女性シンガー・VALSHE、復活のアルバム『RIOT』までの歩みを明かす

VALSHE

VALSHEがサウンドプロデューサー・minatoと結成した「ViCTiM」。このユニットでの活動が2016年に入ってから本格化していたが、minatoの心身不良による休止を4月に発表……そんな突然の出来事を経て完成したのが、4thミニアルバム『RIOT』だ。ソロ名義での復活作であるこの1枚は、一度は立ち止まったからこそ改めて燃え上がった音楽への強い想い、歌うことへの情熱が生々しく刻まれている。VALSHEの過去の実像、現在地点、見据えている未来も浮き彫りにする今作とは? 本人に語ってもらった。

インタビュー=田中大

立ち止まらなかったら作れなかったアルバムも作りたいと思って。そこから今回の制作が始まったんです

――ソロ名義で再び動き始めたわけですね。

「はい。ViCTiMとして今年から活動を始めていて、2作目を作っている最中にminatoが休養することになったんです。その頃は自分も少し落ち込みました。minatoはデビュー当時から一緒に制作をしていましたから」

――ViCTiMがストップして、どのようなことを考えました?

「たしか3日間くらい『自分はどうしたいのかな?』って考えていました。そして、止まってしまったことに対するショックやminatoへのいろいろな気持ちと同じくらい、『曲を作りたい』っていう気持ちがあることに気づいたんです。そういう状況でも曲を作りたくなるとは、思いもよらなかったですね」

――それがソロとしての復活に繋がったんですね。

「はい。ただ休止するだけにはしたくないという気持ちに至りました。そして、立ち止まることにならなかったら作れなかったアルバムも作りたいと思って。そこから今回の制作が始まったんです」

――大半の曲の作詞作曲を手がけていますが、そこに関しては、どういう背景があるんでしょうか?

「今回の制作にあたって、ViCTiMと既存のVALSHEの融合をはかりたいというのがあったんですけど、これまではサウンドプロデュースがminatoで、ビジュアルプロデュースがVALSHEっていう役割を設けてやっていたんです。でも、サウンドプロデュースの権限をもう少しVALSHEに渡したいという話になってきていたんですよね。だから自分で曲をどんどん作るようになっていて、準備を進めていたんです。それが『RIOT』に繋がったということですね」

――デビュー以来、ずっと駆け抜けてきたアーティストが立ち止まるのって、かなり辛いことだと思うんですけど、その点に関してはいかがでした?

「やはり辛さはありました。以前からminatoにも『VALSHEはマグロだ。止まると死んじゃう』と言われていましたから(笑)。予定されていないことが起こるっていうのは、今までになかったことですし。立ち止まった時は、ただただひたすら泣いたり、ボーっとしていました。でも、そういう状況にありながらも、『この今の自分を曲にしたら?』ということを考えている自分がいて。それに対して『なに考えてるの?』っていう自分もいたんですよね。そういうことが“RIOT”という楽曲のテーマになっていたりします」

中心にあるのは音楽なんですけど、音以外の要素もある方が楽曲により愛着が湧くものですから、今後もそういう表現をさらにやっていきたい

――困難にぶつかった時に思考停止してただ流されるのではなく、自分の意志と力で「暴動=RIOT」を起こして進もうとする姿を描いた1枚として今作を受け止めたんですが、どういう思いをこめています?

「おっしゃる通りですね。この『暴動=RIOT』は、秩序を乱すような意味ではないので。止まろうと思えばどこまでも止まっていられるようなことが起きた時に、自分自身を奮い立たせたいという気持ちを表しています。そして、自分自身も止まってしまうような状況となったわけですけど、気持ちを動かしてくれるものは音楽、曲を作りたいという衝動だったんです。『そういうものが、思っていた以上に自分の原動力になっていたんだな』と実感しました。だから心の内の『暴動』を起こしたくて、形にもしたくて。それが作品全体のテーマになっています」

――2曲目の“RIOT”からまさに伝わってくるものですね。

「はい。抱いている悲しみとかを『怒り』というものに代えて、楽曲の“RIOT”は歌いたいと思っていました。これは怒りながら歌っています(笑)。でも、もっと吐き出すようなものになるのかと思っていたら、実際聴いてみると決意表明のニュアンスの方が強いものになっているなと感じました」

――“RIOT”は、ミュージックビデオも印象的でした。

「ミュージックビデオは、VALSHEとグラスと水という3つの素材を使って喜怒哀楽を表現したいとイメージしていました。フィーチャーされているのは『怒りの感情=グラスを割っているVALSHE』なんですけど、登場する4面の壁は喜怒哀楽を表しているんです。そして、グラスと水は、感情の異なるVALSHEが持てば扱い方も変わるし、水の表情も変わる。でも、最終的に怒りに侵蝕されてグラスはどんどん割れていく。では、その割れたグラスは最終的にどうなるのか? 様々な解釈ができると思うので、ぜひ観て頂きたいですね」

――歌や音楽をビジュアル表現も含めた様々なものにリンクさせて提示するのも、VALSHEさんの魅力だと思います。

「ありがとうございます。中心にあるのは音楽なんですけど、自分自身、音楽を聴いた時に絵が浮かぶことがすごく多いんです。音以外の要素もある方が楽曲により愛着が湧くものですから、今後もそういう表現をさらにやっていきたいと思っています」

――そして、歌詞からもいろんなものが伝わってきますよ。“COUNT DOWN”は、minatoさんとの共作なんですね。

「はい。この楽曲、実はデビュー前、6年くらい前からあるんです。どういう楽曲がVALSHEに合うか模索していた時期に、作曲者のdorikoが提案してくれたのが “COUNT DOWN”です。すごく気に入ったので、何かいいタイミングで出さないともったいないなと思って、『来るべきタイミングで出したいんだ』という気持ちがずっとありました。その来るべき時が今だったということですね。『RIOT』という作品は今の自分を表したものですし、ViCTiMを経たからこその新しいサウンドを形にしたかったんですけど、『ザ・VALSHE』という王道のサウンド感も含めたかったんですよ。『では、王道のVALSHEとは?』と考えた結果、思い浮かんだのが“COUNT DOWN”でした」

――6年前からこのタイトルだったんですか?

「その頃から“COUNT DOWN”でした。minatoが書いた歌詞のピースが散りばめられたものも当時からあって。原型のテーマは昔のVALSHEの心情やスタンスでしたけど、今のVALSHEと変わっていない部分もあるので、復活に際してふさわしい楽曲だなとも思っていました。今回の作品のような前を向いて進むような気持ちに至るまでは、自分自身はすごく疑り深くて、諦めが早く、粘ることをあまり知らないような人間だったんです。“COUNT DOWN”には、そういう自分がよく出ていると思います。そして、『諦め半分で物事を見てしまっていた頃の自分が今はないのか?』と問われれば、そうではなくて。当時と変わらない自分がいながらも、そういう考え方をしないようにしているだけなんだと、この歌詞の原型を見た時に感じました」

――《忍び寄ったgrayをいつも白黒に分けていくSuspect》っていう一節が印象的です。

「中間のグレーが嫌いだったんです。白か黒かどっちかにしてくれって言っていましたから。今もそこは変わらないです。でも、グレーも受け入れなければいけないことも理解するようになったんですよね。それは諦めとは違って、許容する自分を作ることができたということなのかなと。そんなことを感じたりもしています」

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