自然体のままシーンの先端とコネクトし続けるエレクトロ・デュオ
その変わり続けるスタイルと変わることのないスタンス

自然体のままシーンの先端と
コネクトし続けるエレクトロ・デュオ
その変わり続けるスタイルと
変わることのないスタンス

2008年、世界的に盛り上がる「ニュー・レイヴ」と同時代的にシーンに登場した80KIDZ。トレンドとしてのニュー・レイヴが下火となった後も、彼らは自分たちのスタイルを常にアップデートしながら、シーンの最前線に立ち続けている。2012年にリリースされた3rdアルバム『TURBO TOWN』では生音を大々的に導入したエイティ流ロック・サウンドでリスナーを驚かせ、かと思えば昨年立て続けにドロップされたデジタルEP『80:XX』シリーズでは完全フロア仕様のダンス・ミュージックを展開。その時々の自分たちの欲求に忠実に音を生み出しながら、それが結果的にシーンの流れにリンクする。80KIDZは自然体で時代にコネクトする天才だ。9月24日にリリースされた4thアルバム『FACE』では、表情の違うヴォーカル・トラックを多数フィーチャーしながら、R&Bやソウルといったリアルタイムのトレンドを取り込んでいる。変幻自在のスタイルの奥に潜む80KIDZの「顔」とは? Ali&とJUN、ふたりに訊いた。

(インタヴュー=小川智宏 撮影(インタヴューショット)=塚原彩弓)

『80:XX』シリーズを出してその次に向かうにあたって、すごく変に何も考えなくてよくなった。溜まってたものが全部出たって感じで

──去年『80:XX』シリーズとして4作EPを出しましたよね。あれが面白かったんですよ。『TURBO TOWN』を経ての次のアクションとして、結構バキバキのフロア寄りの音が上がってきたのがすごく新鮮で。いろんなところで『TURBO TOWN』への反動があったっていうふうにもおっしゃってましたけど、やっぱりそういうものに飽きてたんですか?

JUN 飽きたというか、僕らの現場はライヴもあるけど、DJも多いわけじゃないですか。そこで使えるトラックを、今の気分で、旬のうちに出すっていうのを、デジタルリリースっていう形態にすることによってできるから、それをまずしたいなっていう。今やりたいことをやる、クラブで使える曲を出すっていうのを早いスパンで回すっていうのが、コンセプトだったんで。

Ali& 『80:XX』シリーズって、たぶんあの時のクラブミュージックで旬のものを、僕らの解釈でやるっていう部分でやってたんで。それはすごく必要なことだなあとやる前から思ってたんで、ずっと。そろそろそういうのをやりたいって思ってたんでね。

JUN それをオリジナルアルバムとして出すっていうのにはちょっと違和感があったから、そこをライトなイメージで作れたのが逆に良かったのかなっていう。

──その「旬感」ってどういう部分ですか?

JUN ちょっとUKベース的なものとかが流行ったりとか、ベースミュージックに多少トレンドが向かっていったりしてる中で、より90年代頭ぐらいのテクノっぽい音とか、そういうのを取り入れたいなっていう部分なんじゃないですかね。

──いわゆる、メインストリームのEDMとか、そっちには行かなかった?

JUN ああ、そっち系は(笑)。最後の曲はちょっとEDMっぽいっちゃ……。

Ali& ぽいけど、限界まで近づけたけどあれが限界、みたいな(笑)。あれ以上はやりたくない、みたいな。

JUN EDMってすごい良くできてますからね。ああいうのはああいうのですごいなと思うけど、僕たちがやる仕事じゃないかなって。

Ali& そうですね。僕たちのルーツにないんで、あれは。やるっていう話は1ミリも出なかったですね。

──『80:XX』シリーズを作ったことで、「DJでかける曲がない」みたいなフラストレーションというのは解消されていったんですか?

Ali& JUNくんはどうかわかんないですけど、僕は『80:XX』シリーズを出してその次に向かうにあたって、すごく変に何も考えなくてよくなった。1回、溜まってたものが全部出たって感じで。

JUN すっきりした(笑)。

Ali& 現状を聞いて、自分のルーツ考えて、「自分がやるものってどれ? これかな、これしかねえよなあ」っていうふうに、僕らが何を求められてるとか、何をしたほうがいいとか、ファンの方とか初めて聴く方に「なんか違うな」とかって言われても別にいいかなと思って。そういう感覚で取り組めるようになりましたけどね。『80:XX』シリーズがあったおかげで。

──たぶん『80:XX』シリーズで1回コンピレーションにまとめることでケリがついたんでしょうね。そこから先に行くにあたって、じゃあ次はどういう方向に行こうかっていうのって何かアイディアはありました?

