ジャック・ホワイト
ソロ2枚目『ラザレット』完成!
驚異の最新作に辿り着くまでの進化を10本の映像で追う
『ブランダーバス』に続きソロ2作目となる『ラザレット』を完成させたジャック・ホワイト! 「俺はこれまで同じ方法でアルバムを作ったことがない」「そうやって自分に揺さぶりをかけるんだ」「もし俺が自分に揺さぶりをかけなかったら、自分でエキサイトすることをやらなかったら、世界にこれを聴いてくれって、いう価値もないじゃないか」とインタヴューで力説していたが、何度もオーバーダブやアレンジを施しながら1年近くかけて作ったこのアルバム。これまでの作品をどれも3週間程度で完成させてきたことを考えると、ホントに驚きの1枚である。さらに歌詞に関しては、19歳の時に書いた短編を見付けて、そこから1節を抜き出し、まったく別の世界を作り上げたとのこと。「まるで38歳と19歳のジャック・ホワイトと会話を交わし、一緒に仕事している感じがして、それが刺激になったんだ」と本人も語っているとおり、別次元にいるジャックがコラボで書き上げている感じなのだ。ちなみに、せっかく見付けたこの短編、CDのブックレットに掲載した1編をのぞいて全部燃やしてしまったというのが、実にジャックらしい。まさに完璧主義者というかコントロールフリーク!
過去の作品のように、ひとつの大きな世界観を創りあげていくというよりは1編1編、1曲1曲で完結した物語性の強い短編小説がこれまでになくバラエティに富んだサウンドでぎっしりと詰まっている『ラザレット』。これまでになく細かいアレンジが施されていて、むしろヘッドフォンに向いている作品のような気もするが、ジャックだけに、これまでと同様、曲の勢いは衰えないままだ。
常に新たな扉を開いていくことで、真実を追求し続けてきた現代のブルースマン、ジャック・ホワイト。これまで環境やコラボレーターを変えることで新境地を切り開こうとしてきたわけだが、まだ15年のキャリアでこれだけ自分の身を晒してきたアーティストも珍しいのでは。『ラザレット』発売目前にして、彼のキャリアをおさらいする意味で、代表的なビデオ作品10本を集めてみました。その色彩を見ただけでも、その変貌の様子が一目瞭然です。
(テキスト:中村明美)
The White Stripes “Fell In Love With A Girl”
Directed by Michel Gondry
ザ・ホワイト・ストライプスが大ブレイクするきっかけとなったビデオ。ミッシェル・ゴンドリーが手掛けた本作は超ローファイなレゴブロックが印象的だが、既存のテクニックを使って新しい世界を作り上げている感じは、まさにストライプスの音楽性そのものを象徴したような内容である。子供っぽいイノセンスやキュートなルックスもストライプスそのもの。
The White Stripes “We’re Going to Be Friends”
Directed by Kevin Carrico
ブレイクする前のストライプスを最もシンプルな形で、しかも美しく見せたビデオ。メグは本当に寝ちゃっているんじゃないか、と思えるところも正直だ。歌詞に出て来るスージー・リーはストライプスの作品には度々登場するキャラ。ジャックが子供の頃に好きだった女の子ではという噂だ。
The White Stripes “Seven Nation Army”
Directed by Alex and Martin
『エレファント』収録のストライプス代表曲。2006年W杯で優勝したイタリアチームが決勝後に合唱したことでも有名だが、まさに“スタジアム・アンセム”である。カレイドスコープをモチーフにしたビデオはシンプルだがローファイからは脱出している。三角形は『時計仕掛けのオレンジ』の劇場ポスターにインスパイアされたとも言われている。
The White Stripes “Jolene (LIVE)”
Directed by Dick Carruthers
2004年に発売されたDVD“Under Blackpool Lights”からのライヴ映像。取り立てて凝った映像ではないが、ジャックの鬼気迫るパフォーマンスが生々しく伝わる。「間違った時代に生まれたといつも感じる」とのコメントがジャックらしい。
The White Stripes “Blue Orchid”
Directed by Floria Sigismondi
5枚目『ゲット・ビハインド・ミー・サタン』からのファースト・シングル。ジャック曰くこの曲がアルバムを救ったとのこと。ストライプスにとって新たな世界観、ゴス・ファンタジーが広がるこのビデオに出演したカレン・エルソンとジャックは、撮影後間もなく結婚。
The Raconteurs “Old Enough”
