バンド結成から4年、感覚ピエロにとって初のフルアルバムとなる『色色人色』が完成した。音楽の聴き方が多様化する中、インターネットの波を上手に操ってきた彼らだが、アルバムという形態だからこそ「何をやっても感覚ピエロ」というアイデンティティが真正面から証明され、どこを切っても過去のロックを凌駕するような、煌めきに満ちたサウンドを響かせられたのだと思う。今回はメンバー全員に全曲解説をしてもらった。2月28日発売の『ROCKIN'ON JAPAN』4月号でも活動理念やアルバムの核心を語ってくれているので、ぜひ合わせてチェックしてもらいたい。
インタビュー=秋摩竜太郎 撮影=山川哲矢
1.CHALLENGER
横山直弘(Vo・G) 僕らってライブのSEを自分たちで作るんですよ。これもSEとして作ってた曲で、もともとフル尺はなかったんですけど、「よくなりそうやからフル尺作ろうや」ってことになって。秋月琢登(G) そう、カッコいいなと思って。僕らはわかりやすい打ち込みを今まであんまりやらなかったんで、SEだけド派手にしてたんですけど、これはノレるし、俺らもテンション上がるし、「横ちゃんこのまま1曲作って」って。
横山 で、僕が作ったあとに、「じゃあドラムとかベースとかギターを入れてみて下さい、どうぞ〜!」って感じでできた曲です。
秋月 僕らの中でもやっぱ始まり感があるよな。
西尾健太(Dr) それはすっごいあるね。
秋月 だからアルバムでも1曲目にふさわしいなと。
滝口大樹(B) シャキッとなるよね。
――サビに歌詞がないのもカッコいいですよね。
秋月 そうなんですよねえ。僕もジャケットを作ってる時に、歌詞カードに誤字があるかどうか一回確認するんですけど、あれ、《Shake your body.》のあと何もないと思って(笑)。「そっかもともと入場SEやもんな」って。
横山 そうそう(笑)。あとテーマがスポーツなんですよね。だから観戦してる時にも合うかなと。
秋月 オリンピックとかワールドカップとかの応援歌に使ってくれんかなと思ってます。ここ太字で書いといてもらっていいですか?(笑)。
2.疑問疑答
横山 これは昨年に映画『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』の主題歌に抜擢していただきまして。これこそ今までの感覚ピエロが詰まってる曲ですよね。秋月 うん、横ちゃんのドロっとしたところと、歌詞のメッセージ性がある感じとか。
滝口 久々にキレキレのが来たよな。
横山 その進化版よね。
秋月 ほんとに楽器陣が全員めちゃめちゃ考えてアンサンブルを作って、今まで以上にダビングもして。音圧もすごいし。
横山 メロディも結構修正が入ったんですよね。
秋月 なんか満足いかんなあと思って、何回も何回もこうしたいああしたいを積み重ねて、できる限り鋭利に研ぎ澄ましたのがこの曲かな、出だしから最後までね。
横山 そうそう。この曲のエピソードで忘れられないのが、メロディを考えてる時に、“メリーさん”とか、昔やったらこういうワーッていう曲も結構やってたんですけど、あんまり喉によくないな、いたわろうと思って最近はやってなかったんですよ。でも西尾に「攻撃的な感じにするんやったら昔みたくやったらええんちゃう?」って言われて、ピカッと電球が光ったんですよ。それが俺の一個のカラーなんだったら、ちょっとやってみようって。
――その喉を使う感じがあったから成立した曲でしょうね。
横山 そうかもしれないですね。
秋月 あの型じゃないとね。カラオケにもこの曲入ってるんですけど、たぶん普通は歌えない(笑)。そういうところも“メリーさん”に似てるんかな。今の、力をつけた僕らがやったらこうなったって1曲ですね。
3.give me
横山 “give me”を作った時って、スタジオに僕以外の3人が入って、アンサンブルを考えてたんですよ。それを聴いた時に、「やっべ〜、すげえ洋楽っぽいの来た!」と思って。だからCメロの落ちたところとか、ザ・洋楽なテイストでいけたらいいなと思ってやりました。秋月 たまにね、こういう衝動が出るんですよ。シンプルな、勢いのある、カッコいい洋モノ、みたいな。
西尾 何も考えんとな、中学校ぐらいに聴いてたような。
秋月 そう、ほんまに根っこにあるもの。でも、それを僕らがやったら感覚ピエロの音になるんで。スタジオでもキャッキャしながら、「こんなん勢いでいこう!」って、ダダダズズダダみたいな。
滝口 そうそう(笑)。
秋月 その感じをそのまま出していきましたね。
横山 今までのミニアルバムでもね、たまにこういうのがあったりしたんですよね。
秋月 『不可能可能化』やったら“Tonight Yeah!Yeah!Yeah!”みたいな。