JUN そんなに深くは考えないというか、自然体というか、すっきりした状態で。僕たちができることって、ルーツを生かして、その引き出しから新しいもの作るっていうことなんで。だから今のトレンドを追おうとかいうのを意識的にやったりしないで、結局ルーツ的な部分に立ち返って、ダンスミュージックの原体験──10代後半から20代前半にかけてのダンスミュージックの体験を消化した上で、現代の音と合わせて出すって感じだったんじゃないかな。それがいろんなスタイルで出て、こういう楽曲たちができたっていうイメージだと思う。

僕ら、ルーティンワークで年間100本近くDJをやってるわけじゃないですか。だから自然と「今これっぽいよな」っていうのが反映しちゃうのかな

──今回の『FACE』もまさに、自分たちの引き出しを開けていって作ったアルバムだと思うんですけど、結果的にすごく時代のトレンドともマッチするものに──。

80kidz
80kidz

JUN なってます?(笑)。

──なってるんじゃないかなあと、聴いてて思うんですけど。

Ali& ありがとうございます。

──たとえばディスコ感とかR&B感とか、ちょっとオーガニックなグルーヴ感みたいなのって、言ってみりゃシーンのトレンドじゃないですか。

JUN そうですよね(笑)。

Ali& そうなっちゃいましたね(笑)。

──ははははは!

JUN でもそんな意識してそれを取り入れようとかじゃなくて。多少そういうR&Bとかソウルとかにちょっと興味もあるし、そういうのが作りたいっていうのはあったけど、それも、たぶんそれぞれみんなそうだと思うし。

Ali& あとは僕ら、ルーティンワークで年間100本近くDJをやってるわけじゃないですか。たとえば金、土、日ってある時に、同じ曲かけないんですよ。飽きっぽいんで(笑)。毎週結構買ったりとかいただいたりとかして、そういうのを聴いていくのがやっぱりルーティンであるので、自然と作る上においても「今これっぽいよな」っていうのは、他のアーティストさんよりかは反映しちゃうのかなっていうのは思います。

──じゃあルーツはルーツとしてありつつも、同時にシーンの先端に常に触れてるっていう感じがあるんですね。

Ali& そうですね。

──だからかもしれませんけど、80KIDZってアルバムごとに全然違うじゃないですか(笑)。

JUN そうですよね(笑)。

──それってすごい大きな特徴だなあと思うんですよね。僕はこの『FACE』ってアルバム聴いて、すげえ今っぽいなと思ったんですけど、よくよく考えてみたら『TURBO TOWN』聴いた時も今っぽいなって思ってたと思うんですよ。どのアルバム聴いても、やっぱりその時々で今っぽいって思ってきたなあということを思い出して、つくづく変なユニットだなあと(笑)。

Ali& そうですね(笑)。

JUN ミーハーだから(笑)。

──今っぽいものって古くなってくはずなのに、80KIDZの場合はそれがどんどん更新されていく。それが面白いなと思いますけどね。常に自分の中でリニューアルされてる感じってあります?

JUN でもやっぱりDJやってるから、どんどん毎月、毎週更新されていくじゃないですか。新しいトラックが出て、新しいミュージシャンが出てきてっていうのがやっぱ刺激になってるとは思いますけどね。

Ali& その時のトレンドにおいても、やっぱり僕たちに絶対合わねえなっていうのもあるじゃないですか。そこの部分に関しては、フロアでかけたりとか試してはみるんですけど、なんか結構ね、飽きるんですよ、すぐに。だからトレンド全部っていうわけでもなくて、過去の自分のアーカイブと現在のトレンドを照らし合わせて、なんかしら線がビーンってつながった瞬間が、「たぶんこれなんだな」って思うような気もします。

──なるほどね。だからトレンドにもフィットするんだけど、同時にすごいオーセンティックな感じもあるっていうのは、そういうことなのかもしれないですね。

Ali& そうですね。

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