リアクション ザ ブッタ 王道メロディを貫いて10年――この先にある「熱き理想」とは

リアクション ザ ブッタ

西川口Heartsというキャパ250人ほどの小さなライブハウスから、国内最高峰のアリーナ会場=さいたまスーパーアリーナを夢みる埼玉のロックバンドがいる。RO69JACK 14/15で優勝を果たした3人組、リアクション ザ ブッタ。幼馴染みでバンドを組み、今年結成10年。不安定で複雑な心のコントラストを抉るように描く佐々木直人(Vo・B)の歌は、目を見張るインパクトはないかもしれないが、ゆえに切実な想いがある。来る2017年2月11日(水)には、2015年から2016年にかけてリリースした「混沌と秩序」の二部作『Fantastic Chaos』と『Wonder Rule』に端を発するツアーのファイナル公演を原宿Astro Hallで迎えるブッタ。この先、彼らは果たして何を求めて歌うのか。その答えは「開かない瓶の歌」だった。

インタビュー=秦理絵

「苦しいけどがんばる」じゃなくて、「楽しくてがんばる」に、バンドがシフトできてきた(木田)

――RO69JACK 14/15で優勝してからは前のドラムが脱退して、1年前に新ドラマーの大野宏二朗(Dr)くんが加入して、めまぐるしい時期だったんじゃないですか?

佐々木 ひたすらライブをやってましたね。宏二朗は半年ぐらいサポートメンバーだった期間を経て、メンバーの契りを交わしたんですけど(笑)。その頃から、いろいろ周りで協力してくれる人が増えたり、僕たちのことを引き上げようと動いてくれる人も増えてきたんです。そのぶん期待に応えたくて、「なんで、まだ売れてないんだ」っていう気持ちも強くなってきてて。大きなフェスに出るチャンスはあったし、そこで爪痕を残すライブをしてきたつもりだけど、まだ僕らはほとんど名前も知られてない。世間に認知されてるような有名なアーティストの方と共演する機会が増えたことで、僕らもそこに行きたいっていうような、良い意味で焦りがあったというか……。

――たしかにブッタは学生時代からオーディションで優勝する経験もあったし、バンドとしての評価が高かった。だからこそ焦りがあった?

佐々木 うーん、焦りと言っても、本当に良い意味での焦りなんです。結果を出してる人たちに多く会って、話をさせてもらうとか、そのなかに少なからず身を置けることで、自然と引き寄せられる。だから早くそっちに行きたいっていう感覚なのかな。

木田健太郎(G) この1年間ライブをやってきて、バンドとしての地力がついてきたから、次のステージに上がれるなっていう実感が湧いてきたんです。メンバー脱退から、不安な時期を抜けて、やっと前向きになれてきた。「苦しいけどがんばる」じゃなくて、「楽しくてがんばる」に、バンドがシフトできてきたんじゃないかなと思ってます。

――大野くんはブッタに加入してからの1年を振り返ってみてどうですか?

大野 いろんな喜怒哀楽がありましたね。夏の「ap bank fes 2016」で初めてMr.Childrenを観て、9月にSILENT SIRENのフェスでSILENT SIRENを観て、「イナズマロック フェス 2016」で西川(貴教)さんを観て。ああいう人たちは本当にいるんだ、みたいな感じでした。CGじゃないんだなって(笑)。そういう人に会えると単純にハッピーな気分になりますよね。

ミスチルよりも何かで勝ってないといけないし、同じようにステージに立つ以上、それが僕らには大事だなと思ってました(佐々木)

――なかでもブッタは……特に佐々木くんはミスチルに影響を受けてるから、「ap bank fes」への出演は大きかったんじゃないですか?

佐々木 僕らはボーンネクストステージに出演させてもらったんですけど、僕たちの出番が、メインステージのBank Bandが出た直後だったんです。桜井(和寿)さんが「ありがとう!」って言ったあとに、僕らがジャーンって始める。だから、実感としてはミスチルの桜井さんの次に歌うってことですよね。そんな経験は今までなかったし、だけど運命的にそういう順番でできたっていうのは、ひとつの喜びでもありましたね。まあ、やっぱり圧倒的に遠い存在であることは実感したんですけど。

――そのステージではどんなことを思いながら歌ってましたか?

佐々木 少しでもお客さんを呼べるように、目の前の人をちゃんと納得させられるライブをしようと思ってました。なんなら、僕らはミスチルよりも何かで勝ってないといけないし、同じようにステージに立つ以上、それが僕らには大事だなと思ってました。ミスチル好きの人に聴いてもらいたいし、絶対に好きになってもらえる自信はあったので。

――実際、お客さんに伝わったなという手応えはありましたか?

