VELTPUNCH 表現の核とバンドの在り方を語る(2)
音を出す欲求とイコールではないまでも、セックスとかオナニーとかは僕の中でどこか結びついている。それを描くっていうのは自然なことなんです
――「歌だけじゃなくて、鳴っているあらゆる音が主役なんだ」というのも、VELTPUNCHの曲を聴いて感じる大きな部分です。
「歌は後で乗せることが多いんです。ギターリフとかドラムとかの気持ちいいものをきちっと作った上で歌を乗せるわけですけど、うちは男女ツインボーカルですから、キーが合う方が歌うように選択できるんです。そういうのも強みになっているんでしょうね。ひとりのボーカリストの歌声を活かす演奏を考えると一定の縛りが出ますけど、うちはそういうことがないんです。楽曲のベストなキー、楽器のベストな鳴りとかを選択できるんですよね。あと、男女の掛け合いで世界を描けるっていうのも、男女ツインボーカルの良さですね。子供の頃にBARBEE BOYSとかサザンオールスターズとか聴いて、男女の掛け合いのエロさにドキドキしていましたから」
――エロスは、VELTPUNCHにとっても大切な一要素ですね。歌詞の随所に、そういう事柄が散りばめられていますし。
「そうですね(笑)。僕は作品の中からセックスとかオナニーとかを排除しているものにリアリティーを感じないので。それは映画や漫画とかも含めてなんですけど。音を出す欲求とイコールではないまでも、セックスとかオナニーとかは僕の中でどこかしらで結びついているものだと思いますし。特に中高男子校で育っている僕の中で、そこを排除した表現っていうのは考えられないというか。意図的に下ネタを入れるということでもなく、それを描くっていうのは自然なことなんですよね」
――なるほど。あと、今回、Aメロ、Bメロ、サビを3パターンずつサイトにアップして、投票で組み合わせを決めて曲に仕上げるという試みをしたのも気になる部分なんですが。あれはどういう意図だったんですか?
「“死人と梔子”という曲ですね。単純に面白いことをやってみたかったんです。同じキー、同じBPMで、いろんな組み合わせで曲を作るというのはDTMで自分でもやっているんですけど、『お客さんに選んでもらったらどうなるんだろう?』と。歌詞は花について書いたので、『梔子(クチナシ)』をタイトルに入れることにしました。クチナシだけだと面白くないので、『死人に口なし』をもじって、このタイトルになりました(笑)」
――(笑)遊び心もいろいろ発揮しているバンドですよね。例えば、“Shandy gaff in the cold glass”のアニメーションのミュージックビデオが衝撃だったんですけど。最後の場面のヒロインの顔がすごくて……。
「監督さんが80年代のシティポップ的なものをこの曲に感じたようで、当時の文化のパロディを盛り込んだものになりました。アニメーションになったのは、メンバーがあまりミュージックビデオに出たがらないからという事情があったんですけど(笑)」
――YouTubeにアップされているミュージックビデオのコメント欄を見たんですが、海外からのものが結構多いですね。
「『隠の王』というアニメの主題歌をやって以降、海外でも聴いてもらえるようになったみたいなんですよ。あと、ちょっと前に“LET IT DIE(OAO)”という曲が海外の2ちゃんねるのようなスレッドで取り上げられたらしく、それで書き込みが一気に増えたみたいなんですよね。そういえば……海外からの『どうしても会いたいんですけど』っていうのもありました。VELTPUNCHのミュージックビデオを撮った監督さんのところに『新婚旅行で日本に行くからVELTPUNCHのメンバーにどうしても会いたいんだ』という連絡があったんですよ。その監督経由で『こういう連絡が来たんですけど』と(笑)。『その日はスタジオだから、地元まで来てくれるんだったらいいよ』という話をして、会って食事をしました」
――曲って、思わぬ形で広がるんですね。
「ほんとそうですね。一時期やっていたフェイスブックに、アルファベット以外の文字のフレンドリクエストみたいなのが来たこともありましたし」
生活の中で感じることとかフラストレーションの救いとして音楽をやれているというのは、限りなくリスナーさんに近いのかなとも思います
――さて。今回のアルバムについていろいろお話をして頂きましたが、前作を越えることができた手応えがあるんじゃないですか?