with Ricky Skaggs and Ashley Monroe
ストライプスでのフロントマンから一変、ジャックがハーモニーや共作することを学んだというザ・ラカンターズ。このビデオはまさにそれを象徴している。
The Dead Weather “Treat Me Like Your Mother”
Directed by Jonathan Glazer
イノセントで子供のようなストライプスとは対照的に、暴力的かつセクシーなフロントマンのアリソンとジャックのガチなぶつかり合いこそがザ・デッド・ウェザー。それを上手く表現したビデオ。
The Dead Weather ”I Cut Like A Buffalo (Version II )”
Directed by Jack White
ジャック自らが監督した作品。1本目がイギリスで放送禁止となったため2本配信。ジャックがダンサーのクビをしめようとしているのと、ダンサーがナイフを脅すように持っているのが問題に。今回アップした2本目はジャックが自分用に撮ったビデオ。普段は見られないジャックの無声映画時代の大スターのようなダンスが興味深い。
Jack White “Love Interruption”
Directed by Jack White
ソロ・デビュー作ではエレキを弾きまくると予想されていたが、最初に公開されたビデオではギターが最小限に控えられていて驚いた。まあ、歌詞の強烈さにおいてはエレキなしでも十分なくらいの爆発力を誇っている。その新たな洗練をこのビデオでも証明。
Jack White “Sixteen Saltines”
Directed by AG Rojas
世紀末の世界で生き残った子供が唯一の大人ジャックを殺そうとするハーモニー・コリン張りの生々しさが議論を呼んだ作品。最新のインタビューで、「19歳の未熟な自分から、しっかりと経験を積んだ大人になったと思う」とジャックは語っていたが、ストライプスのイノセンスとは程遠い複雑な表現になったこのビデオがその変貌を物語っている。
新作『ラザレット』から第一段目となるビデオ”ラザレット”が公開された!
アルバム同様、わりとシンプルな構造にあらゆる仕掛けが施されていて、相変わらずの観応えである。
かっこいい!
Jack White "Lazaretto"
Directed by Jonas & Francois
JACK WHITE ジャック・ホワイト
1997年、メグ・ホワイトとザ・ホワイト・ストライプスを結成。2人編成で鳴らすミニマルなサウンドによるブルースの現代解釈は高い評価を得て、『ホワイト・ブラッド・セルズ』(01年)、『エレファント』(03年)はアメリカでミリオン・セラーを記録する。同時に、2005年にブレンダン・ベンソンらと組んだザ・ラカンターズ、2009年にザ・キルズのアリソン・モシャートらと組んだザ・デッド・ウェザーなどの活動も活発に行い、レコード・レーベル、サードマン・レコーズを立ち上げる。2011年にザ・ホワイト・ストライプスを解散。2012年に、初のソロ・アルバム『ブランダーバス』をリリース、6月に待望の2枚目、『ラザレット』を発表する。
『ラザレット』
SICP-4141(ソニー)6/11発売
- Three Women / スリー・ウィメン
- Lazaretto / ラザレット
- Temporary Ground / テンポラリー・グラウンド
- Would You Fight For My Love? / ウッド・ユー・ファイト・フォー・マイ・ラヴ?
- High Ball Stepper / ハイ・ボール・ステッパー
- Just One Drink / ジャスト・ワン・ドリンク
- Alone In My Home / アローン・イン・マイ・ホーム
- Entitlement / エンタイトルメント
- That Black Bat Licorice / ザット・ブラック・バット・リカリッシュ
- I Think I Found The Culprit / アイ・シンク・アイ・ファウンド・ザ・カルプリット
- Want And Able / ウォント・アンド・エイブル
『rockin'on』2014年7月号
ジャック・ホワイト最新インタヴュー掲載中!
ナシュヴィルにあるジャック・ホワイトが運営するサードマン・レコーズに訪問! そこで奪取したジャック・ホワイトの最新ロング・インタヴュー、およびレコード・ストア・デイで樹立した「世界最速レコード」の記録ができるまでを追ったレポートをロッキング・オン7月号に一挙掲載!
提供:ソニー・ミュージックレーベルズ
企画・制作:RO69編集部