人生に寄り添うPOP集団・Official髭男dism、最新作で国民的バンドへ!

Official髭男dism

Official髭男dismの最新作『MAN IN THE MIRROR』が、とても気持ちいい。初の全国流通盤となった前作『ラブとピースは君の中』は、さまざまな恋愛模様を甘酸っぱく描いた1枚だったが、今作は一筋縄ではいかない現実に対する視点が反映されているのが印象深い。老若男女をときめかせ得るキャッチーなメロディを連発しつつ、ブラックミュージックへの敬愛を感じさせる濃厚なグルーヴ、ソウルフルなフィーリングを香らせているのも大きな魅力だ。今年の2月、地元の島根から上京して共同生活を送っているメンバーたち。彼らはどのような想いを抱いて今作を生み出したのか? バンドの現状、今後の目標なども含めて、藤原聡(Vo・Key)、小笹大輔(G)、楢崎誠(B)、松浦匡希(Dr)に語ってもらった。

インタビュー=田中大

「聴き手の人生といかにタイアップできるか?」っていうことを意識しています。「一緒に頑張ってこう」って寄り添っていきたいので(藤原)

――どのような作品にしたいと思っていました?

藤原 タイトルにもなっている『MAN IN THE MIRROR』はマイケル・ジャクソンの曲から来ているんですけど、あの曲は「世界を変えていきたいのなら、人生を変えたいのなら、鏡の前にいる自分から変えていこうよ」ということを歌っているんです。そのメッセージにすごく共感したので、それを自分なりの解釈で描いて曲として伝えたいと思っていました。

――6曲を通じて、さまざまな人生の場面が描かれているのが印象的です。

藤原 恋愛の曲が3曲、仕事とか人生観の曲が3曲ですからね。どの曲も自分自身を鏡で見つめ直しているような視点で歌詞を書いています。もともと“Clap Clap”と“Happy Birthday To You”は、収録したいというのもあったんですけど、この2曲の共通点は、「今の自分に満足せずに、どんどん自分の性格や行いを変えてこうよ」っていうことなんですよ。それに合ったタイトルが、まさに『MAN IN THE MIRROR』でした。

――例えば“コーヒーとシロップ”のような社会で揉まれている人物の心情に焦点を当てた曲は、会社員(藤原は元銀行員)を経験したことが反映されているんじゃないでしょうか?

藤原 そうだと思います。この曲と“Clap Clap”と“Happy Birthday To You”は、特に今までとは大きく違うテイストですね。恋愛の曲だけではない新しいひげだんです。

――鏡の前で悩む姿が描かれている“Happy Birthday To You”は、まさに『MAN IN THE MIRROR』な曲だと感じました。

藤原 この曲の2番は、マイケル・ジャクソンのことを歌っています。どんな人でも鏡の前で悩み続けているんでしょうし、僕たちも日々悩んでいますから。そうやって悩んだ末に「これでいこう」って自信を持って出すものが、何に関しても人の心に届くものになるんだと思います。そして、何か後悔することがあっても、「これじゃいかん。変えてこう!」って考えることが、新しい人格の誕生日になるんですよね。

――この1、2年くらいの間で、音楽に対する意識は変化しました?

藤原 変わりました。全国デビューするまでは「サウンドがかっこよければいい。メロディが良ければそれでいい」っていう感じだったんですけど、歌詞の大切さを改めて4人で考えるようになっています。

小笹 歌詞を書いているのは藤原くんですけど、僕としても刺さるものがたくさんあるのが今回の作品です。僕たちは「国民的なバンドになりたい」と思ってやっているんですけど、国民的なバンドさんたちの曲は、人の人生に寄り添う部分があるじゃないですか。そういう刺さる部分を大事にしたのが、『MAN IN THE MIRROR』です。

――例えば“コーヒーとシロップ”は、特に社会人経験がある人に刺さると思います。

藤原 この曲は転職を考えている人には、転職に向けて背中を押せる曲にもなるでしょうし、まだその職場で頑張りたいと思っている新入社員には、「引き続き頑張っていこう」と思って頂けるのかなと。1個の解釈に限定しないものになるように書いた歌詞ですね。人生って、その人が主役のひとつのストーリーじゃないですか。「国民的バンドになりたい」というのと繋がることでもあるんですけど、ひげだんは聴いてくれる人の人生の主題歌を担当したいんです。「聴き手の人生といかにタイアップできるか?」っていうことを意識しています。「理不尽な現実を突きつけたい」というよりは、「一緒に頑張ってこう」って寄り添っていきたいので。

