ベリーグッドマン 、アスリートに愛される音楽性の源とは? ベストアルバム『BEST BEST BEST』インタビュー


年齢を重ねながら感じるのは「やるべくしてやってるチームなのかな」ということです(Rover)


――5周年なんですね。

Rover はい。こうしてベストアルバムを出すというのは、僕たちの新しい出発だと思ってます。LIFE DISCとLOVE DISCという2枚組にするのは、レーベルのスタッフが考えたんですけど、しっくりハマりましたね。

――RoverさんとHiDEXさんは中学時代からの友だち同士ですけど、こうしてベストアルバムを出すようになったということに関して、独特の感慨があるんじゃないですか?

Rover そうですね。こんなことになるなんて予測してなかったですし、中学時代は水と油というか(笑)。そこまで仲良かったわけでもなかったですから。「どう思いますか?」って訊かれたら「不思議な感覚です」としか言いようがないんですけど、年齢を重ねながら感じるのは「やるべくしてやってるチームなのかな」ということです。

HiDEX 改めて考えると変な気持ちになりますね。吹奏楽部の定期演奏会を観に行った時に、たまたまおったのがRoverやったので。最初に喋った同級生がRoverなんですよ。「変なやつ」ってお互いに思ってたんでしょうけど(笑)。

Rover 巡り合わせって独特なものがありますね。MOCAと出会ったのは20代になってからですけど、それでも結構経ってますし。この3人が早い段階で出会えたのは、今になって思えば良かったです。

MOCA 僕は20歳くらいの頃からこのふたり(RoverとHiDEX)の存在は知ってました。先輩のDef Techのライブを観に行った時に、このふたりにCDを渡したことがあったので。

HiDEX そこからしばらく経ってから僕とRoverがMOCAの作品をプロデュースすることになったんですけど、「なんかこの曲聴いたことあるなあ」って思ったら、昔もらったデモのCDに入ってた曲なんです。4つのバージョンの“No rain, No rainbow”という曲が入ってて、「変なCD」って思ってたんですが(笑)。

MOCA そういう縁もあって、一時は「マネージャーやらへんか?」という話をもらったこともありました。やらなかったですけど(笑)。

――(笑)人との繋がり合いを大切にしている姿を、ベリーグッドマンの曲は様々な形で描いていますよね。

Rover そうですね。いろんな出会いがありましたから。メジャーリーグに行った前田健太投手との出会いも、すごく大きかったです。

――“1988”が、広島カープ時代の前田選手の登場曲になったんですよね?

Rover はい。たまたまのご縁だったんですけど、前田選手は僕らと同い年だったり、大阪出身同士だったりという、いろんな巡り合わせでした。一流アスリートの前田選手と当時の僕らは全く釣り合ってなかったですし、今でも釣り合ってないんですけど(笑)。でも、だからこそ音楽の持ってるとんでもない力を感じました。“1988”ってMVもなくて、インディーズ時代の曲やし、僕の実家でMOCAと遊びで作ったメロディなんですよ。それを使っていただけることになったので、「出会いとか繋がりを甘くみたらあかんな」と思うようになりました。

(野球を)引退する日の新聞のインタビューで、「次は野球で果たせなかった夢を音楽で果たしたいと思います」っていうかっこつけたことを言ってました(笑)(MOCA)


――ベリーグッドマンは、スポーツと縁が深いですよね。いろんな野球選手の登場曲になったり、スポーツ関連の番組で曲が流れたりしてきたじゃないですか。

Rover はい。振り返ってみるとびっくりします。「なんでこんなにアスリートの心に響くんですか?」ってよく訊かれるんですけど、僕たちもよくわかってないんです。

MOCA 「鼓舞される」とか「テンポ感とか声の温度感が丁度よくて、走ってる時に頭の中で流れてくる」っていうことを、よく言っていただいてますけど。

――MOCAさんは、学生時代に野球をやっていたんですよね?

