今年3月にリリースしたアルバム『CENTER OF THE EARTH』で、堂々たる生のバンドサウンドを鳴らし、新ギタリスト=アオキテツ加入後の4人体制の力強さを印象付けたa flood of circle。そして、紆余曲折の歴史を背負い、変化と進化の先に辿りついた「バンド」をさらにパワーアップさせるべく、メンバーそれぞれが作曲を担当した楽曲を収録したミニアルバム『HEART』 を11月6日にリリースする。いずれも生々しいロックンロールでありながら、誰がどの楽曲を制作したかすぐにわかる4種4様な楽曲は、改めてa flood of circleを構成する4つの個性という武器を実感するとともに、今回新しく開いた扉の先に続く道が楽しみになる仕上がりだ。また、ジャケットは“LUCKY LUCKY”にちなんで数十種類に及ぶビンゴカード仕様になっており、発売後に「アタリジャケット」が発表されるという企画が用意されている。遊び心たっぷりに、史上初の挑戦を選んだバンドのポジティブなモードとその制作秘話について、メンバー全員で大いに語り合ってもらった。
インタビュー=後藤寛子
テツがサポートメンバーだったら絶対にやんない企画だったと思う(佐々木)
――4人それぞれが作曲というアイデアはどういうところから?
佐々木亮介(Vo・G) 11月からの「Lucky Lucky Tour」のスケジュールが先に決まってたので、ツアーの前になんかリリースをしようって話からですね。これ、テツがサポートメンバーだったら絶対にやんない企画だったと思うんですよ。今4人揃ってていい感じだから、みんなの顔が見えるような作品を作れたら、次のアルバムにも、みんなのグレードがあがった状態で向かえるんじゃないかって。スタッフとかもいる状況で「どうかな」って、やらざるを得ない空気を作って提案しました(笑)。
渡邊一丘(Dr) そういうふうに、逃げられない雰囲気にするんですよ、うちの佐々木は(笑)。まあ大変だけど、やってみたらやりがいがあることはわかってるし、プラス、姐さんとテツの曲も聴いてみたいなって。そっちの気持ちのほうがでかかったですね。
――テツさんは、佐々木さんとのユニット「サテツ」ではありましたけど、フラッドとしてもいずれ曲を書きたいなみたいな気持ちもありました?
アオキテツ(G) ありますよ! そりゃあ。
渡邊 そうだったんだ(笑)。
――むしろ、ちょっときっかけ待ちだったところもありつつ?
アオキ そうっすね。ははは!
渡邊 なんか恋愛みたいですね。
佐々木 めんどくさいタイプだなあ(笑)。
――HISAYOさんはtokyo pinsalocksでは書いてますけど、フラッドでは初ですね。
HISAYO(B) もうやるしかないなと。おもしろさ半分、不安半分でしたね。
佐々木 昔言ってましたもんね、「たぶん私はフラッドで書くことはない」って。姐さん曲書けるんだから、一緒に作りましょうよって、アピってたんだけど(笑)。
HISAYO ちょっと線を引いてたんだと思う。でも今回の話で、よし!って思ったのは、テツも入ってきて『CENTER〜』があったからっていうのもあるし。満を辞してです。
――せっかくなので4曲それぞれ、作曲者以外の方から話していただこうかなと思います。まずは佐々木さん作詞作曲の“スーパーハッピーデイ”について。
アオキ なんか、サッカーのスタジアムとか、甲子園のブラバンみたいでいいなと思ったっすね。
渡邊 俺もすげえ爽やかだなと思ったけど、俺たちがやるとただ単に爽やかにはなんないのがすげえいいなって。ストレートだけど、ちゃんと気持ちが込められる曲がきたなって思いましたね。
HISAYO 気持ちが表現できるっていうのはわかります。『CENTER〜』の時“ハイテンションソング”をリードにしたんですけど、それがいけたから、こういうシンプルで抜けた感じの曲でも大丈夫って安心してみんなも発信できるようになった気がしますね。
――私も“ハイテンションソング”と繋がりました。タイトルのインパクトもありますし、最近佐々木さんが、ハッピーとか楽しいみたいなイメージの単語をよく使う気がして。
渡邊 渡邊調べでは、THE KEBABSとかやって変わったような感じがする。ソロもそうだし、そっちのほうから来てんのかなって勝手に思ってました。
HISAYO たしかに。なんか……余裕なんでしょうね。
佐々木 余裕?(笑)。
HISAYO たぶん、楽しめる状況に今なってるっていう。昔は「なんとかしなきゃ」っていう感じが多かったから。すごくいいなと思います。
佐々木 前より、何にチャレンジしても、このメンバーでこのかたちでやるんだっていう考え方にはなってますね。前だったら、ロックバンド的じゃないことまでどうにかできないかと思ってやろうとして、できないまま曲が小難しくなっていったりとかしてたと思うけど、今はこの4人でライブをやるっていうのが前提ですべてが動いてる感じがするので。そしたらライブも楽しめるし、それがもしかしたら明るさになってるのかな。
もうちょっとフラッドに寄せたほうがいいのかなっていうせめぎ合いで、知恵熱出しちゃったんです(HISAYO)
――では次、テツさん作詞作曲の“Lucky Lucky”はいかがですか?
