LUNKHEADは、前進し続けているバンドである。2004年のメジャーデビューから10年の活動を経て、ついに彼らが10枚目のフルアルバムを完成させた。その名も『家』(いえ)である。思い返せば、LUNKHEADのファーストアルバムのタイトルは『地図』だった。『地図』から始まった物語が、様々な困難を乗り越えて、気づけばたどり着いたかけがえのない居場所としての『家』――。青春的なギターロックバンドとして、時に人間の生死にまつわるようなシリアスなテーマにも正面から切り込みながら、彼らが描き続けてきたもののすべてがここにある。昨年はツアー中に、メンバーを乗せた自動車が事故に遭い、ベーシスト合田悟が大怪我を負ったものの、彼らは無事にこのアルバムを完成させた。5月からの全国ツアーのファイナルには、なんとキャリア初だという日比谷野音でのワンマンも控えている。その胸の内を、メンバーのうち小高、合田、山下の3人に語ってもらった。

インタヴュー=松村耕太朗    撮影(インタヴューカット)=渡辺尚美

自分たちがこのアルバムでどうなっていきたいかを考えた時に、『家』ってタイトルを超えるものはなかった

──楽曲的にも充実してるし、テーマ的にもシリアスなことがたくさん含まれているし、ここまでやってきたからこそ書ける曲っていうのが詰まってると思った。で、タイトルがまず、ちょっとおもしろいよね。

小高芳太朗(Vo・G) そうですね。

山下壮(G) これは小高から出てきた言葉なんですけど。最近LINEとかでメンバーとやりとりしてて、「『家』ってどうかな」って来たんですよ。……「『家』かあ!」っつって(笑)。

合田悟(B) 俺も、「『家』かあ!」って(笑)。でも本人の『家』に対する想いっていうのはすごい伝わってきたんですけど。

小高 いや、俺もね、自分で思いついといて、「『家』かあ。なんかもっとマシなのねえかな」と思ったんですけどね(笑)。いろんな国の“家”って単語を調べたんですよ。そしたら“コーポ”とか“メゾン”とか“ハイム”とか、だいたいアパートですよね(笑)。だからこれ以外に出てこないなと思って。それに、自分たちがこのアルバムでどうなっていきたいかを考えた時に、『家』ってタイトルを超えるものがないなと思ったんです。

山下 この年齢になってというか、そういういろんな経験があっての『家』なんだなっていうのがすごく納得できて。小高の詞って、わりと“家”感あるじゃないですか。ひとりぼっちだったりとか、アウトドアっていうよりインドアだし。だけど、10年前のインドアな感じと今の感じだと、それこそファンがほとんどいなかった頃と、こうやって10周年までバンドを続けられた今だったら、全然“家”の意味合いが違うなと思ってて。そういう意味で、すごい象徴的な言葉なのかなと思って。

──つまり、バンドそのものが居場所になるんだっていう。それは君らにとってもそうだろうし、聴き手にとってもそうでありたいっていうことの実直な感じが、より誠実に聞こえるよね。タイトルはアルバムができたうえでつけたの?

小高 “シンフォニア”っていう曲のPVを壮が録ったんですよね。ツアー中に、会場に来てくれた子たちにひとネタつくってきてもらって、それを壮が毎回撮影して。そのPVを見て、ああ、この子たちが俺らにとって“家”なんだなと思って。だから最後のレコーディングに入る前に、結構そのイメージは固まってた感じですかね。それで“玄関”っていう曲の歌詞を書いて。これがきっと最後になるんだろうなと思ったから、そしたら今度は家から出ていく感じで終わりたいなと思って。

──じゃあその時点で、バンドそのものの物語が、最後は玄関から出ていくんだっていう形で見えたわけだね。

小高 そうなんです。1曲目のおもしろい感じとか。♪ピンポーンっていうのは、『地図』のど頭のSEを使ってるんです。

事故に遭って、誰かメンバーが欠けることがあり得るんだなって。逆に全員死ななかったのはすごいツイてた

──『地図』はメジャー1stアルバムですよね。懐かしいね、10年前。で、今回は “僕たちには時間がない”って曲がありますが、LUNKHEADは昨年、ツアー中に交通事故に遭って。それも、アルバム全体を考える意味ですごく大きかったのかなと。

小高 大きかったですね。事故ったのは11月の終わりですね。

合田 僕だけ怪我したんで、病院でもメンバーも誰もいないし、手術した直後で血だらけの服で待合室で待って、俺、家帰れんのか、みたいな。まだツアーも残ってるし、どうしようとか思いました。

──とにかく事故った瞬間は「死ぬかも」だよね?

小高 あ、死んだ、と思いましたね。でも血は結構早く止まったから良かったよね。こいつ、ドン引きするくらい血出とったんで(笑)。

合田 もうあれ、嫌やね。でもそれで曲、できたから(笑)。

──いい発言だなあ(笑)。

山下 月曜日に事故って、土曜日は名古屋でライヴだったんですよ。ツアーの途中だったんで。でも結局続行することにしたんですけど、いろいろ考えることも多かったですね。お客さんがすげえ悲しんじゃうなとか。

小高 誰かメンバーが欠けるっていうことが起こり得るんだなっていう。ラッキーなことに欠けないで済んだけど、誰か死んでてもおかしくないから、逆に全員死ななかったってすごいツイてたんだなって。

──“僕たちには時間がない”の歌詞が、《僕たちには時間がない/生き急げ 生きてるうちに》っていう。こういう歌詞を、ここまで実感を持ってストレートに書けたのは、事故があったからだよね。

小高 そうなんです。実際、事故があったおかげでいろんなことが滞って。12月の真ん中からレコーディングの予定だったのに、全然仕上がってなくて。“僕たちには時間がない”に至っては、曲すらなかった。どうすんだよ、あと1曲つくんなきゃいけないのにって言ってたら、“僕たちには時間がない”って曲ができた(笑)。

──今のこの状況を、もう、曲にすればいいんだっていう。

小高 そう。♪僕たちには~、時間がないって浮かんできて。ええやんかこれ!って。

──なるほどね(笑)。

小高 “うちにかえろう”っていう曲も、その前にレコーディングしてあったんですけど、それも事故ってから全然違う曲になっちゃいましたね、自分のなかで。前は、守りたい人がいて、その人を守れなかった時のことが怖いなと思ってたんです。でも事故ってから、自分が死んでもその人のことは守れないんだなって。そう思って、日々に感謝するようになりましたね。

──LUNKHEADっていうバンドにとって、死っていうテーマはこれまでもすごく大きくて、それでも生きていくんだっていう思いを、局面ごとに曲にしてきたバンドだなと思っているんです。それが今回のアルバムでいえば、事故があったことによって、こういう言い方が正しいのかわかんないけど、そのテーマがまたひとつ更新された。だから、フルアルバムも10枚つくってるんだけど、やっぱりすごくフレッシュだよね。

小高 そうですね、うん。やっぱりこれまで、強く言いきれない歌詞が多かったなと思うんです。だから今回、よりざっくばらんに言えたのかなっていう感じはしてますね。もうね、悟でも伝わるようにっていうのは、結構心がけて(笑)。

合田 そう。僕、基本的にパーなんで(笑)。小高の歌詞は基本的に難しいんで、結構入っていかないとわかんなかったりするんですけど、今回はすごいわかりやすいっていう。僕がひとつの基準なんですよ(笑)。

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