「間違いなくいいものができたと思っています。ベストアルバムにはない新しい価値観、新しい発見もありつつ、VELTPUNCHのサウンドのフォーマットの中できちっといいものを作れたという手応えを持っています」
――20年近く充実感を噛み締め続けながら音楽をやれているって、素敵なことですね。
「むりやりやらされるような環境じゃなかったのがラッキーだったのかなと。僕が普段やっている仕事って、音楽と全く関係がないんです。そのことによって擦り減る部分もあるんですけど、音楽1本で生活をするとなると、それはそれで大変でもあると思うんです。CDがどれだけ売れるかが生活に直結するという恐怖の中で曲を作るって、ほんとすごいことですよ。でも、僕らはこういう活動のやり方を続けてきて、今回も本当に好きなことをだけをやることができました。作品を作ったからには広める努力をいろいろしますし、関わってくださっているみんなが納得できる形になることを大人としてもちろん考えます。そういうことを踏まえつつ、やりたいことだけを入れた作品を作ることができているのは非常にラッキーで、ありがたいことですね。生活の中で感じることとかフラストレーションの救いとして音楽をやれているというのは、限りなくリスナーさんに近いのかなとも思います」
――リスナーも生活の大半は、音楽とは関係ない環境で過ごしているでしょうからね。
「はい。僕もそうなんですよ。仕事関係の人の中で音楽の話をできる人は、殆どいないですから、週末にスタジオでメンバーと会って音楽の話をできるっていうだけで嬉しくて。マーシャルアンプにギターを繋いでスイッチを入れて、音を出した瞬間のゾワゾワってする空気を昔から変わらずに感じることができています。音楽に飢えた環境の中で過ごしているから、音楽を作る瞬間はいつも新鮮で楽しいんですよ」
――マイペースな活動をこれからも続けたいですか?
「このままという感じではないですかね。自分たちのペースでやれていて、『これくらいのキャパでライブをやれる』っていうのも掴めているんですけど、そこだけ見ていても面白くないじゃないですか。来年20周年を迎えるので、より大きいキャパの会場でやって、今までとはまた違う一体感をいかに作るか? そういうことに向き合って挑戦したいというのもあります。『今のままでいいです』っていうのは何か違う気がするんですよね。自分たちに負荷をかけて広げるのは、メジャーでまたやり始めた今しかないだろうと思っています」
ミュージックビデオ
リリース情報

『THE NEWEST JOKE』
2016年7月20日(水)
¥2,500+税 / TECI-1506
収録曲:
1.THE NEWEST ROCK
2.グッバイアンサー
3.LET IT DIE(OAO)
4.Brand new toy
5.Shandy Gaff in the cold glass
6.耐え難き暑さと湿度のせいで「青い嗚咽 」は噴水とベンチしかない小さな三角公園 の片隅で黒い卵を温める事を諦めた
7.Don't stop me
8.また会えたらKISSをしよう
9.BENCH WARMERの逆襲
10.軽い冗談
11.ミニスカートキラー
12.シーズインザスリー
13. 死人と梔子
14.ズーラシアゲイン
ライブ情報
「VELTPUNCH "THE NEWEST JOKE" Release Tour 2016」
2016年9月24日(土)下北沢 ERA (w/ susquatch , told)
2016年10月15日(土)名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL(ワンマン)
2016年11月5日(土)心斎橋 Pangea(ワンマン)
2016年11月13日(日)新代田 FEVER(ワンマン)
チケット2次発売日:2016年7月23日(土)10:00~2016年7月31日(日)23:59(イープラスe+のみ)
一般発売:2016年8月13日(土)~
プレイガイド:イープラス(http://eplus.jp)、ローソンチケット(http://l-tike.com/)、チケットぴあ(http://t.pia.jp/)
クラウドファンディング
期間:2016年7月27日(水)20:00~9月27日(火)23:59
目標人数:100人
目的:2016年10月からスタートさせるツアーのドキュメンタリーDVD制作
リターン:直筆のイラスト原画、アコースティック音源、限定Tシャツ、完成したDVDなどのオリジナルグッズ、映像の視聴会&メンバーを交えてのパーティープランなどを金額に応じてプレゼント
提供:テイチクエンタテインメント
企画・制作:RO69編集部