8年目のメジャー進出!? サイケに世界を塗り替えるオワリカラの秘密を今こそあばく!

オワリカラ

『ついに秘密はあばかれた』は、ついにメジャーデビューしたオワリカラの新作である。サイケデリックロックバンドと自称するだけに、万華鏡のようなジャケットが示す目眩くカラフルな世界が12曲によって描き出されている。2008年に活動開始したこの4人組にとって通算5作目。満を持してのメジャー初作と思えたが、タカハシヒョウリ(Vo・G)が「全部出し切った。今は空っぽ」と言うほど渾身の力を込めて、インディーズからメジャーへ振りきったアルバムだ。そこには彼が音楽に求める希望が、笑いも怒りも絡め取りながら歌いこまれている。オワリカラの秘密が、このインタビューであばかれていく。

インタビュー=今井智子

インディーズは、自分たちで全部やれるのが自由だってみんな言うけど、実は不自由な方にはまり込んで行ってるんじゃないかと思ったんです

――カラフルで聴き応えありますね。5作目ですけどメジャー1stということで、力も入ったのかなと思います。

「あったと言えばあったし、なかったと言えばなかった感じです。後半6曲が去年録った音源で、前半6曲が今年録った音源なんですよ。去年、後半6曲を作って録音している時は、メジャーデビューの話がまだなかったんです。レーベルがどうとか、アルバムをどうやって出すかとかいう話が全くない状態で、自分たちなりにレコーディングのやり方とか曲の作り方とかを――1からオワリカラ流の方程式というか数式を作っていくみたいな感じでやってまして。自分たちを掘り下げていく作業は終わったなって。今度は、これを多くの人に聴いてもらわなきゃ始まらないなというところで、メジャーレーベルと組んでやろうとなって。自分たちの今まで開けてなかった引き出しも開けて、前半6曲を進めていった感じで。だから全然違う2枚のアルバムを合体させたというか、前半6曲はオワリカラを今まで知らない人に届けることを意識して作ったものだし、後半6曲は自分たちの世界でやりきったという感じになってますね」

――後半6曲の制作段階では、それだけで完結させるつもりで?

「そう、ミニアルバム的な感じで、自分たちのレーベルで出そうかなという話もあったんです。それをやろうと思って、去年『new music from big pink』を出して」

――タワーレコード限定シングルですね。

「そうそう、それは自分たちでやって。でも僕のイメージでは、それがバンドの憧れるものというか、自分たちで全部やれるのが自由だってみんな言うけど、実は不自由な方にはまり込んで行ってるんじゃないかと思ったんですね」

――どういうことですか?

「例えばインディーズバンドという形にハマり込んでいく作業なんじゃないかと思ったんですよ。どっちかというと閉塞感が、実はあるんじゃないかと。アティテュードとしてカッコいい感じがするけど、それって例えばあまりライブハウスがないところの高校生とかに届かないじゃないですか。それがバンドや曲にとって幸せなことなのかって思って。そうじゃなくて、余地があるところで聴いてみたいなと思ってくれる人のところに、届かないとつまんねえなと思いまして。一つ裏切りをやってみようと」

グレーの、プラスマイナスがゼロの幕の内弁当ってつまらないじゃないですか。1個1個振りきってる幕の内弁当であれば、サーカスみたいにすごい場面が繰り広げられるっていうか、そういうものにしたいと思って

――インディーズでの限界を感じていたということですか?

「ビジネス的にはそうですね。音楽的にはまだまだやりたいことがたくさんあって、スタジオに入ってさえいれば曲ができるバンドなんで。僕らって、結構やってるんですよ、8年やってて。1回終わってると思うんですよ」

――ええっ?

「バンドって旬があるじゃないですか。僕ら旬は1回迎えてると思うんですよ。例えばCOUNTDOWN JAPANに出た年(2011年)とか。あの年ってある意味、どのバンドにも平等に与えられる旬みたいなものだと思うんです。でも、そういうものは過ぎているけど、面白いことをやっていたり、いいものをを作ったりした上で引き寄せる旬はまだあるだろうという。だから旬を自分たちでクリエイトしようということです」

――でも逆に若気の至り的なものを超えたところで成熟したものを作っていくのが、ミュージシャンを続けていく真っ当な方法ですよね。

「オワリカラで書く僕の曲の世界というのは、野球で言ったらストレートではないというか。もちろんストレートを投げたいと思ってますけど、ある意味変化球というか。それでも、ものすごいあさっての方向に投げてたら意味がないんで、狙ってるところはストライクなんですけど、こんな投げ方もあるぞ、ってところなんですよね。ある投法の達人になりたいとは思いますね。音楽に限らず自分の人生全てに関して、すごい変な道、裏道を通ってきたという感覚がすごくあるので」

――どういう裏道ですか?

