【インタビュー】リアクション ザ ブッタが初のメジャーリリース! 話題曲“ドラマのあとで”とそのアンサーソングも収録のベスト盤が指し示す「ブッタの核心」

【インタビュー】リアクション ザ ブッタが初のメジャーリリース! 話題曲“ドラマのあとで”とそのアンサーソングも収録のベスト盤が指し示す「ブッタの核心」
2022年夏頃からTikTokを中心にバズを巻き起こしているリアクション ザ ブッタの楽曲“ドラマのあとで”は、彼らが2017年にリリースした楽曲だった。決して我先に時代の脚光を浴びに行くようなタイプのバンドではないが、あるきっかけで時代とギアさえ合えば、いつでも旋風を巻き起こすだけのポピュラリティと、ロックバンドとしての訴求力をブッタの楽曲はいつだって兼ね備えている──ということを上記のエピソードは端的に物語っている。

“ドラマのあとで - retake”やドラマタイアップ曲“虹を呼ぶ”、さらに“ドラマのあとで”のアンサーソングとして生まれた新曲“恋を脱ぎ捨てて”などを収録した、リアクション ザ ブッタのベスト盤『REACTION THE BEST』。結成17年目にして初のメジャーリリース、しかもそれが自身初のベストアルバムという異例の作品ではあるが、ここまでの足跡の総括こそがブッタにとっての最高の「名刺代わり」にもなっているのは、今作を聴けば明らかだ。“ドラマのあとで”がバンドにもたらした変化について、ベスト盤から改めて浮かび上がってくるバンドの核心について、全員に話を聞いた。

インタビュー=高橋智樹


「やっとこの曲(“ドラマのあとで”)が報われてきたぞ」と思いました。この曲の力を改めて感じたし、共感してくれてるんだなあって(佐々木)


──「結成17年目で初のメジャーリリース」というのは、なかなか珍しいケースだと思うんですけども。メンバーのみなさんの率直な感想は?

佐々木直人(Vo・B) 嬉しいですね。遅咲きと言われている先輩方でも、ちょっと思い浮かばないくらいですけど……。

大野宏二朗(Dr) 僕は……(メジャーリリース)すると思ってなかった(笑)。それこそ、インディーズでやり続けている先輩とか友達のバンドもいるし、自分たちもどこかのタイミングで「あ、メジャーみたいなことは経験せずに、でもバンドを続けていくんだろうな」と思っていたところで、こういうお話をいただいたので。「するの?」って(笑)。嬉しいのはもちろんあるんですけど、びっくりの時間が長かったですね。久々にCDを出せるっていうことも含めて、ダブルでびっくりしたのが最初でした。

木田健太郎(G・Cho) 僕は打って変わって、ずっとしたいと思っていて。最終的な目標として、「地元のさいたまスーパーアリーナでワンマンをできるようになる」っていうものがあるんですけど。その過程としては、メジャーでやっていく時期が来るのは、なんとなく必須な気がしていて。今回の話を聞いて、嬉しいと同時に僕としては「ホッとした」という気持ちがありますね。

──それは前から言ってましたよね。「アリーナでワンマンをやった直後に、西川口Heartsで凱旋ライブをやる」のが夢だと。

佐々木 そうですね。告知もせずにシークレットにしておいて、たとえばこのインタビューを見てくださってて、覚えている方だけが来て、来たら「やってる!」みたいな(笑)。

──今はみんながみんなメジャー至上主義みたいな価値観でもないし、デジタルリリースのミニアルバムを重ねながらインディーズで活動するというスタイルのバンドも少なくないわけですけども。単純に「間口が広がる」という意味では、すごく大きな機会ではあると思うんですよね。

佐々木 そうですね。嬉しいです。あと、出会いが本当に嬉しかったですし。自分たちの楽曲を好きでいていただいて、一緒に頑張れる仲間、チームが増えたのはすごく嬉しいです。

──その「仲間」が、一般のリスナーの間にもいるという実感が、特に一昨年〜去年ぐらいから“ドラマのあとで”がいろんな形で広がり始めたことで、みなさんの中にもあったと思うんですよね。曲自体は2017年リリースですけど、それがTikTokなどで広がっていく状況をどうご覧になっていました?

