“Distress of Casual boy”は、toldになって何か曲つくんなきゃっていう時にできた曲で。4人でいちばん最初に音出した時にできたフレーズが曲になった(Yamazaki)
――まず、どういう経緯で4人が集まってtoldというバンドが生まれたのか、というところからお話を訊きたいと思うんですが、みなさん、高校で出会ったんですよね?
Yamazaki Yuta(G) そうです。高校の先輩、後輩みたいな感じです。
Suzuki Hozumi(Vo・G) 僕とAkabane(Shingo/Dr)が同じ年で、その1個上の先輩がYamazakiくんとArishimaくんですね。
――なんでその4人でバンドを組んだんですか?
Suzuki たまたまですね(笑)。軽音楽部に入ってて、そこに行ったらいつもいる人っていう。
Yamazaki 仲は良かったので。そのまま高校を卒業したんですけど、まだその頃はtoldではなくて、同じ高校のさらに1個上の先輩がピンヴォーカルで、その後ろにいるのがtoldの4人っていう前身バンドを組んでて。で、そのヴォーカルの人が抜けちゃってtoldになったと。それが2009年の夏ですね。
――最初はSuzukiさんはヴォーカルじゃなかったんですね。toldになって自分が歌うってなった時は、どうでした?
Suzuki 次のライヴが決まってるなかでそのヴォーカルの人が抜けちゃったので、4人で「どうしようか?」みたいになって。ライヴ全部キャンセルしようかみたいな話もあったんですけど、結局4人でやることになって。で、次のライヴまで1週間しかなくて、その間にバンド名も曲も全部新しく変えてやろうみたいな感じになって、全員ヴォーカルする曲があって。だけど、知らないうちに僕以外のみんなは歌わなくなっていったっていう(笑)。
――気づいたら自分だけが歌ってたと(笑)。
Suzuki そう。最初のほうは「あれ、また俺の番?」って(笑)。
Yamazaki 自然に収まりのいい方向に転んだら、Suzukiがヴォーカルになったって感じです。
――なるほど。ファーストアルバムを出したのは去年の夏ですけど結成から5年くらい空いてるわけで。その間にシングルは出してますけど、アルバムをつくろうみたいな話になったことはなかったんですか?
Suzuki うーん、特になかったよね。曲があんまりなかったもんね。
Yamazaki っていうのと、この状態でヴォリュームあるやつ出してもっていう。
Suzuki そうそう。あと、ヴォリュームあるのをつくるお金もないし(笑)。
――去年出したのはどういう経緯で?
Suzuki 前のシングル2枚(『FLAG』と『TAG』)の時に、ARAYAJAPANっていう友だちのバンドのマネージメントをしているところがあって、そのつながりで頼んでみましょうかみたいな。それでもうちょっとパンチのあるやつ出しましょうってことでアルバムをつくったって感じですね。
――お話を聞いていても、toldっていうバンドは全然ガツガツしたところがないなあと思って。
Yamazaki まさにその通りなんじゃないですかね(笑)。マイペース感はありますね。
――それはどうしてでしょうか?
Suzuki 自分たちのできることってだいたい目に見えてわかるじゃないですか。自分たちの100%の状態があって、「じゃあ200%のことを目指してやろう」って言っても200%を出せるはずがないと僕は思ってるので。だから、現実的に考えてやってる結果だと思います(笑)。
――それは去年アルバムを出してからも変わらず?
Suzuki あんま変わんないよね。
Yamazaki まあ本質は変わってないんでしょうけど、スケジュールのつくり方は今回と前回では対極というか。この『KIERTOTIE』は12月に出すっていうところから決まったので、結構詰めてつくった感じはありますね。
――今回のアルバムに入ってる“Gardens”は昔からある曲だと思うんですけど、他の曲はわりと最近つくった曲ですか?
