブラッド・レッド・シューズが必然的に辿り着くべき地平だったのだと分かるだろう。(鈴木喜之)
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