《曲げない強さを 枯れない心をしたためて/甘くはないがいつか栄光を/この手で掴んで 間違いじゃないと証明しよう》。まっすぐなメロディとパワフルなアンサンブルで、力強くバンドの理想像を掲げる“理想像”を1曲目に、ミニアルバム『Unbreakable』は、ラックライフがバンドを続ける理由がまっすぐ奏でられている。地元のライブハウスの閉店、所属事務所の移籍という別れを経て『Unbreakable』が生まれ、2020年3月15日にはツアーファイナル&結成12周年ライブとして、初のホールワンマンが行われる。その胸中をPON(Vo・G)が語る。
インタビュー=小松香里
高校の時からのホームがなくなってしまって。「でも中身はずっとあるから大丈夫」って思って曲を書いた
――大きな別れを経て、前進しようという意志がみなぎっているミニアルバムだと思いました。順番的には、収録されている6曲の中だとどの曲が一番先にできたんですか?
「新作の『Unbreakable』に入ってる6曲の中だと、“サーチライト”と最後の“Ravers”って曲が最初にできたんですが、2曲とも僕らが高校の時から出続けた高槻RASPBERRYっていうライブハウスの曲なんです。そのライブハウスが2019年3月に閉店してしまって。閉店する当日、3月31日に最後、『高槻音家族』っていうイベントがあって。全バンドシークレットで、僕らも含めて12、13バンド出て。告知もしてないのにソールドアウトで。そこに来てる250人くらい、出演者もスタッフもお客さんも僕が大好きなみんな知ってるやつらばっかで。『全員ここで出会ったやつか』って思って。ラックライフは一番最後に歌わせてもらって。場所がなくなるのは悲しいけど、それ以上に幸せを感じてしまって。大事な入れ物はなくなってしまうけど、RASPBERRYからもらった中身はずっとあるから大丈夫な気もするって思って書いた2曲なんです」
――“Ravers”はサウンドも青春感のある瑞々しいパワーポップで。
「懐かしい感じですよね。高校の時とか、バイトのスケジュール組むのにRASPBERRYのマンスリースケジュール見ながら作ってて。RASPBERRY行ったら、違う高校の同じ年くらいの友達がいて、お世話してもらってる先輩もいて。学校以外で、『また明日!』って言える関係ってなかなかないと思うんですが、僕らはチャリンコで行ける距離にそういう場所がずっとあって。楽しいことをいっぱい教わった。それでRASPBERRYの略称をもじった曲タイトルをつけたいって思って調べてたら、『REVE』に『自由奔放』って意味があって。そういう人たちがいる場所だったので “Ravers”っいうタイトルにしたんです。閉店するラスト一週間くらい懐かしいイベントが復活したりして、僕も毎日通って、あの時と同じように『また明日』って言って別れて、また次の日会うっていうのにぐっときて、なんとか形にしたいなって」
誰かのためが自分のためになるって、綺麗ごとだって思ってたけど、体感してみて「これマジやな」って
――まさにバンドの理想像が描かれている“理想像”で書かれている「僕」は、自分がうまく呼吸できないほど苦しんでいるのに、「君の幸せを願っている」と。どういう思いを込めたんですか?