Suzuki “Gardens”と“Distress of Casual boy”以外は8月の末からつくり始めた。
Yamazaki “Distress of Casual boy”は、toldになって何か曲つくんなきゃっていう時にできた曲で。この4人でいちばん最初に音出した時にできたフレーズがそのまま曲になりましたね。今思うと、曲の表現がすごくシンプルでわかりやすくtoldっぽいと思います。まあ、toldっぽさってなんだって話ですけど(笑)。
山梨のピラミッドは、部屋の鳴りとか周りの環境が思ったよりもすごく良くて。でも、「これ音出して大丈夫なの?」っていうくらい防音がされてない(笑)(Suzuki)
――今回のアルバムはピラミッドでレコーディングをしているわけですが、ピラミッドでレコーディングをするバンドを、私初めて見たんですけれども(笑)。
Suzuki うん、僕も初めて聞きました(笑)。もともと、最初にファーストアルバムの『Early Morning』を出した時に、変なところでレコーディングしようというか、普通のところで録っても普通だから、広いところで広い鳴りで録ろうみたいな話になって。で、エンジニアの上條(“KJ”雄次)さんと打ち合わせをした時に、いろんなCDとかレコードを聴きながら、「こういう感じがいいね」みたいなことを話して。じゃあ、そういうのはどこで録れるんだろうねって探してる時に、南大沢文化会館っていうホールが見つかって。そこは昔、envyとかthere is a light that never goes outとかがライヴをやっていたっていうのもあって、じゃあそこでやろうと。で、その1枚目のマスタリングの時に、上條さんと、2枚目はどこで録ろうかみたいな話になりまして。そしたら、上條さんの実家の近くにピラミッドがあるって(笑)。
――(笑)日本にピラミッドってあるんだっていう。
Yamazaki エジプトですよね、完全に(笑)。
Suzuki そこはヨガの教室とかをやってるんですけど、ノイズのイベントもやってたりして。夜中じゅう音も出せるみたいな感じの、結構アヴァンギャルドなところで(笑)。だったらレコーディングで全然問題なく音出せるよねって。部屋の鳴りとか周りの環境が思ったよりもすごく良くて。でも、「これ音出して大丈夫なの?」っていうくらい防音がされてない(笑)。
Yamazaki 近くに民家も結構建ってるから、大丈夫なのかな?みたいな。で、演奏してたら近所のおばちゃんが来たりしたよね(笑)。
――ピラミッドでこういう音を録るために行きたいとか、そういう目標は特になかったんですか?
Yamazaki むしろ、「どんな音になるかね?」みたいな感じです。「霊的な、スピリチュアルな力とか出ちゃうんじゃねえ?」とか言ってましたし(笑)。その場所自体も富士山からのパワーが集まるところって言われていて。
Suzuki まあ、そういうスピリチュアルなバンドでは全然ないんですけど(笑)。
――でも、普通に考えたら、ピラミッドでレコーディングやろうなんて思わないじゃないですか(笑)。
Yamazaki でしょうね(笑)。やればいいと思うんですけどね。
Suzuki うん、楽しいですよ。旅人のレコーディングって感じです(笑)。ピラミッドは高さも10メートルくらいあって、四角錐だから壁も斜めになってて。で、最初にどこにドラム置いたらいちばんいいかなみたいな感じで探しながら始めていって。こういうことしたいと思ったらできるんですけどね。誰もやらないから、みんなできないと思ってるだけなんじゃないですかね。
――次はどこで録りたいとかってあるんですか?
Yamazaki そこなんですよねえ。
Suzuki 逆に、スタジオに行っちゃうっていうのもありだけどね(笑)。あと、個人的には外でやりたいなって思ってたんですけど。今回もフィールドレコーディングみたいな感じで、外にマイクを立てて外の音を録るみたいな時間もあったので。
――レコーディングに入る前に、メンバーの間で話し合いみたいなことはするんですか?
Yamazaki なかったですねえ。ファーストを出してツアーもひと段落して、「じゃあ次何しようか? ファーストとは違うことをやってみよう」みたいな感じで曲をつくったら、すっかりできなくて(笑)。で、それから時が経ち、12月にCDを出すぞと。だから、マイペースなのは変わらないけど、今回はちょっと尻を叩かれたというか。
――12月に出すって決めたのはどういう理由だったんですか?
Yamazaki 今年、フジロックのROOKIE A GO-GOに出演したんですけど、そのパワーを持続させたいという(笑)。ROOKIEは楽しかったんですけど、もっとデカいところでやりたいなみたいな気持ちもあったので。純粋にコンペとかそういう賞に縁遠いというか、そもそも興味がなかったんですけど、ふと思い立って送ってみて、それで誰かの目に留まって出演できるバンドって、決して多い数いるわけじゃないので。だから、ちゃんと評価されて、「あっ俺ら残れるんだ」っていうのは思いました。「誰か観てくれる人いるんだな、嬉しい」みたいなのはありましたね。