MOCA はい。10年間野球をやって、18歳でやめました。すっかり忘れてたんですけど、引退する日の新聞のインタビューで、「次は野球で果たせなかった夢を音楽で果たしたいと思います」っていうかっこつけたことを言ってました(笑)。でも、ベリーグッドマンでメジャーデビューして、始球式をさせてもらったりもしましたからね。野球部のレギュラーが誰もプロのマウンドを踏めなかったのに、補欠だった僕がMAZDA Zoom-Zoom スタジアムに立ったんですから。それは嬉しいことであったと同時に、「あの時の悔しさが音楽となって、俺をここに立たせてくれたんだ」って思える体験でした。

――悔し涙がいつしか嬉し涙に変わるということを描いている“ライトスタンド”も、そういう姿と重なる曲ですね。

Rover はい。この3人もいろいろありましたから。MOCAは野球をやってて、HiDEXはドラム、僕はトランペットをやってたんですけど、それぞれに挫折があったんです。ベリーグッドマンについて「挫折の美学」とか「負けの美学」って言われたことがあるんですけど、その通りだなと思ってます。悔しい気持ちって復讐心に繋がるものでもありますけど、音楽は、そうはさせてくれないんですよ。悔しさは、できる限り美しく歌おうと思ってます。そういうのが凝縮されてるのが“ライトスタンド”とか“ライオン”ですね。

――気持ちを鼓舞してくれるものでありながらも、温かいトーンなのがみなさんの音楽の独特さだと常々感じているんですけど、その点に関してどう思います?

Rover そこはたしかに独得だなと僕も思いますね。この3人の声ということもあるんですかね? 最初の頃は、なかなかバランスが上手くいかなかったんですけど。

MOCA 事務所の社長に「お前ら、3人とも声が似てるよ」って言われましたからね。

HiDEX そんなことはないと思ってましたけど(笑)。

Rover 声質は全然違うと思うんですけどね。歌い方、節回しの気持ちがピタっと合ってるっていうことなんだと思ってます。


「そんなの無理やで」と言われてきましたけど、「やってみようぜ」と。僕らは、やり続けるプレイヤーであり続けたいんですよ(MOCA)


――今作のLIFE DISCに収録されている新曲の“プレイヤー”も、みなさんの歌声がすごく心地よいですよ。

Rover ありがとうございます。どんなことでも一生懸命やってる人ってすごいと思うんです。“プレイヤー”は、そういう曲ですね。

MOCA おっさんとかは冷静に分析して、「そんなの無理やで」とか言いますし、僕らもそういうことを言われてきましたけど、「やってみようぜ」と。僕らは、やり続けるプレイヤーであり続けたいんですよ。

――みなさんの曲は、朝が似合う爽やかさもありますよね?

HiDEX それはMOCAが超朝型人間だからかも(笑)。

――“ファンファーレ”は、聴いていると朝の風景が思い浮かびますし、“Mornin’”っていう曲もあるじゃないですか。

MOCA 僕、クラブで働いてたんですけどね。でも、「この生活、もうあかんな」って思ったことがあったんです。クラブからの帰りの早朝に吉野家に行ったら、僕のおかんくらいの年齢の女性が働いてて。牛丼の並を頼んだんですけど、泣けて食えず。「俺、親孝行なんもしてない! 楽させな!」って思って、クラブの仕事をやめて昼の人間として働くようになりました(笑)。

――(笑)ベリーグッドマンは、幸せなラブソングが多いのも、注目させられるポイントです。今回のLOVE DISCの収録曲の中でも、悲しい恋の歌は“Remember”と“It’s more love”くらいじゃないですか。

MOCA 僕ら、モテたタイプなので、失恋をしてきてないんですよ。

Rover それ、ちゃうな。

MOCA ちゃう?

HiDEX 失恋だらけの3人です!(笑)。

MOCA 3人で話し合っているわけではないんですけど、自然と温かいラブソングが多くなってるんですよね。「失恋ソングは、得意なみなさんにお任せしよう」という感覚なのかもしれないです。

Rover レゲエのラブソングは、明るいものが多いので、そのテイストが入ってるのかも。“君に願いを”とかもJ-POPですけど、バイブスがレゲエっぽいと思います。

HiDEX 「この3人の失恋話を誰も聴きたがらないだろうな」というのも、あるのかもしれないですけど(笑)。

――(笑)レゲエとJ-POPの融合というようなことは、考えます?

