ジャンルレスな新AL誕生! fhánaのブレーン3人にクリエイティヴィティの真髄を訊く

fhána

サウンドプロデューサーの佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunaga、ヴォーカリストの towanaによるユニットfhána。2013年にメジャーデビューして以降、数々のアニメソングを手がけてきた彼らの音楽は、素敵なオリジナリティの塊だ。歌心に溢れたメロディアスな作風であると同時に、ポストロック、シューゲイザー、エレクトロニカなどのエッセンスも香る作風が、独特な魅力を放っている。ロックやクラブミュージックの愛好家にとっても刺激的な楽曲の数々は、どのようにして生まれているのか? 2ndアルバム『What a Wonderful World Line』を軸にしつつ、サウンドプロデューサーの3人に語ってもらった。

インタヴュー=田中大

単純に「生きるって素晴らしいよね」ということではなく、現実は決して理想的とは言えない状態だからこそ、肯定したい(佐藤)

――作品の全体像については、どのようなことをイメージしていました?

佐藤 今回のタイトルは『What a Wonderful World Line』。「なんて素晴らしい世界線なんでしょう」っていう意味なんですよね。「世界線」ってアニメやゲームやSFによく出てくるワードで、いろんな可能性があり得る世界のことを「あの世界線」とか「この世界線」とかいう感じで使うんです。世界にはいろんな可能性があり得た中で、「今、僕たちがいるこの世界線こそが素晴らしいんだ」と肯定したいというのが、今回のコンセプトでした。でも、単純に「生きるって素晴らしいよね」ということではなくて、現実は決して理想的とは言えない状態だからこそ、肯定したいという想いをこめています。

――例えば1曲目の“The Color to Gray World”も、そういう想いがこもっていますよね?

佐藤 そうですね。「灰色の世界に色彩を与えよう」っていう曲です。みんないろいろ仕事を頑張ったりとかしていますけど、生まれてやがて死ぬことに意味があるのかといえば特にないのかなと(笑)。それは自然現象みたいな感じで、特に意味はないのかもしれないですよね。それを表したのが「灰色の世界」。でも、もともと意味がないからこそ、「意味=色彩を与えるのは自分自身の主観や意思じゃないか?」って思うんです。結局、自分を救えるのは自分。そして、それが誰かを救うこともあるのかもしれない。そういうことが言いたくて、こういう曲になっていきました。

――サウンド面に関しては残響を活かしたり、音を絶妙に配置することによって、立体的な空間を構築しているのが気持ちいいですね。それはあらゆる曲に言えることですけど。

yuxuki みんな音響っぽいのが好きですからね。僕もUSインディーやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインとかが好きなんです。

kevin 僕はもともと国内のエレクトロニカシーンで活動していたので、緻密に音が配置されたものをたくさん聴いてきたんです。それは今のfhánaにも反映されているところだと思います。

――fhánaって、洋楽愛好家の心をくすぐる味付けが発揮されているバンドですよね。

yuxuki 洋楽が好きな人が反応してくれると嬉しいです。

佐藤 聴いてくれれば「いいね」となると思います。でも、洋楽が好きな人に積極的に受け入れてもらえるようなルートが、fhánaにはまだ少ないのかなと。アニメの曲をやっているので、アニメ界隈ではそこそこ認知されるようになっていますけど、洋楽が好きな人が聴く機会は、今はまだあんまりないんですよね。

kevin 壁は崩していきたいところですけど。

メイド喫茶で「バンドやろうぜ」っていう話をしたんです。YMOがコタツでみかんを食べながら結成の話をしたように(佐藤)

――アニメが好きで、ロックはそんなに知らない人がみなさんの音楽を聴いているかと思うと痛快ですね。例えば“ワンダーステラ”はアニメの主題歌ですけど、「こんなプログレッシヴなことをやっている曲が流れてるんだ!」と。

kevin この曲はジェットコースターです(笑)。

――アニメのオープニングの89秒の中ではキャッチーな歌モノとして収まるんでしょうけど、フル尺で聴くとものすごい展開を遂げる曲だというのが面白いです。

佐藤 アニメの主題歌って、最初にテレビで流れるワンコーラスを作るんです。それでデモを作ってOKが出たら歌詞も書いて仮歌を録り、それもOKが出たらフルを作ることになるんですよ。“ワンダーステラ”を作る時は「やっちゃえ!」という気持ちだったので、こうなりました(笑)。

――(笑)密かにアニメファンの耳を肥えさせているバンドかも。

yuxuki  fhánaの曲を通じて「こういう音楽もあるよ」と紹介できたらいいですね。

――アニメの音楽って、その曲が流れる作品の世界を踏まえれば、かなり自由にクリエイターの味を出せるところがありますよね?

佐藤 そうなのかもしれないですね。僕はfhánaを結成する前にFLEETというユニットをやっていて。僕が20代前半くらいだったその頃は、ポストロックが全盛期だったんです。toeが人気で、コーネリアスの『POINT』が出たりした時期で。僕もそういう流れの中の音楽をやりたかったんですけど、今になって振り返ると、当時は「こういう感じの音じゃないと、自分の曲じゃなくて恥ずかしい」っていうようなところがあったなと。他にもいろいろ好きなものがあったのに、「この範囲のものしか使わないで作る」っていう自分を縛る考え方だったんです。fhánaをやるようになってから、その点が変わったんですよね。

――fhánaは曲に反映する要素に制約がない印象です。

佐藤 制約はないですね。そもそもfhánaのメンバーは、みんなアニメやゲームが好きですし、アニソンでデビューをする前から自由にやっているバンドでしたから。

kevin 僕たちは結成した場所がメイド喫茶でしたし。

佐藤 メイド喫茶で「バンドやろうぜ」っていう話をしたんです。

yuxuki そういう結成、面白いんじゃないかなと。

kevin 後々、取材とかで言うと盛り上がるんじゃないかと(笑)。まあ、その企みは、我々は知らなったんですけど。

佐藤 「今日、一緒にメイド喫茶に行ったら、バンドの話をしよう」と思っていたんです。YMOがコタツでみかんを食べながら結成の話を細野さんの家でしたように。「そういうの、いいよなあ」と(笑)。

――(笑)このエピソードからも窺われるところですが、fhánaはアニメとかを含む秋葉原界隈のカルチャーとロックが自然に融合しているバンドですね。

yuxuki そうかもしれないですね。でも、実はバンドマンって結構アニメが好きな人が多いんですけど。

佐藤 10年くらい前とかに比べると、アニメは市民権をだいぶ得ましたし。

kevin アニメを観ていることがみんなの共通の話題になったり、教養のひとつになったような感じがありますからね。

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