──今回『REACTION THE BEST』に収録されている楽曲の中で、3人それぞれ最も思い入れのある楽曲、あるいは思い出のエピソードがある楽曲をあえて挙げるとすれば?聴いた人の「大事な1枚」になってほしい。「私を構成する9枚」の中にこの、3人の顔が並んだジャケットがあってくれたらいいな(大野)
佐々木 僕は“君へ”ですね。この曲でロッキング・オンさんに関わらせてもらって、CDJ(COUNTDOWN JAPAN)にも出さしてもらって、そのあとレーベルからアルバムも出して……っていう、最初のきっかけをくれた曲なので。なおかつ、聴いてくれる人の傷と一緒にいたい、っていうことを歌っている曲だし、僕らの根幹のような曲でもあるので。そういう曲でオーディションに選ばれたのは嬉しかったし、まだまだ頑張ってやっていけるぞ、って勇気をもらえた曲ですね。
大野 僕は……“Voyager”かな。僕らが多感なタイミングで聴いてた、ギターロック感があるというか。レコーディングも結構「あれやっちゃってみようかな」とか──いつもは結構、木田さんのデモに忠実にやってるんですけど、この曲は「こっちのほうが楽しいから、こっちでやっていい?」って話しながらやってた記憶があって。そういう意味で、すごく好きな曲のひとつですね。
木田 僕は9曲目の“仮面”ですね。“君へ”で(RO69JACKで)優勝して、翌年に出したミニアルバムの『Fantastic Chaos』のリード曲なんですけど。それまでは、ポップとロックの狭間で、どちらかと言うとポップ寄りにいたんですけど、「ロック寄りになろう」って決めたアルバムのリード曲で、今のがっつりバンドサウンドのスタイルに変わったきっかけの曲ですね。
──僕個人的には、コロナ禍の時期に生まれた“Seesaw”が特に印象に残ってますね。《自分が頑張った分だけ 君の力になれるさ》っていうフレーズに、ブッタのスタンスが出ている気がして。
佐々木 この曲の歌詞を書いた時に、「軽薄に捉えられないだろうか?」って悩んだくらい、すごく簡単な言葉を使ったんですよ。全然ひねってないというか。でもなんか、言葉にしてみたら、すごくストレートに届いてくれる歌詞になって。最後の歌詞(《離れていた距離の分だけ/僕らまた 近づけるから》)も、書いてよかったなと思いましたね。
──ありったけの想いをシンプルな歌詞に託す怖さってありますよね。でも、スパッとストレートに言いきるからこその強さもあるし。
佐々木 「好き」っていう言葉を使わずに「好き」を伝えてる曲もめちゃくちゃ多いし。でもやっぱり「君が好き」って言われたらドキッとするし、みたいな(笑)。
木田 “Seesaw”は今まででいちばん、デモから歌詞が変わった曲ですね。今、昔送られてきた歌詞を見てたんですけど──(スマホを見ながら)。
──全部すぐに見れるってすごいですね。
木田 メールで検索したら出てきました(笑)。歌詞がもう、全部違ってますね。悩みに悩み抜いて、この形になってますね。最初《とべ!》じゃなかったよね? 《「会いたい」が積み重なって〜》みたいな歌詞で。
──全然違いますね。
佐々木 思い出した。よりエモーショナル寄りだったのが結構、青空が見える曲になってた。だから、MVもすげえ青空が見えてたし。コロナ禍明け、青空のもとでライブするイメージですね。
──もしかしたら、コロナ禍の状況だから、こういう開放感を求めていたのかもしれないし。今作ったらまた違う方向性の曲になったかもしれないですね。
木田 これは……アンサーソング?
佐々木 アンサーするなあ(笑)。誰に対してのアンサー?
木田 ブランコとか。
大野 遊具のアンサー?(笑)
木田 《離れていた距離の分だけ/僕らまた 近づけるから》ってあるから、近づいたあとの世界(笑)。
──(笑)。あと、こういうところで「好きな曲」ってボーナストラックを挙げるのは反則かもしれないですけど、ライブテイクの“ヤミクモ”はグッときますよね。
佐々木 ライブテイクを入れるのは初めてなので。ミックスを聴いた時、感動しましたね。最初のMCも、エンジニアさんが「この辺からがいいんじゃないか」って入れてくれて、「いいっすねえ! ありがとうございます!」みたいな感じで(笑)。ライブが浮かぶテイクになりましたね。
木田 何より、渋谷クラブクアトロのツアーファイナルで、メジャーリリースを発表して、お客さんも僕らも感極まって──そのあとのRECだったので。ベスト盤って、これから続いていくブッタの歴史の転換点だと思うんですよ。その大事な作品に、お客さんの声も入れられたのはよかったと思いますね。
──新曲候補だった他の2曲も気になりますし、これからもいい曲がいっぱい生まれてきそうな「予告編」としても最高のアルバムになってますよね。
佐々木 このアルバムを聴いてもらえれば、リアクション ザ ブッタがどういうバンドか、わかってもらえると思うので。これから出会う方は、ぜひ通して聴いてもらって、なんならボーナストラックでライブも想像してほしいと思うし。今まで聴いてくれてた人も、この曲順で聴いてみてほしいし、そうすると新しく「あ、やっぱこの曲好きだ」みたいなのが生まれると思うので。CDとして手に取って、そういう部分も楽しんでほしいと思いますね。
木田 今までも聴いてくれてる人にとっては、「この曲の頃からライブハウスに行き始めて……」とか「この曲はドラマのエンディングテーマに決まって、一緒に喜んだね」とか、本当にひとつのアルバムをめくってるような感覚で聴いてほしいと思いつつ、新しい「これからのブッタ」っていう意味でも、“恋を脱ぎ捨てて”だったり“ドラマのあとで - retake”だったりで期待してほしいですね。
大野 いろんな人に聴いていただいて、聴いてくれた人の「大事な1枚」のひとつになればいいなと、切に願っております。ちょっと前に「私を構成する9枚」みたいな企画が流行ったじゃないですか。ああいう中にこの、3人の顔が並んだジャケットがあってくれたらいいなと思います(笑)。