佐々木 そこで出てたバンドではいちばんお客さんを呼び込めたと思いますよ。

木田 ライブ前に待機してた人から2~3倍には増えてたよね。

佐々木 僕も東北(福島)出身だし、会場が石巻だったから、その場所への想いも話すことができて、そういうのも良かったんですよね。

――ブッタって、端的に言うと歌と歌詞を大切にしたバンドで、たまに「ミスチルに似てる」って言われることもあるじゃないですか。

佐々木 そうですね。

――それについてはどう思ってますか?

佐々木 けっこう前から言われてたので、僕も何をもって言われるのかなっていうのは、すごく考えたんですよ。たぶんメロディとか歌い方なのかなと思うんですけど。

――そうだね。鋭くて皮肉のきいたロックな曲とか、甘くてセクシーなバラードを歌いわけられる感じとか、なんとなく似てる部分もあるなと思う。

佐々木 でも、冷静に聴くと全然違うじゃないですか。

――うんうん、わかるよ。

佐々木 ただ1回、街頭のビジョンで自分の曲が流れたときに、「あれ、ミスチルの新曲かな?」と思っちゃったんですよ。

全員 あはははは!

佐々木 それで、なんかわかったような気がして。声が入ってくるときの聴き触りですかね。なるほど、と自分でも納得してしまって(笑)。桜井さんイズムを持ってるアーティストはめちゃめちゃいると思うんですけど。自分は記憶がないぐらいから、それが擦り込まれてる部分があるんですよね。

木田 最初のころは歌い方のクセが似てるから、「直したほうがいいんじゃない?」って、いろんな人に言われたんですよ。

佐々木 言われてたっけ?

木田 いや、僕にだけ言ってくる。

佐々木 ああ、嫌だな……それ。

木田 そのたびに(佐々木に)言うか迷って、結局言わなかったんです。楽観的に考えて、ミスチルって嫌いな人よりも、好きな人のほうが多いわけじゃないですか。一見、何かに似てるって悪いことに聞こえるかもしれないけど、でも、自分たちは歌詞の内容をちゃんと伝えていきたいと思っていて、それを日本でいちばんできてるバンドに似てるなら、別に悪いことじゃないと思うんですよ。自分はギターの田原(健一)さんに似てるとかは絶対にないし、宏二朗は宏二朗でバックグラウンドをちゃんと持ってる。佐々木もミスチル以外にエレファントカシマシが大好きだし。そういう3人が集まってやる音楽が全部、ミスチルに似てるねっていう、それだけの印象になってしまうとはどうしても思えないんです。

佐々木 だから、もし最初にそういう風に思われたとしても、ちゃんと違う良さがあるじゃんって思わせられるかは、俺たちの努力次第なんですよね。何に似てるとか言われようが、この世代の人間としてちゃんと今の時代を歌えればと思います。

――なるほどね。今ブッタは「歌詞が伝わる歌」っていうものをブレずに目指してるけど、そこに辿り着くまでは試行錯誤もあったんですか?

佐々木 ありましたね。僕は、そのときに聴いてるアーティストの影響を受けやすいから、一時期、星野源さんにハマっちゃって、星野源さんみたいな曲しかできない時期があったんです。今聴くと、似てるどころじゃないんですよ(笑)。当時、ちょうどサポートにキーボードもいたから、俺はベースを置こうかなと思ったぐらい。

木田 けっこうヒヤヒヤするんですよね。サポートにベースを入れて、自分はアコギを弾くことも考えてるって言い出して、さすがにヤバい。いろんな人に相談しましたもん。「うちのボーカルがこういうふうに思ってるみたいなんだけど……」って(笑)。

――あははは。木田くんの苦労は絶えない(笑)。

佐々木 2年前にエレカシに出会ったときは、ライブは白のワイシャツにしてみたこともあったよね。僕、好きになると、その人の地元まで行ってみたりして、そのバックボーンからかっこよさのわけを知りたいと思っちゃうんですよ。

木田 まあ、佐々木とは小中から一緒だし、長年の傾向で、しばらく時間を置くと戻ってくるっていうのがわかってるので。今はミヤジ(宮本浩次)さんみたいなワイシャツも着なくなったし、ライブで「エブリバディ」って言うのも少なめになりました。

佐々木 たしかに(笑)。

――面白いのが、そうやっていっぱい吸収するのに、結局、最後は佐々木直人に戻る。

佐々木 途中で気づくんです。「俺はこの人にはなれない」って。この人に憧れてるし、こういう恰好をして、こういう表現をしたいと思うけど、本来、自分には良いところも、悪いところもあるから、そこと合わない部分が絶対に出てきちゃうんですよね。そうすると、少しずつフェードアウトしていって、最後に残るんですよ。自分自身が。

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