――「聴き手の人生とタイアップ」って、バンドの姿勢がよく分かる表現ですね。

藤原 ひげだんのコンセプトです。僕が酔っぱらった時に出てきて、「これは良いキャッチコピーだ!」と思ってメモに書き留めておきました(笑)。

――(笑)。多くのバンドは、最初は自分たちの楽しみのために音楽をやり始めますけど、その辺が変わってきたみたいですね。

藤原 はい。僕たちは上京して、こうして音楽をやれるようになったことが未だに信じられない感じもあって。でも、まだまだ「無名のバンド」という枠組みから脱出できていないわけです。だから4人で貪欲に活動して、早く国民的バンドへとのし上がっていきたいですよ。出世願望は、この4人が共通して抱いていると思います。

松浦 「国民的バンドになりたい!」というのは、この4人がずっと言っていることですから。自己暗示じゃないですけど、「ならなきゃ!」っていう感じです。そして、「曲を届けなきゃ」という使命感のようなものもあります。

お客さんとクラップしたいです。単純な作業ですけど、やっぱりすごく楽しいんですよね(楢崎)

リズムって気持ちに作用する部分がすごく大きいですからね(松浦)

――楽器プレイヤー集団からアーティスト集団へと変化したのが今作ということではないでしょうか?

藤原 まさにそういう感じです。「歌」「ギター」「ベース」「ドラム」っていうことではなくて、「4人がひとりの表現者」っていう認識が今回から色濃く出ているんじゃないかと思います。

楢崎 今作から「より人生観を反映していこう」ってなっているんですけど、最近、各自が曲を作るようになっているのもバンドとしての変化だと思います。聡が作詞作曲をずっとやっていますけど、他の3人もやっていかなきゃなと考えるようになっていますので。

――楢崎さんは料理が得意ですし、そこからのインスパイアで人生を描くことももしかしたらできるのかもしれないですよ。

楢崎 料理を歌に?(笑)。

藤原 なると思うよ。“恋の去り際”もそういう感じで出てきたものだから。これは恋愛のインスピレーションから作ったのではなくて、実は自分の身体に病気が見つかった体験から生まれたんです。病気はもう大丈夫なんですけど、こういう曲を作ることができました。

――この曲、知らない内に彼女が浮気していたことを知った主人公の気持ちの歌として解釈したんですけど。

藤原 10代の頃は自分が無敵な気でいたけど、当時から身体の中には病気の小っちゃな芽がいたんだなと思った体験を恋愛に応用しました。実体験をそのまま歌詞にするのもいいですけど、この曲みたいに自分の中で噛み砕くのもひとつのやり方なんだと思います。

――メンバーのみなさんそれぞれの曲は、着々と形になりつつあるんでしょうか?

松浦 まだまだ初期段階ですね。

楢崎 作ってみたのを聴いてみると、今までのひげだんとは全然違った雰囲気になっているので、どうなっていくのか自分たちでも楽しみにしています。誰かと組んでふたりで作ってみるのも面白いのかもしれないですね。

藤原 一貫性を持ちながらも多様性を出すというバランスのところを、みんなでやっていきたいです。歌詞だけでなくメロディに関しても、いろんな面が出てくるんじゃないかと思っています。でも、曲を作り始めの頃って、メンバーにすら聴かせるのが恥ずかしいんですよね。メンバーはまさにそういうことを感じつつ曲を作り始めているんじゃないかと思うと……心が温まるというか。

小笹・楢崎・松浦 (大爆笑)。

――曲をみんなに聴かせるのは恥ずかしいですか?

小笹 みんなモジモジしているところだと思います(笑)。

松浦 この前、3人(小笹・楢崎・松浦)で、夜にキャッキャしながら作業をしてみたんですけど。

楢崎 とりあえずDTMで下書きすることになって、大輔のパソコンを使ってそれぞれの作った曲をパソコンで打ってみたり、マイクで歌を入れてみたりしました。修学旅行みたいな感じもあって楽しかったです。

――ひげだんの音楽はリズムの気持ちよさがすごくありますから、そこがどう発展していくかも楽しみです。今回も例えば“Clap Clap”が気持ちよかったですよ。

楢崎 お客さんとクラップしたいです。クラップって単純な作業ですけど、やっぱりすごく楽しいんですよね。

松浦 リズムって気持ちに作用する部分がすごく大きいですからね。例えば、クイーンの“ドント・ストップ・ミー・ナウ”のギターソロの前のビートのフレーズは、何か湧き上がる感情を生み出すサウンドですし。

藤原 クイーンのビートは、人を奮い立たせる魔法があるよね。

(“ウィー・ウィル・ロック・ユー”のビートを足踏みと手拍子で奏で始める4人)

――やっぱ、テンション上がりますねえ。

藤原 きっと彼(松浦)は、今後、そういうのをどんどん叩いてくれると思います(笑)。

松浦 頑張ります!(笑)。

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