HiDEX どうでしょう? この3人の声ですし、それぞれがメロディと歌詞を書くので、日本的なAメロ、Bメロ、サビっていうのをやっちゃうと、ゴチャゴチャしちゃうんですよ。だから自然とレゲエのループもの的なことに繋がっていくんだと思います。

MOCA ループものでも、ヒップホップはコード感があんまりないものが多いですけど、レゲエはコード感があるじゃないですか。そのちょうど間の空気感を日本語で歌えてるのかなという感覚はあります。レゲエは好きなんですけど、ベリーグッドマンとしてレゲエをやってるような感覚はないですね。

――みなさんのラブソングは、『恋んトス』に欠かせない存在にもなっていますよね。シーズン4の“君に恋をしています”以降、“はじまりの恋”“片想いの恋”“世界中のどんなラブソングよりも feat. erica”が、連続してオープニングやテーマソングになったじゃないですか。

MOCA はい。中高生のみなさんに知っていただけるきっかけになったのは、『恋んトス』のおかげです。「ジャスティン・ビーバー来たんか!?」くらいの盛り上がりになったこともありますし。とても感謝してます。

HiDEX ジャスティン・ビーバーは言い過ぎ。そこまで人気なかった(笑)。

MOCA 嘘言いました(笑)。でも、『恋んトス』のプロデューサーさんが、すごく気に入ってくださってて、4回連続で使っていただいたんです。嬉しいことですね。

(“i”は)ほんまに思ってることを3人それぞれが描けてるけど、ひとつの物語としてまとまってるんですよね(HiDEX)


――LOVE DISCには、新曲の“i”も収録されていますが、いろんな人々に支えられながら5周年を迎えたみなさんの気持ちが、すごくこもっている曲として受け止めました。

HiDEX 全貌が見えないまま制作を進めてた曲なんですけど、最後に形になった時に、「ああ、いい曲やな」と思いました。ほんまに思ってることを3人それぞれが描けてるけど、ひとつの物語としてまとまってるんですよね。

――Def TechのMicroさんが歌ってた《愛しているは“I love you”じゃ訳せない》というフレーズが、この曲に大きなインスパイアを与えたそうですね。

Rover そうなんです。Microさんは、すごく名言をおっしゃる方なんですよ。「愛している」をひとつの形で歌うのは難しいということを考えさせられました。この“i”で歌ってるのは、「5年間ありがとう」という意味なんです。作りながらいろいろ考えましたけど、それがいい形で表現できてよかったなと思ってます。

MOCA この3人の関係、人間愛、音楽愛、応援してくれてるみなさんに感謝の気持ちを届けたいという想い。そういうのがこもってる曲ですね。夜に車を運転しながらこの曲を聴いて、「明日も頑張ろう」っていう気持ちになれてます。「頑張ろう」っていうようなことは、一言も書いてない曲なんですけどね。

Rover タイトルを小文字にしたのは、サムズアップに見えるからなんです。愛情の「i」ということの他に、自分を指す「i」でもあるんですよね。自然体でこういうことを表現できる自分たちにもなってると思うので、早くこの曲をライブで歌いたいです。

――ベリーグッドマンは、来年の1月20日に大阪城ホールでワンマンライブをしますけど、“i”を披露したら、すごく心を動かされる空間が生まれると思います。

Rover そうなったら嬉しいですね。

――大阪城ホール公演に向けての意気込みは、いかがでしょう?

MOCA これがピークですね。あとは、ゆるやかに下がっていくのみ。

Rover ゆるやかじゃなくて急に下がるかも……。

HiDEX そして、またインディーズで(笑)。

MOCA まあとにかく、大阪城ホールでまたスタートラインに立たせてもらう気持ちでいます。世に知られてるヒット曲みたいなものがまだない状況で大阪城ホールでできるというのは、自分らの強みでもあるのかなと。そのスタートラインを経て、自分たちの素直な音楽をこれからもやっていきたいです。

HiDEX 気づいたら甲子園球場や東京ドームでライブをやってるようなベリーグッドマンにもなっていきたいですね。

――そういう状況を目指すためのプロセスのひとつが、大阪城ホール?

