「名だたるバンドを号泣させる」(Kj)――四星球の笑って泣けるロックって何だ!? 盟友対談で迫る(2)
19の時の音源を超えられるか超えられへんかっていうせめぎ合いがありましたね。初期衝動に勝つって、なかなかでけへんことやから(U太)
――前回のアルバム『もはやCDではない』の最後に「マイナストラック」として収録されていた初期音源“桃源郷”を、今回の『出世作』で新録バージョンとして収録しているのは?
北島 これはエンジニアさんが――結成当時からだから、18~19歳の時からずっと、ライヴハウスで音響をやってくれてた人で、その人に今もレコーディングで録ってもらってるんですけど。その人がこの曲を「もう一回、今の技術で録ってみないか?」って言ってくれたんで。ほんまにそのひと言のノリで、「じゃあボーナストラック的な感じでやっちゃおうか」っていう。しかも、『出世作』っていうアルバムなので、「お世話になった人に恩返しをする」みたいなテーマもあるので。それも込みで、最後にそういうトラックが入っててもいいのかなって。
U太 前回はもう、初期衝動がそのままパッケージされてるから。19の時の音源をそのまま入れたものなんで。あれを超えられるか超えられへんかっていうせめぎ合いみたいなものが、自分らの中でもありましたね。初期衝動に勝つって、なかなかでけへんことやから。
北島 初期衝動に勝つ方法は何かな?っていうのは考えましたね。30超えてもう一回起こった衝動みたいなもの――いろんなことを使えるようになった今、「面白いものを作ろう!」っていう衝動で、どうにか太刀打ちしたっていう。19の時のほうは、ほんまに「バンドができて楽しいなあ!」だけでやってて。今のは「こんなのも使える! あんなのも使える! で、それも衝動!」っていう。
――前作が『もはやCDではない』で、今回のアルバムには“もはやMDだ”が入ってますからね。
北島 そうですね(笑)。“もはやMDだ”は、僕が中高生の時に聴いてた曲のタイトルで歌詞を書いてて。“陽はまたのぼりくりかえす”も入れさしてもらってて、勝手に。“陽はまたのぼりくりかえす”の時、僕はたぶん中3だったんですよね。
Kj 俺がその時18だからね。その前の年に、ミニアルバム2枚とフルアルバム1枚出してるから。ミニアルバムのレコーディングしてる時は16とか……サク(桜井誠/Dr)はまだ学生だったな。制服でリハスタに来てたし。
U太 すげえ……。僕、中学の時からコピーバンドでライヴハウスに出てたんですけど。地元のコピバンの先輩が、“The Day dragged on”と“天使ノロック”をやってて。それで「これ誰の曲やろ?」ってなって、それからDragon Ashを聴き始めたんですよね。
10年前に出会ってたら、仲良くならなかったかもしれない。でも音楽の頂を目指して山を歩いて、いろんなことがみんなわかるから、「四星球すごいな」ってわかるんだろうね(Kj)
Kj でも、最初のミニアルバム(『The Day dragged on』)って、あの音楽バブルの時代でも4000枚ぐらいしか売れてなかったから、誰も知らないみたいな状態だったと思うんだけど。タワー(レコード)にテープとかタダで置いてたもん、誰も買ってくんないから。2曲ぐらいカセットに入れて、「もうこの2曲はタダでいいです」って(笑)。
北島 “陽はまた~”は、言葉も飾ってないですもんね。あれ、今書けます?