佐々木 「やっとこの曲が報われてきたぞ」というのは思いました。出してから5〜6年ぐらい経ってたんですけど、コメント欄とかでは「自分の恋愛もこうだったな」とか、みんなのストーリーが書いてあったりして。この曲の持っている力を改めて感じましたし、共感してくれてるんだなあって。あと、たとえば男性だったら、この曲をそのまま受け取ってくれてるのに対して、女性だったら「別れた彼氏がこんなふうに思ってくれてたらいいなあ」みたいなコメントがあったりして、「そういう目線もあるのか」って。いろんな人に聴いてもらったからこそ、いろんなレスポンスもあって。そこから知ることも多かったですね。「聴きたい時に聴く」っていう人もいれば、「朝イチに聴く」っていう人もいるし。「朝イチに聴くんだ?」って(笑)。

木田 それまではコメント欄も、全部見きれるくらいしかなかったんですよ。今はもう追いきれないんです、すごい時間がかかっちゃって(笑)。ずっとライブを通して目の前の人に届けるっていうことをやりつつ、SNSもやってはいたんですけど、自分の目の届く範囲だけだったんですよ、コメントもライブも。だけど、「自分の目の届かない範囲まで広がったんだなあ」っていうのが……嬉しかったですね。想像できないところまで広がってるっていうのは、ずっと待ち望んでいたことでもあるし。

大野 リリースよりもっと昔の話ですけど、“ドラマのあとで”のサビだけのデモを聴いた時、「めっちゃいい曲だな」と思ったんですよ。で、そこから何年か経って、『After drama』っていうミニアルバムの1曲として“ドラマのあとで”をリリースした時に、漠然と「ああ、俺たち売れるな」って思ってたんです。でも、当時は思った結果には結びつかなくて、悔しかったのがすごく大きくて……。それが、2年ぐらい前の6月頃の出来事だと思うんですけど、「“ドラマのあとで”が再生数回ってます」って言われた時に、「何が起きてるんだ?」って。「これが世に言うバズなのか?」って(笑)。不思議な現象を見ているような感覚でしたね。


──でもそうやって、楽曲のリリースから時間を空けて広がっていったのって、ある意味ブッタっぽいなと思っていて。そもそも「俺たちの歌を聴け!」みたいなエゴ丸出しのバンドではないし、丹念に作った楽曲をみんなの手の届くところに置いていく、みたいなスタンスで。で、それが聴いてくれる人に刺さってくれれば広がっていくっていう、ポップミュージックのマジックでもあり怖さでもあるところを体現してきたバンドだと思うんですよ。そういうバンドだからこそ、「何年経っても、いいものには気がついてくれる」っていう状況が現実になったのは大きいですよね。

佐々木 大きいですね。そうだとしたら、このベストアルバムにもむちゃくちゃ意味があるということでもあるので。みんなにとっては、もしかしたら新曲として届いてくれると思うと、すごく意味のあるアルバムになったなと思います。

──今回、初のメジャーリリースがベストアルバムというのも、変則的な形ではあるんですけど、まさに“ドラマのあとで”で知ってくれた人にとっては、他の曲は新曲に聴こえるでしょうからね。

佐々木 僕も結構、いろんなバンドを好きになるきっかけはベスト盤だったりしたし、それがバンドの音楽を聴き進める足掛かりになってきたことはたくさんあるから。自信のある楽曲を揃えて、広く知ってもらえるメジャーリリースという形で出すことができて、すごく嬉しいですね。

──トラックリスト的には“ドラマのあとで”の次に来る新曲“恋を脱ぎ捨てて”は、“ドラマのあとで”の切なくも悲しい物語を、女の子側の別視点から見るような楽曲ですよね。

佐々木 今回「新曲を1曲入れよう」っていう話になったんですけど。「どういう曲をやるか?」っていう候補の中に「“ドラマのあとで”のアンサーソングはどうか?」っていうのがあって、僕もいいなと思って──逆に、時を経たからこそ書けた部分もあったと思っていて。「“ドラマのあとで”の主人公は、どういう人と付き合っていたんだろう?」とか「どういう日々を過ごしていたんだろう?」っていうのを改めて考えて書いてみたんです。で、デモを3曲ぐらい書いてみて、この“恋を脱ぎ捨てて”が選ばれたんですけど、それぞれ時系列が違う曲を書いたんですよ。「付き合ってる時」、「別れると決めた瞬間」、「別れた後」……この曲は「別れた後」なんですけど、「アンサーソングにもいろいろあるなあ」って、作ってみて思いましたね。意外と「別れると決めた瞬間の曲」ってないよなあとか。“恋を脱ぎ捨てて”は、新しい街に行って自分の生活を始めて、少し慣れてきたぐらいの、3ヶ月後ぐらいをイメージして作りました。