HiDEX まさにそうですね。

Rover 大阪城ホールをやったその先のことは、終わってからじっくり考えたいですけど、さらに大きいところでもやれるようになりたいです。僕たちは歌って音楽を作るチームなので、もっと自分たちの人生をかっこよく、泥くさく生きて、いろんな経験をして曲に反映させていきたいということも思ってます。そして、スタッフやメンバーが仲良く、健康で頑張っていけるのが最高の目標ですね。

リリース情報

『BEST BEST BEST』全曲ティザー


オールタイムベストアルバム『BEST BEST BEST』10月24日発売
初回限定盤
通常盤
初回限定盤 : 2CD+DVD(3枚組) ¥4,860(税込) UPCH-7448
期間限定スペシャル・プライス盤 : 2CD(2枚組) ¥2,980(税込) UPCH-7449/50
【収録内容】
[DISC1 / LIFE DISC]
1.Hello
2.Good Time
3.ライトスタンド
4.1988
5.さくら
6.ありがとう〜旅立ちの声〜
7.おかん〜yet〜
8.ライオン
9.Mornin’
10.コンパス -2016 Ver.-
11.友達の歌
12.ハイライト
13.大切なもの
14.You
15.ファンファーレ (2018 New Mix)
16.ドリームキャッチャー
17.プレイヤー

[DISC2 / LOVE DISC]
1.はじまりの恋
2.Eye to Eye
3.in what rain
4.君に恋をしています
5.Happy Wedding (2018 New Ver.)
6.ずっと
7.One Love
8.片想いの恋
9.You & Me -Remix-
10.Remember
11.エスコート (2018 New Mix)
12.冬が終わる頃に
13.君に願いを (2018 New Mix)
14.It’s more love -Remix-
15.Pain, Pain Go Away feat. MUTSUKI from Softly
16.世界中のどんなラブソングよりも feat. erica
17. i

[初回盤DVD / LIVE DISC]
コンパス [2015.1.31 @ SHIBUYA CLUB QUATTRO]
Trip [2016.5.3 @ BIGCAT]
ライトスタンド [2016.12.30 @ なんばHatch]
おかん~yet~ [2017.7.15 @ Zepp DiverCity]
Good Time [2018.1.27 @ 中野サンプラザ]
ライオン (2018 New Ver.) [2018.7.22 @ Zepp DiverCity]
Chill Spot [2018.7.22 @ Zepp DiverCity]
in what rain [2018.7.22 @ Zepp DiverCity]
Hello [2018.7.22 @ Zepp DiverCity]
ドリームキャッチャー [2018.7.22 @ Zepp DiverCity]

ライブ情報

"てっぺんとるぞ 2019" ~超好感男は大阪城へ~
場所:大阪城ホール
日時:2019年1月20日(日) OPEN 17:00/START 18:00
TICKET:¥6,800(税込)

“もっと てっぺんとるぞ宣言”ツアー2019 「i AM the BEST」
2019年5月6日(月・祝) 
 大阪府 大阪国際会議場 メインホール
2019年5月11日(土) 
 静岡県 静岡市清水文化会館(マリナート)大ホール
2019年5月12日(日) 
 兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
2019年5月18日(土) 
 岡山県 倉敷市芸文館
2019年5月19日(日)
 香川県 レクザムホール 小ホール
2019年5月25日(土)
 愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2019年6月8日(土)
 熊本県 熊本県立劇場 演劇ホール
2019年6月9日(日)
 福岡県 福岡サンパレスホール
2019年6月15日(土)
 石川県 金沢市文化ホール
2019年6月22日(土)
 東京都 TOKYO DOME CITY HALL
2019年6月23日(日)
 宮城県 仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
2019年6月29日(土)
 北海道 道新ホール
2019年7月6日(土)
 広島県 JMSアステールプラザ 大ホール

提供:ユニバーサル ミュージック合同会社
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部