「最初は自分が目立ちたいだけで、歌が好きでボーカルをやってきたのに、誰かに届くようになってから、だんだんバランスが変わってきて。喜んでもらえるから歌えるというか。誰かのためが自分のためになるんやなって。それってよく聞く綺麗ごとって思ってたけど、実際体感してみて『これマジやな』って。音楽ってすごいなって思いました(笑)。“理想像”は書きながら、『自分のことこんな全部書いていいんかな。もっとかっこつけたり、取り繕ったりしたほうがいいんかな』って思ったけど、そういう曲って自分で歌ってておもしろくないんですよね。『ここ嘘で~す』『これあんま思ってませ~ん』って思っちゃう(笑)。といっても、嘘書いたことないですけどね(笑)」
――パワフルな“理想像”“サーチライト”ときて、3曲目の“Don’t you say”はゆるい日常感があって。その対比もリアルですよね。
「これは情けない曲ですよね(笑)。オフの俺がそのままなんで、これも書いてて『いいんかな』って思いましたけど。この曲の前に“サーチライト”を燃えながら歌ってたのに、その感じ“Don’t you say”に全然ないわって思って、だらだらしながら録りました(笑)。リアリティありますよね。そういう力強い日ばっかじゃないよみたいな」
――そういう意味でいうと、“けんけんぱ”という曲もおもしろいですよね。言葉遊びが多用されてて、あと曲展開も自由で。
「なんでこの言葉が出てきたか自分でもわかんないんですよね(笑)。僕、最初メロディから作るタイプなんですけど、近所の川にアコギ持っていって、ジャカジャカ弾いてる時に、適当に口が動いて。それでできたやつをメンバーに持ってって、アレンジして。この展開のおもしろさはメンバーに助けてもらってるところかもしれないです。それで歌詞を一番最後につけました」
「(バンドを続ける)体力と情熱、君にあります?」みたいなことすごい考えてて……あるし!って
――バラードの“朝が来る前に”は《君のほんとうを聞かせてくれ》と言いつつ、自分にも何か大きなものが戻ってきて、お互い鼓舞されるような関係が歌われています。
「これ自分自身のことなんですけど、2019年の8月に事務所を移籍して。そのタイミングで、1回バンドを続けるか続けないかっていうのがよぎって。僕うじうじ悩むタイプなんで、すごい考えてて、『ほんまはどうしたいんやろな』『惰性で続けてるんちゃうか? いい歳して、この先ほんまにいけると思てる?』って。30歳って結構でかいなって。こっからもうひと踏ん張りどころかもう八踏ん張りくらいしなきゃいけないと思うのに、『その体力と情熱、君にあります?』みたいなことすごい考えてて……あるし!ってなった曲です(笑)。でもその後も、また行ったり来たりして。でも結局、自分の曲だからとか関係なく、僕は歌うこと自体が好きなんです。ラックライフ結成して曲書くメンバーおらんかったから最初書き始めて。それでずっと心削ってしんどい思いしながら曲作ってるのなんでやろって。僕、音楽聴いて初めて涙出たのが、高校生か19歳の時、高槻RASPBERRYであるシンガーソングライターの人のライブ観てて。すごいパワー感じて、ぶわーって涙出てきて。『これが歌のパワーなの?』って思って。最初賑やかなバンド観て、ああいう人気者になりたいって思って、高校2年生の時に今の4人でふざけたバンドやり始めて、次そのシンガーソングライターの人のライブ観て、『俺もああやって歌でドキドキさせたい』って思ったのが、今の根っこにあるんです。で、僕そのシンガーソングライターの人に懐いて、お兄ちゃんみたいな存在なんですけど、バンド続けるか続けないかで悩んでた時、『PONはPONだから、そのまんま思ってたこと歌ってたら大丈夫や』って言われて。それが支えになってて。その初期衝動とそれをくれた人の『大丈夫』って言葉を、30にもなってバンドやるかやらないかって人生せめぎ合いの時に思い出して、『できる気すんなあ』って調子乗っちゃって、またバンドをやってます(笑)」
―― ということは、“朝が来る前に”の歌詞に出てくる「僕」と「君」との会話は自問自答ですか?