──思い出がいちばん蘇ってくるタイミングでもありますよね。

佐々木 まだいろいろ整理がついてない、次に行ききれてない頃ですよね。

──結果、“ドラマのあとで”で別れたあとの男の子が思い悩んでいるのと同時進行ぐらいの物語を描くことになりましたよね。ほんの少しのすれ違いで別れてしまったけど、想いは同じだったんだ的な。

佐々木 そうですね……噛み合わなかったんですよねえ……。他人事みたいに言ってますけど(笑)。「まだ好きじゃん!」っていうのはあるんですけど。

──こういう形で続編が聴けるのは嬉しいですよね。漫画的に言うと「佐々木直人先生の続編が聴けるのはリアクション ザ ブッタだけ!」的なワクワク感が、個人的にもありました。

3人 (笑)。

──この2曲が並んでいるだけで、映画的な奥行きを感じますよね。

佐々木 そうですね。このふたりの映画、誰か作ってくれないですかね?(笑) このふたりが付き合ってた時の映画、みたいな。でも別れちゃうんだ?っていう。

──新曲候補の3曲を聴いた印象はいかがでした?

木田 歌詞の内容とかメロディとかは、3曲ともよかったんですけど。アルバムにして“ドラマのあとで”のアンサーソングとして対になった時に──歌詞の内容まで深く聴かなくても、流し聴きでも「あ、“ドラマのあとで”と似てるな」って思ってもらえたらいいなと思ったんです。“恋を脱ぎ捨てて”は3曲のうち最後にできた曲なんですよ。2曲送ってくれた時点で、ちょっとだけまだ時間の猶予もあるし、もう1曲書いてほしくて。次に書くのは、“ドラマのあとで”のテンポ感で、サビは4つ打ちのイメージで、わりとマイナー調で、ちょっと暗い感じで作ってほしい、っていうことを言って、曲が来たら速攻でアレンジして……「この曲がいい」って、佐々木以外は満場一致だったんです(笑)。

佐々木 そうだった!(笑) “恋を脱ぎ捨てて”は、木田のアレンジがいちばん光ってた曲だった、っていうのもありますし。でも、他の2曲もね、すごくいいアレンジができてて──。

木田 ああ、まあね。ゆっくりめのバラードだけど。でも、今回のアルバムに入る新曲は、“ドラマのあとで”ぐらいわかりやすく、リード曲みたいな位置づけになるといいなと思っていたので。同じテンポ感、同じ雰囲気を出せたら、Wリード曲みたいな形になるんじゃないかな?っていう思惑もあって選ばれたところもありますね。


佐々木 去年の12月20日頃に、もう1曲書くことが決まって、1月の10日ぐらいにレコーディングが決まっていたので、結構ヒリヒリする状態の中、10日間ぐらいで3曲書いて。“恋を脱ぎ捨てて”の前に、めっちゃ元気な曲も書いてたんですよ、恋愛関係ないやつを。だからもう、情緒がね……(笑)。別れる女の人のことを考えながら、めっちゃ元気な曲を書いていたので、ウワーッてなって。で、最後の最後に“恋を脱ぎ捨てて”ができて。年末……年始か、練習して、速攻録りました。

大野 俺の印象は──3曲ともよかったんですけど、“恋を脱ぎ捨てて”がいちばん、「新しい直人くん」だったなっていう感じがあった気がして。Bメロとかの《楽しいけど未来なんて〜》っていうところを、16拍子でメロディを作っていくのって、あんまり直人くんはやってなかったなっていう印象があって。「いちばん新しい」っていう意味でインパクトがあったのはこの曲でしたね。

木田 最近の作品で言うと“一目惚れかき消して”とかの、Bメロの言葉の詰まり方は、昔の曲にはあんまりなかった気がするので。そういった意味で「最新の佐々木直人」が出ていると思います。

大野 そう。なんて言うんだろう? 早口言葉?(笑)

木田 まあ、ラップ文化なんじゃない? トラックの中に詰め込む、みたいな。

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