洋楽ファンも唸るアニメ『キャロル&チューズデイ』、渡辺信一郎監督が音楽愛を語る

洋楽ファンも唸るアニメ『キャロル&チューズデイ』、渡辺信一郎監督が音楽愛を語る - (C)ボンズ・渡辺信一郎/キャロル&チューズデイ製作委員会(C)ボンズ・渡辺信一郎/キャロル&チューズデイ製作委員会

今の海外の音楽シーンって、いいものがじゃんじゃん出てる。ちょっと洋楽への入り口みたいな風になればいいなと


――各エピソードのタイトルが往年の名曲から取られていて、前半と後半の間に入るアイキャッチが、アナログ盤をモチーフとしているのも、音楽ファンとしての毎回の楽しみでした。

「古今の曲から、ストーリーになんとなくリンクするものを選びました。アイキャッチで7インチのレコードが出てくるので、『7インチの時代のものの名曲』がひとつの縛りでしたね。フライングドッグさんの作品らしく、最終話の“A Change is Gonna Come”は、ビクター犬が出てくるっていうオチになってます(笑)」

――(笑)サム・クックの“A Change is Gonna Come”は、当時の公民権運動が背景にある曲ですから、最終話のメッセージとも通ずるものがありますよね?

「はい。そういう点で少しリンクしつつ、タイトル自体もストーリーと重なるものになっています。『最後に歌う曲で、いきなり世の中に革命が起こるわけではないけど、少し変化が起きるかもしれない』っていうニュアンスで終わるようにしたかったので」

――第1話の“True Colors”も、家出をするチューズデイと曲の間に重なるものを感じました。シンディ・ローパーの話が出てくるのも、音楽ファンが反応するところだと思います。

「海外の映画やドラマを観ていると、実在する曲について話したり、アーティストに関する話が出てきたりするんですよね。そういうのは、面白いですから、入れられる範囲で入れていきたいなと思っています。『どんな曲だろう?』って思ったら、ぜひ実際に聴いてみてほしいです」

キャロルとチューズデイの「音楽をやりたい。何かを作りたい」という衝動のようなものを描きたかったんです


――渡辺監督が、音楽好きになったきっかけは、何だったんですか?

「最初に音楽を聴くようになったのは、YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)がきっかけです。中1くらいの頃に非常に感化されて、そこからディープに音楽を聴くようになりました。その前からキッスやクイーンとかは好きだったんですけど、YMOを聴くようになってからは、パンク、ニューウェーブ、ハードコアなものとか、PiL(パブリック・イメージ・リミテッド)、ザ・ポップ・グループ、スロッビング・グリッスルとか、マニアックなものばかりを掘りまくってました。リアルタイムのものも聴きつつ、昔の王道のものも掘り進めながらデヴィッド・ボウイとかも聴いてましたね」

――今も最新の洋楽をいろいろチェックされているようですね。

「はい。時代の音がいつも好きなので、新しいものを基本的に聴いてます。『キャロル&チューズデイ』の各エピソードのタイトルを見ると昔のロックが好きなオヤジと思われるのかもしれないけど(笑)」

――(笑)『キャロル&チューズデイ』の劇中で流れる音楽も、今の音ですからね。

「はい。今の音を作ってほしいと思って、各ミュージシャンに発注をしました。このアニメは未来の話ですから、最初はもっと全世界の音楽が混じってたりというようなことも考えたんですけど、そういう理屈先行で作るのは良くないなと思って、いいと思えるものであることを大事にしました。この作品は基本的に初期衝動のようなものが、テーマのひとつとしてありましたので、キャロルとチューズデイの『音楽をやりたい。何かを作りたい』という衝動のようなものを描きたかったんです。物作りをする人間は、初期衝動を忘れて惰性に陥りがちという問題がありまして(笑)。『何のために作ってるんだ?』というのを忘れないようにしようという戒めでもありました」

――AIが曲を作るようになっているこの物語の世界で、キャロルとチューズデイの初期衝動に根差した音楽活動は、とても大きな意味を持っていますよね。

「そうですね。ここで出てくる他のミュージシャンも、そういう彼女たちから刺激を受けて、何かを思い出したりしますので。だから、音楽的にあまりにもひねり過ぎたり、未来の音楽を予想して理屈先行で作るのは、良くないなと思ったんです。理屈よりも、いい曲といい歌があればいいんじゃないかと。そこに立ち還ってキャロルとチューズデイの曲は、作っていただきました」

――この作品を観た人たちが、参加しているミュージシャンの他の作品も掘っていってくれたら、すごくいいですね。

「そうですね。素晴らしいアーティストばかりが参加してくれていますから」

――この作品のサウンドトラックと、主題歌や劇中歌を収録したアルバムを聴くのもいいと思います。素敵なミュージシャンと、たくさん出会えるはずです。

「はい。そこからいろいろ広げていくと、いいんじゃないですかね。『キャロル&チューズデイ』は、音楽にも掛け値なしに自信があるんです。ここまでいい楽曲のアニメが今までにあっただろうか? 多分、ないと思います(笑)。それくらいの自信作ですので、普段、アニメをあまり観ない人も、試しに2本くらい観ていただけると嬉しいなと」

――まずは、第2話までは観ていただきたいというのは、同感です。

「そうなんです。第1話では、キャロルとチューズデイの曲がまだ完成していなくて、作りかけなので(笑)。だからせめて1曲完成するまでは見届けていただければと思います」

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