「そうですね。“けんけんぱ”と一緒で、またアコギ持って近所の川行って、でも弾かずに、アコギ抱きながらずっとどうしようか考えてて。自分がもうひとりいる感じで。それが結構続いて。それでできた曲なんですけど、病んでますよね(笑)。月明かりの下の真っ暗な川辺で(笑)。でも僕、そういう落ち込んだ時に曲が書けるんですよね。なんもない時、落ち込むこと探してるくらいで。幸せになりたいんですけどね(笑)」
ライブでは、一生懸命用意してた言葉をぶっと飛ばしたい。全部どうでもよくなる瞬間をたくさん作りたい
「最初はめちゃふざけてバンドやってたのに、いろんなツアーしていくうちに友達もできて。ただ目立ちたいだけでバンド始めたけど、『めっちゃおもしろいやん!』って感じになってて。同級生のバンドは大学受験で軒並み解散していったんですけど、僕らあまり賢くなかったんで進学しなくて、辞める理由もないんでなんとなく続いてきた。でもそれはやっぱおもしろいからで。僕らメンバーみんな音楽あんま好きじゃないと思うですよ。ミュージシャン肌とかアーティスト気質とかじゃなくて、ほんまにただのお調子者軍団で、人が好きで続いてきたバンドだと思うんです。人に会うためにツアーやってたし。RASPBERRYの先輩バンドに、『ツアーはひたすら回るもんや』みたいな洗脳を受けて。19、20歳ぐらいの時、しっかりしたCD作ってツアーやろうってなった時、初めてのツアーで3ヶ月40本ぐらい回ったんです。お客さん全然いないのに。でもそれで各地のライブハウスのスタッフの方に『おもしろいやつ来た』って感じで気に入ってもらって、『はい! また来ます』って。その後もすぐ、お金ないのに1年で九州に5回くらい行って。家から炊飯器とお米持ってきて。全員実家住まいだったからどうにかなって。『また来いよ』って言われると、『行かなあかん』ってなる。もうそういう感じで続いてきたんですよ。だからラックライフ始めて5年間くらい、年間120本ペースでライブやってて、おかしくなりそうなくらいで(笑)。でも『曲作りも頑張らなあかん。1年に1枚はアルバム作ろう』って決めて。結局音楽は僕らにとって、誰かと会う手段、繋がっている方法というか。それがたまたま歌とギターとドラムとベースってパートと合致して、たまたま続いてて、今となってはあとに引けなくなったって感じですかね(笑)。辞めたいと思ったことは2万回くらいあったけど、辞めたら会えなくなる人が多すぎて。昔から知ってるお客さんとも友達みたいになってるし。今でもライブハウスで、名前知らないけど、『あの人よう見るな、よう泣いてるな』って思い出す人がたくさんいて。それで踏ん張れてきた。これから先も、規模とかは関係なく、結局その人たちに支えられているというか」
――『Unbreakable』のリリースツアーが20年1月から始まって、そのツアーファイナルはLINE CUBE SHIBUYAという初のホールワンマン。しかも今までで一番キャパが大きく、バンド結成日という。
「そうなんです。またそのツアーで人に会いにいって。ライブの演出とかすごい練って考えるけど、結局それがどうでもよくなる瞬間がある。ライブって、瞬発力というか閃きやから。考えてた MC と真逆のこと喋ったりするし。その瞬間にならないとわからんのが正直なところ。ちゃんと顔を思い浮かべて、一生懸命準備するけど、用意してた言葉をぶっと飛ばしたいなって思います。全部どうでもよくなる瞬間をたくさん作りたいって思います。『PONよう笑ってたなあ。こっちまでおもろくなったわ』って瞬間をたくさん作りたいですね」
“理想像”
ミニアルバム『Unbreakable』ダイジェスト
ニューミニアルバム『Unbreakable』発売中
BARE-5003 ¥2,000+税
<収録曲>
01. 理想像
02. サーチライト
03. Don't you say
04. 朝が来る前に
05. けんけんぱ
06. Ravers
ライブ情報
ラックライフ TOUR 2020「Raise The Flag」2020年1月25日(土)東京・恵比寿LIQUIDROOM
開場16:30/開演17:30
2020年1月31日(金)宮城・仙台MACANA
開場18:30/開演19:00
2020年2月2日(日)北海道・札幌COLONY
開場17:30/開演18:00
2020年2月5日(水)大阪・心斎橋BIGCAT
開場18:15/開演19:00
2020年2月15日(土)福岡・FUKUOKA BEAT STATION
開場17:30/開演18:00
2020年2月16日(日)広島・HIROSHIMA CAVE-BE
開場17:00/開演17:30
2020年2月21日(金)愛知・名古屋CLUB QUATTRO
開場18:15/開演19:00
全公演共通:前売り¥3,800(税込/D代別途)
ラックライフ TOUR 2020 FINAL & 12th ANNIVERSARY 「Raise The Flag」
会場:LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
日時:2020年3月15日(日)
開場16:30/開演17:30
一般チケット:2020年1月25日(土)10:00〜
前売り¥4,800(税込)/全席指定
提供:ユークリッド・エージェンシー
企画・制作:ROCKIN’ON JAPAN編集部