俺たちアーティストはどっかで啓蒙していく責任がある(MIYAVI)
――MIYAVIさんは以前から「世界をギターで踊らせる」とおっしゃってますけども、HYDEさんもMIYAVIさんも、世界を相手に――というか世界を舞台に闘ってらっしゃる方ですし、今回の“All My Life”も、ビートと歌でどれだけユニバーサルな訴求力を持ち得るか?っていう視点を持っているおふたりだからこそのコラボレーションになってると思うんですよね。
MIYAVI そうですね。やっぱり自分の目的意識というかミッションも、どんどん明確になってきていて。パシフィックオーシャンに隔てられた壁をどうぶち壊すか?というか。全世界で鳴り響いて、どこの人だろうと踊れる、だけど日本のマーケットにも刺さる――これってもう、だいたいみんな諦めてるんですよ。(日本と海外は)別物ですっていう……「果たして別物なのかな?」「むしろ別物であることが正解なのかな?」って。レコード会社さんにとっては、もしかしたらそっちのほうが楽かもしれないし、まだフィジカル(CD)が売れたりしていいのかもしれないですけど――。
――(笑)。
MIYAVI 俺たちアーティストはどっかで啓蒙していく責任があると思うし。何より、世界から見た時に、「えっ、日本ってこうなの?」って思われたくないじゃないですか。むしろ「うおーっ!」って思わせたいし。そこの温度感、バランスがすごく難しかったですね。言葉の選び方もそうだし。ただ、最低限ビートに関しては――日本人っていうアイデンティティとか、プレイに関してもありますけど、ローカル感っていうのはあまり意識してないですね。今回は特に、そういう感覚で、その温度感で話ができる人たちにしかオファーしてないですね。HYDEさんもやっぱり、VAMPSもそうだし、L'Arc〜en〜Cielでもアメリカでやってたりするのも含めて――そういえば、最近ロスのスタジオでばったりHYDEさんに会って、それでちょっとずつ連絡とかするようになったんですよね。
HYDE 僕はもう、普段から「カッコいいなあ」と思って見てるし。家族引き連れて、アメリカで本気で頑張ってはるから。どっか尊敬というか――普通じゃないもん、大変だと思うし。日本とアメリカ行ったり来たりっていうのは、なんだかんだですごいことなんですよね。もちろん、僕たち日本人はもっと世界に出て行くべきだと思うけど、でもそれをやろうと思ったら、いろんなパワーが必要だから。彼はそれを頼もしいくらいにやってくれてるから、見てて気持ちいいなあと思ってたんですよ。だから今回も、話があった時に――普通だったら僕、忙しい時期やったら断るんですけど、「……MIYAVIだったらしょうがねえなあ」っていう(笑)。光栄だからね、声かけてもらえるのは。だから、「何とかしてみよう」っていう気持ちになりましたね。
MIYAVI ありがとうございます!
MIYAVIには天性の勘の良さを感じる(HYDE)
――お互いを見た時に「相手が持ってて自分にない要素」を挙げるとすれば?
HYDE ……全部ない!(笑)。
MIYAVI (笑)。
HYDE 彼はパフォーミングも素晴らしいし、ギターも上手だし、歌もカッコいいし……全部ないな、俺には。歌は多少頑張ってますけど――。
――いやいやいや。「多少」って(笑)。
HYDE それ以外は本当にね、お見事!っていう感じですかね。天性の勘の良さを感じますね。
MIYAVI ……返しにくいじゃないですか(笑)。でも、僕が今回、ステージを一緒にやらしてもらって思ったのは、すっごい自然なんですよ、すべてが。それがキャパシティなんだろうなあっていうか。それは確実に僕にはないというか。なんかこう、ふわーっとしてるじゃないですか。
HYDE (笑)。
MIYAVI でも別に、ふわーっとしてるけど、ダラッとしてるわけじゃないんですよね。で、気づけばいろんな人が巻き込まれてるっていう。今回のハロウィンイベントも後輩が多い中で――だってあれ、3日間でしょ? いろんな人がそこに立って、それを巻き込んでエンターテインしていくっていうのを、自然とやってるから。それは俺にはできないし。もちろん経験もあると思うんですけど、人となりなんだろうなあっていう。それはアーティストとしてもそうだし、男としてもそうだし。だからこそ、これまでのキャリアも築けたんだろうなって。器の大きさを感じましたね。
――武道の達人は普段ファイティングポーズとってないけど、自然体で最強、みたいな感じですかね?