渡邊 頭のギターのリフとかもすげえテツだなー!と思うし、間違いなくテツの曲ですって感じがすげえいいですよね。
佐々木 テツとツアー中に、パッと作ってそのままライブでできたらいいよね、とか、自分たちの武器がシンプルに輝く状態がいいんじゃないかな、って話をしてたら、最初「アンコールソング」って仮タイトルできて。理由は「アンコールでやりたいから」って(笑)。そのノリ自体がいいなと。
HISAYO あと、テツが、『CENTER〜』の続きみたいなものを意識してこれを作ったんだみたいなことを言ってた時があって、「ちゃんと考えてるんやなあ」って。
――ご自身はどうですか?
アオキ 自分で書きましたけど、《Lucky Lucky》って叫ぶ日が来るとは思わなかったですね……。
佐々木 コーラス入れるの、めっちゃいやがってた(笑)。でも、いざ録ってみたら――。
アオキ めっちゃ巻き舌で思いっきり「Lucky Lucky!!」って。ははは!
――しかも、しっかりテツさんがメロディを歌うパートもありますよね。
佐々木 そうそう。このメンバーだったら、歌うパートあっても絶対楽しいなって。
アオキ ……ちょっと気持ち良さがわかってきました(笑)。
渡邊 亮介が「Lucky Lucky」って言うのと、テツが言うのとだと、ラッキーの言葉の意味が違うというか。テツが歌うことによってさらに濃くなっていて、面白いなあと思いますね。
――次はHISAYOさん作曲の“Lemonade Talk”。この曲調というか、柔らかい雰囲気は新鮮ですね。
佐々木 姐さんの雰囲気って、俺の中では「ちびまるこちゃん」って解釈してるんです(笑)。可愛らしさとかユニークさに、アート的な尖った部分をうまくブレンドしてる感じ。姐さん的には、自分のその感じとフラッドをどう混ぜていいかわかんなかったのかもしれないんだけど。一緒にそれなりの年月を過ごしてきて、今このコンビじゃなきゃできない曲になったのが嬉しいなと思いますね。誰も聴いたことのないフラッドになるって姐さんが言ってたんで。あともう1曲ね、リフものの曲もあったんだけど。ちょっとレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン的な。
HISAYO ええ、そう?(笑)。
佐々木 いや、俺のなかで、そうできそうだなって思ってた(笑)。
渡邊 俺は、すごく綺麗でクリアな世界って感じましたね。平和というか。佐々木亮介の世界って、そんなに平和じゃないじゃないですか。この曲はすごく平和だから、ものがくっきり見えるというか、ぼやけてない感じ。
HISAYO 自分の世界がフラッドとコラボできたって感じですよね。途中で、もうちょっとフラッドに寄せたほうがいいのかなとか、せめぎ合いで……なんか知恵熱とか出しちゃったんですけど(笑)。
佐々木 知らなかった(笑)。
渡邊 すごい少女漫画っぽいね、乙女っぽい(笑)。
HISAYO すごい考えすぎちゃって。でもまあ、いっか!って信じて、良かったと思います。