「好きになるものも時代とズレてたりとか、クラスの一番手のグループにいたような人間じゃないというか。裏道を通ってきたんですけど、常に狙いを定めているのは王道だと思ってるんですね。自分たちがアンダーグラウンドじゃないと思うのはそこで、裏道を通って王道に出て、道を作っちゃったぐらいのところに行けたらいいんですけどね」

――こんなものが売れちゃうの?みたいなことですか?

「それは兼ね合いですよね。僕はものすごくバランス取るタイプなんで。もちろん耳触りがいいだけでいいものもいっぱいあると思うんですけど、そうじゃなくて圧倒的にキャッチーであることが好きですね、僕は。オワリカラはサイケデリックロックというジャンルでありながら、3歳児も108歳ぐらいのご老人も1回聴いたら耳から離れないというようなものを作っているのがいいと思うんです」

――そういう気持ちが、このアルバムに入ってる後半6曲はマニアックで前半はメジャーを意識して、ということに表れてるんですね。

「完全にそうですね。だからキャッチーなところから入って、だんだんディープな世界に入り込んでいくアルバムにしたいと思っていたんで」

――流れが納得できますね。この12曲はオワリカラというバンドが持ってる要素を全部並べてるぐらいな内容ですよね。いい意味で幕の内弁当的というか。

「本当にラストアルバムぐらいの全部出した感じで、今は空っぽなんで。もう解散しかないでしょうね(笑)。でもグレーの幕の内弁当ってつまらないじゃないですか。プラスマイナスがゼロの幕の内弁当ってつまらない。1個1個振りきってる幕の内弁当であれば、サーカスみたいにすごい場面が繰り広げられるっていうか。そういうものにしたいと思って。カラフルな万華鏡のようなアルバムということで」

――それでこのジャケットですか。

「そうです。ここにある色は1個1個は綺麗だけど全部混ぜたらグレーになるじゃないですか。1個1個ビビッドに保つのって結構難しいことだと思っていて。「次のアルバムはいろんなことに挑戦しました」「こんな曲からこんな曲まで入ってるのでマジ楽しめると思います!」って全バンドが全アルバムでいうと思うんですけど(笑)、基本的にグレーになっちゃってることって多いと思うんですね。だからグレーにならないように」

僕は自分のことを驚異的にポップだと思ってるんで。だから達成感を得られるのは、こんなシンプルなことを、こういう意外な言葉で表現できたぞというときですね

――非常にカラフルでバラエティに富んだ12曲ですけど、曲作りはどういう風に?

「リフとかリズムとか打ち込みだったり、バンドのセッションだったり。曲のテーマになるようなものを作って、そこからセッションで曲を膨らませていくというパターンもありますね。あとは曲と言葉が結びついたりする瞬間があって。そうすると変に笑えたり変に泣けたりする。そのスイッチをいじってくれるような言葉と音楽の組み合わせを探していくみたいな感じで」

――歌詞には曲が呼んでると思われる言葉が結構ありますね。

「歌詞はそこを大事にしていて。整合性を考えすぎると自分の投法じゃなくなるんで。結構歌いたいことって、シンプルなことだと思うんですよね。僕は自分のことを驚異的にポップだと思ってるんで。歌謡曲とかがずっと歌おうとしていたことを僕は歌おうとしてると思うんですけど、ただ投げ方が違う、と。だから自分が達成感を得られるのは、こんなシンプルなことを、こういう意外な言葉で表現できたぞというときですね」

――例えば、今回の作品だったら?

「例えば“今夜のまもの”の《こんやのまものはわたしがここで/くいとめてみせましょう》って、意味不明というか不思議な言葉だなと取る人もいると思うんです。要するに『今夜のまもの』って何なのか人によって違うかもしれないけど、僕の場合は憂鬱みたいなものがそうで。それを音楽は食い止められるんじゃないか、一晩だけでもね。『今夜は音楽に身を任せて楽しもう』みたいのはあるじゃないですか。それを《こんやのまものはわたしがここで/くいとめてみせましょう》と言った人はいないんじゃないか、みたいなことですね」

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