Kj 書けないだろうね。まあ、書こうとも思わないし。今には今の強味があるから、やろうとは思わないけど、絶対にできないね。でも俺、この比喩をよく言うんだけど……最初の頃はどのバンドも、自分が歩いてるのは畦道だと思ってるから、閉鎖的というかさ、周りを見て「なんだあのクソみたいなバンド」とか思ってるんだけど。でも、で、そういうやつが15年とか20年とか活動して残っていくと――「俺は端っこを歩いてる」と思ってたんだけど、それは実はチョモランマ側なのかエベレスト側なのかっていう違いだけで、結局は同じ山を登ってて。どっかの峠で、シンパシーを感じてるやつらとは出会ってると思うんだよね。で、ずっと歩いてると、自分も苦労してるし、嫌なこともいっぱいあるし、傷ついたこともあるから、少し人に優しくもなれるっていう。今のバンド仲間って、最初の出身とか全然関係ないところにいて、俺らが山を登ってたら「あ、そっち側から登ってきてんだ。面白いなそっちの道」「あ、おまえもそうなんだ」みたいなことでどんどん増えていって。でも、そこから誰かの通った道を歩こうとはせずに、「じゃあまた行くわ」って登っていく、みたいな――それが今のバンド仲間たちのスタイルだと思うんだよね。
北島 すごいわかりやすいですね。
Kj だから、10年前に出会ってたら、仲良くならなかったかもしれない。たとえば、(マキシマム ザ )ホルモンが四星球を観て泣いたりしなかっただろうし、俺が観てもピンとこなかったかもしれないけど。いろんなことがみんなわかるから、「四星球すごいな」ってわかるんだろうね。同じ道じゃないけど、音楽の頂を目指して山を歩いてるから。そういうふうにガンガン歩いてる人ほど、四星球に食いつくじゃない? ガツガツしてるやつが好きだよね、四星球を。
北島 そうですね(笑)。どっか血の気が多い人が喜んでくれるというか。
Kj 同じ頂上を目指してても、音楽の裾野って広いからさ。最初に会うのなんて、天文学的な確率なんだよね。それがもう、すげえ無理して、嫌なことをいっぱい経験すればするほど、どんどん頂上に近づいて、会う可能性が増えていくっていう。だから会ってるんだよね、たぶん。「いいバンド仲間に囲まれてるなあ」ってみんな思うだろうし、俺ももちろん思う。でも、それだけ歩いてきたから、どんどん登って狭くなっていった結果として会ってるんだろうなと思う。
北島 でも、上が見えない不安はありますよね?(笑)。
Kj もちろん。間違いない! ガクブルよ?(笑)。後ろから来るトレッキングシューズの音がめっちゃ聴こえるもん。「すげえ速いの来た!」みたいな。
学生時代、「“Viva la revolution”って、そんだけ言い切る人おったかな?」っていう衝撃はあって。それは今の自分らのスタンスにはつながってる(北島)
――だから、10代の頃に「Dragon Ashカッコいい!」って思って、憧れてそのままやるようなバンドだったら、こういう形では出会ってないかもしれないですよね。
北島 なるほど(笑)。どっちかっていうと、精神性を真似るみたいなところが多いですかね。
Kj そうだよね。俺もそうだと思う。人のライヴを観て、精神性に悔しいと思うし。
北島 あと、学生時代の時の話で言うと、「“Viva la revolution”って、そんだけ言い切る人おったかな?」っていう衝撃はあって。それは今の自分らのスタンスにはつながってるなあとは思いますね。自分たちで先に言っちゃって、そうせざるを得ない、みたいな。その、「何かを変えたいな」っていう精神性には、一番影響はもらったかなと思いますね。
U太 この間の「MONSTER baSH」で“クラーク博士と僕”を歌ってくださったじゃないですか、歌詞を見ずに。
北島 なんかねえ、Kjさんはすごく粋なんですよ。ロックスターなんですけど、僕らみたいなコミックバンドでも、ちゃんと笑わそうとするんですよね。「MONSTER baSH」でも、フラフープ渡したらフラフープしようとしてくれるし。たぶん、エンターテインメントっていう土俵で、いろんなものに負けたくないんでしょうね。
Kj うーん、まあね、ライヴではね。でも、フラフープは本当はしたくない!(笑)。
北島・U太 ははははは!
Kj ただ、フラフープを客前で出されて、「いや、俺そんなんしねえよ」とかあり得ないでしょ?(笑)。だから、最高に嫌だけど、もうやるしかなかったんだよ。
――(笑)。最後にKjさん、四星球の今後に向けて、エールだったりアドバイスだったり、ひと言メッセージをいただければと。
Kj まあ、言うほどキャリアも年齢も変わんないんで、アドバイスとかはないんですけど……去年、「Bowline(2015)」で四星球にオファーして出てもらった時に、1万人ぐらいの前で「次の『Bowline』は、自分たちが主催して、Dragon Ashを呼ぶ!」って言ってたんですけど。それはドラゴンの本編が終わって、アンコールまでの3分くらいの間に話したことで。「どう? これやれる?」って言ったら、目を合わせずに「……今はいいじゃないですか」って。できなそうなのかな?って(笑)。
北島 ありましたね(笑)。Kjさんがライヴ本編終わってハケてきて、真っ先に来てくれたんですよ。
Kj なので、お呼ばれしたいです。「対バンして負けたくないバンド」の上位に入るバンドなので。今はわりと、ドラゴンはこっちのステージ、四星球はこのステージ、みたいな感じでやることが多いけど、同じ板の上でやれるとまた違うと思うので。
北島 ……頑張ります!(笑)。