横山 『等身大アンバランス』だと“TELL ME WHY”とか、そういう位置づけの、さらにランクアップしたバージョンって感じです。
秋月 これはたぶんライブでもカッコいいんじゃないですかね。楽しみです。
――これだけカッコいい曲だからこの歌詞をつけられたのかなっていう気もしますが。
横山 もう僕が書く時はその方向にしかいけないんで(笑)、遠慮なく書かせてもらいました。仮歌の段階で、Cメロの《Please give me more.》はなんとなく入れてたんですけど、自分の語彙力ではそれを変えられなさそうで。
秋月 初っ端から限界を出しとったな(笑)。
横山 そうそう(笑)、だから逆に言うとそっから広げていって、今の形になった曲ですね。
4.無い ナイ 7i
横山 来ました“無い ナイ 7i”! この曲も3人がスタジオに入って演奏してて。秋月 “give me”と近い時期やったね。
横山 アルバムの中でこういうリズムって、この曲が唯一ですよね。
滝口 ギターのブラッシングから入ってな。
横山 3人からオケを渡されてメロディをつける時に、めっちゃ悩んだんですよね。また変わった曲が来たなと。結果、今のメロディをパッとつけたんですけど、そしたら「カッコええわ」ってなって。で、基本的に仮歌の語感を壊さないように意識して。ギミックも結構入ってますし、ドラムにもエフェクトかかってますし。
西尾 そうそう。
秋月 トリッキーな曲やな。ライブ映えもするやろうし。この曲が入ってないと、アルバムがたぶんちょっと違う感じになる気がする。外せない曲ですね。
滝口 みんながトリッキーなことをしてるから、ベースはあえて同じフレーズをループさせてみました。
――フリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ )を彷彿とさせるような。
滝口 僕も好き放題やったら全部がぐっちゃぐちゃになると思ったんで。アウトロでは一瞬めちゃくちゃ動いてますけど。
秋月 ようやく引き算して曲を作れるようになってきたっていう。アンサブルとしてカッコええもんな。A、B、サビっていうよりは、全体を通しての感じ。初期からずっと観てくれてるお客さんとかも、「なんかキター!」ってなってくれそうな気がする曲です。
――それはやっぱメロディも大きいですよね。このメロディだから古い感じが出ずにカッコよくなってる。
横山 ざます(ありがとうございます)!
秋月 ざますって(笑)。
5.ワンナイト・ラヴゲーム
横山 このアルバムの中ではまあまあ古い曲なんですよね。滝口 “疑問疑答”より前か。
秋月 初めて僕らが、季節やイベントって意味合いで、「クリスマスソングはあるよね、けどハロウィンってあんまなくない?」っていうコンセプトから考えた曲で。
横山 だからMVを公開したのもその時期だったよね。
秋月 そうそう。男と女のぐじゃぐじゃなところも、比喩じゃないけどうまいこと被せて、僕らなりに出せたらいいなと思って。
横山 この曲のMVで、感覚ピエロ史上第一回目のYouTubeアカウント凍結をくらったんです(笑)。
滝口 真面目にやってんのになあ(笑)。
秋月 ほかの作品のビデオに出てもらった田中真琴っていう子からLINEが来て、「あれ、感覚ピエロのMV消したんですか?」って。「消してないよ〜」って返事しながらパッと見たら消えてたんですよ。だから問題作ですよね(笑)。
滝口 俺らも慌てるんじゃなくて笑とったな。
横山 まあその後の流れを変えた曲です。
秋月 “O・P・P・A・I”とはまた別の、いい意味で問題作ができたんじゃないかと。
――そこからさらに拍車をかけていくのがさすがですよね(笑)。
秋月 そうですね、だから俺ららしいよな。
西尾 うん、結構人気の曲やしな。
6.A BANANA
――これはどんな曲でしょうか?西尾 お◯んちんの曲です。
全員 はははははは!
秋月 おいおい言うたらあかん!(笑)。訊かれる前から考えてたもん絶対(笑)。
横山 やられたわあー(笑)。
滝口 ここまでいろいろ語ってきて(笑)。
秋月 めちゃめちゃおもろいやん!
滝口 そういう曲です。次いってください。
西尾 書かれへんやろ! ……書けんのこれ?(笑)。
秋月 でもそういう曲やもんな。
西尾 違う感じで言うたらどうやろ……?
横山 でもそういう曲やん。
秋月 おちピ――の曲です(笑)。
滝口 ご想像にお任せします。
秋月 ここで真面目に喋ったらそっちを載せられちゃうから、もうロッキンさんにノーチャンスでいこう(笑)。
西尾 まあバナナの曲ですよね。
秋月 バナナイコール――ねえ?
西尾 男だけじゃなくて、みんな心にバナナを持ってるんで。
秋月 デカなった、話(笑)。なんやそのアーティスト精神(笑)。
滝口 俺の心にはないと思う。
西尾 いやあるよ!(笑)。みんな心にバナナがあるんすよ。それを書いた曲ですね。