Nothing's Carved In Stoneっていうひとつの人間、生き物みたいなもののちゃんとしたストーリーを表すタイトルがいいなと思った(村松)
――なるほどね。『MAZE』っていうタイトルは、どこから?
村松 このアルバムはすごいカラフルで、いろんな感情とかいろんなストーリーをはらんでるものになったので、Nothing's Carved In Stoneっていうひとつの人間、生き物みたいなもののちゃんとしたストーリーを表すタイトルがいいなと思って、『MAZE』にしたんですけど。迷路みたいなやつらだなと思って、この人たち。人間って自分のなかに迷路があって、ずーっとそこ走ってるけど、ずっと迷い続けてるみたいなとこがあって。ポイントポイントですげえきれいな扉見つけて、ここしかゴールねえだろってとこをバーッて行くんだけど、そこがどこかほんとはわかってないっていう。それをバンドと掛け合わせてく作業っていうか。相手が頭の中の一番鮮明な、きれいな絵を教えてくれて、それを自分もまた違うもので掛け合わせていくみたいな。
――『MAZE』は「迷路」とか「迷宮」っていう意味ですけど、拓さんの中ではそれをポジティヴなものとしてとらえてるんですかね?
村松 ポジティヴでもネガティヴでもなくて、そういうもんだなっていう感じですね。やっぱり、ゴールがないほうがいいから。よく言うけど、枠組みがあるから俺は自由になれないみたいな、殻があるからとか、イメージがとかね。だけどちゃんと自分たちで自由の枠を作って、その中で遊んだほうがよっぽど自由なこともいっぱいあったりして。そういうとらわれてるなかで遊んでいく、みたいな感じですね。
――なるほどね。みなさん、『MAZE』っていうタイトルについてどう感じました?
生形 バンドのグループLINEがあるんですけど。いつも何個か「どう?」って来て、俺らで「これがいいんじゃない?」とかってなるんですけど、今回はみんな一致だった気がする。
日向 アルバムを聴いててすごいコントラストが出るっていうか、僕的にはファニーな感覚なんですよ、このアルバム。でも、『MAZE』って聞いた時に、少しシュールなニュアンスに感じたところもあって、逆にコントラストが出るなっていうところでの面白さを感じましたね。
村松 ちょっと締まるっていうか。
日向 そうそうそう、締まる感じ。豆乳鍋に醤油ちょっとかけると締まるみたいな、そういう感じ(笑)。
村松 そうだね。めっちゃうまいんですよ(笑)。
――はははは。そういうもんだと、このタイトルは。
日向 それに近い(笑)。
村松 色がつくっていうかね。ちゃんと1曲1曲に色が見えるようなタイトルだなと思って。
もっと自分のバンドとしてこのバンドを動かしていこうって、ここ2、3年で思うようになった。それがメンバーにも伝わっていい形で動いてるのかなっていう気はする(村松)
![](/contents/feat/ncis_201509/img/img04.jpg)
――“デロリアンを探して”の「デロリアン」っていうのは、どこから?
村松 まさに車のデロリアンなんですけど。スポーツカーとか、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の。この曲、メロディが覚えやすいですよね。だからその分パンチが効いた言葉がほしいなと思ってて。要は井上陽水さんの“なぜか上海”なんですよ、僕の中の感覚としては。“なぜか上海”って、なんで上海なのかわかんないけどすげえしっくりくる、みたいな。ここで歌いたいことに俺としてはテーマがあって、やっぱり憧れとか、迷路の中にいる、かっこいいものを探してるっていう感覚を書きたかったんですよね。未来を探してる感じとか。「憧憬」っていう言葉を真一は今回、“Milestone”で使ったんですけど、まさにそういう感じで、そういうのを4人でずーっと探してる感じをこの一言で表したくて。
――なるほどね。歌詞はそれこそ『MAZE』っていうタイトルに象徴されるような、何かを探してる、何かの中で迷っていたりもがいてたり、何かにとらわれてたりだとか、そういうシチュエーションが多いんですけど、すべてがすごくポジティヴに聞こえて。それも今のナッシングスの状態を象徴してるような気がするんですよね。
村松 4人でいまだにちゃんと階段を上ってる感覚はあるんですよね、バンドとして。3ヶ月連続でライヴをやって、ちょうどバンドの成長みたいなのも感じれた時期で、ここから何しよう、みたいなことだったと思うんで、そういうのもバンドの状態として曲に出てるなって気はしますよね。この階段を上ってくのも止まんないっていうか、ここまで上って来ると、もうそんなに大変なことじゃない気がしてるから。このままちゃんと上っていくでしょう、みたいな気持ちがすごいあって。
――たぶん、拓さんの中で一時期は「なんでこの階段、一段飛ばしで行けねえんだよ」とか、「なんでもうちょっと速く走れねえんだよ」って――。
村松 思ってましたね。リフト券持ってるつもりでいましたね(笑)。でも、ないっすねえ。ないない。
――今は一歩一歩上っていけばいいじゃないかと。で、上っていけるぞっていう。
村松 うん、間違いないですね。やっぱりバンドに身を任せる、みたいなことはすごくうまくなってきた気がする。信頼関係っていうか、ここは別に俺気張んなくてもいいや、みたいなのが前はわかってなかった。メンバーができることは俺もできなきゃいけないみたいな、何の負けず嫌いなのかわかんないですけど。どうしてもそれを横並びにしたかった時期があって、それで変に気張ってたんですかね。でも、メンバーは上がってくるのをずっと待ってくれてたし、その期待に応えたいのもあって頑張ってたけど、4人で普通にしてるのが一番っていうのがわかるようになってきて。だから俺ももっと自分のバンドとしてこのバンドを動かしていこうって、ここ2、3年で思うようになった。それがメンバーにも伝わっていい形で動いてるのかなっていう気はする。
――Nothing's Carved In Stoneの村松拓っていうものを自然に受け入れてるというか。
村松 そうですね。それも全部バンドのためなんですけどね。このバンドでいいものを作ってるし、今の日本のロックバンドでやってない音楽を俺たちはやってると思うし、そこに俺たちの居場所はあるはずだから、そこに自らはまっていきたいっていうか。そのためなんですよね。僕は「村松拓のバンドにしたい!」とかっていう欲は全然なくて、そういうことよりはバンドで――。
生形 わかるわかる。バンドのためにやってると、結果、どんどんどんどん自分がすごく成長していくんだよね。
――だから、たぶん村松拓っていうエンジンは昔からあってすごい回転数でふかしてたんですけど、それがちゃんとナッシングスっていう車体の中ではまって、タイヤにつながって、動力になっていったというか。
村松 良かったです(笑)。
日向 排気量が増えた。前は2リッターぐらいでグワー踏んでたのを、今はV8で「こんなんでも速えぜ」みたいな。
村松 かっこいい(笑)。
日向 今のおまえはV8エンジンだ!
全員 はははは!
――(笑)坂道も余裕ですよ。
村松 余裕っす。ありがとうございます!
日向 でもまたいつかね、V8でフルスロットルする(笑)。
村松 すぐそういう時は来るんですよ。その時はまたボアアップします(笑)。