MIYAVI そうですね。ふわーっとしてるんですけど。
HYDE 確かに、そこは違うかもね。逆に彼は、気合いを常に感じる。常に闘ってる感じがするね。
MIYAVI 自然体っていうか、力が抜けてる状態だから、人が近寄れるというか。俺はそこがね、まだ熟してないというか――自分で言うのも何ですけど、まだ若い部分で。意識してないんですけどね。でも、それは本当にすごいなと思いました。俺の場合は、脱力したら本当にそのまま脱力しちゃうから(笑)。
――でも、そのファイティングポーズで道を切り開いてきた人ですからね。
HYDE そうそう。
MIYAVI でも俺もね、ここから先、経験を積めば、そういう境地というか感覚が見えてくるのかなあと思いますけど。今回イベントやらしてもらって――ステージは一瞬でしたけど、今回の楽曲のやりとりも含めて、すごくキャパシティを感じましたね。あと、さっきの話とも通じるんですけど……「日本で通用するもの」と「海外で通用するもの」を一緒にしていく作業を、この作品も含めてこれから先やっていくんですけど。そこの交わる部分を持ってる人だなあって。それはすごく大きなことだと思いますね。マジョリティに届くキャッチーさっていう――そこはもしかしたら、さっきの「いい曲やったらええやん」っていう言葉に集約されてるかもしれないですけど、そこの「キャッチーであることのスタンス」っていうものはほんと、作品全体に影響しましたね、最終的に。だって、こんなキャッチーなリフとか、出てこなかったでしょうからね。別に「もっとキャッチーにしてよ」って言われたわけでもなくて、それは勘みたいなものでしたけど、ポッと出てきたものが「もっとこうじゃねえかな」「こっちなんじゃねえかな」ってずっと感じてて。だから俺、勝手に書き直してたんですよね。
HYDE (笑)。でも、どんどん面白くなっていったし。すごいなあと思って。
――以前、MIYAVIさんは『ROCKIN'ON JAPAN』誌のインタビューで「日本のアーティストのアメリカ進出はたいてい、野球をやってるところに剣道のルールで乱入するようなもの」とおっしゃってましたけども。
MIYAVI そう、俺が言ったのは、バット持って「面!」ってピッチャーに向かっていったら退場でしょ?っていう(笑)。日本の音楽ってそういう部分があるというか。好きな人は聴くけど、聴かれてないじゃないですか。向こうのラジオでもかかってないし。
HYDE 必要とされてないからね。国内の音楽で十分まかなえるから。
――そのたとえで言うと、HYDEさんは「野球のルール」で闘いを挑めている貴重な方じゃないですか?
HYDE まあでも、直球だとダメだと思ってますけどね。そこはなかなか難しいところで。
――でも、ルールとマナーに則った変化球を投げてる感じはありますよね。
MIYAVI 実際、ピッチャーに殴りかかったらニュースにはなるけど、それじゃ続きませんよね?っていう(笑)。サステナブルに音を鳴らしていく上では、ルールに則った上で、そこでどう勝負していくかっていう。その中には変化球もありだし、イチローさんみたいに安打で勝負するっていう。それに近いかもしれないですね。パワースラッガーはいっぱいいますけど、「ちゃんと当てに行って結果に結びつける」っていう。それが日本人の得意としてるところだろうし。それが何なのかっていうことを、俺たちはアーティストとして学ぶべきだなあと思いますね。
――最後に……今回おふたりのコラボで“All My Life”という曲が生まれたわけですが。さらにもう1曲!っていうことになったら、どんな曲を作りますか?
HYDE やっぱり、キャンプファイアーを囲んで――。
――そこ重要ですね(笑)。
MIYAVI でもこの曲、アコギにしたらキャンプファイアーできると思います。できるでしょ? 全然。
HYDE ほんと? やろうよ、じゃあ。キャンプファイアー(笑)。