Karin.、高校最後のアルバム『メランコリックモラトリアム』に刻み込んだ「今」

Karin.、高校最後のアルバム『メランコリックモラトリアム』に刻み込んだ「今」

なんでこんなにも教室の中で自分が生き残りたい、いいイメージを持たれたいって思うのかなって思ってた時に“最終章おまえは泣く”ができました


――普通逆じゃない? 「現実を見なさい」って言われるほうが多いと思うんだけど。だからこそこんなに曲が書けるんだと思うんですよね。毎日いろんな出来事が起きるじゃないですか。いいことも嫌なことも。でも大体の人はスルーしていくんだけど、流せないんだよね、きっと。

「そうですね。毎日、たくさんの考え事してますね。年金なかったら、私どうやって生活しようとか(笑)。年収がいくらだとして、47歳とかになってからどの保険が……とか。みんなに笑われます。奨学金めっちゃ借りれた、やった!みたいな友達見て『奨学金って名前がいいだけで借金と同じだから、将来返せないと結婚もできないかもよ』とか言ったら『考えすぎだ』って言われました」

――まあ、その通りではあるんですけど(笑)。だから、Karin.さんの歌には絵空事はひとつもなくて、今いるリアルな場所とか環境みたいなものが色濃く出るんだけど、今回は学校とか教室のシチュエーションが多いじゃないですか。でもその学校っていう場所がすごく複雑ですよね。

「“教室難民”って曲があるんですけど、高校卒業したらこの曲は絶対出せないと思ったんですよ。高校生なのは今だけしかないから。何か用事があって放課後ひとりだけでいた時に、ひとりだけの教室っていうのがすごく心地よくて。帰れなくなってしまったんですよね。『私、難民みたい』って思って曲を作ったんですけど」

――どうして心地よく感じたの?

「学校で言ったらLINEとかメッセージとか、絶対嘘じゃんみたいなことでも書けるじゃないですか。それが普通の世界になってしまうならいやだなって思って。その時、教室が居心地よかったのは気を遣わないで済むから……誰もいないから何をしてもいいんだなって思ったんですよね」

――LINEとかで平気で嘘をつかれたりするのが嫌で、そこから切り離された感じが心地よかったということ?

「うん。なんか、疑って訊いたのに嘘をつかれて、何回訊いても本当のことを言ってくれなかった時に、学校が本当に嫌だと思ったんですよ。それに、みんな自慢したがるんです、自分のことを。『バイト何連勤でさ』とか。なんでこんなにも教室の中で自分が生き残りたい、いいイメージを持たれたいって思うのかなって。その時に『みんな泣けばいいのに』と思って“最終章おまえは泣く”って曲ができました。私『おまえ』って言葉がすごく嫌いなんですよ。それを使ってみたらどうなのかなと思ったんですけど、怖い曲ができちゃいました(笑)」

――うん、怖い。怖いっていうのは言葉が強いっていうことでもあるけど、教室の中の世界に対して、Karin.さんの視点っていうのがちょっと違うんだなって思うんですよね。その世界の一員なんだけど一員じゃないみたいな。

「音楽始めて……私の学校は軽音部とかもないので、神みたいな存在になってしまったんですよ。ギター弾けるんだ、歌作れるんだって。みんなと同じ環境にいるはずなのにみんなにすごいねって褒められて」

――それは快感ではなかったんだ。

「なんか、孤独を感じました。普通じゃないって言われることも多々あって……なんか新学期の自己紹介か何かで『今いちばんほしいもの』っていうので、みんなお金だったり彼氏だったりって言うなかで、私は『才能がほしい』って言ったんですよ。そう言った時にみんな『えっ?』って振り向いたんです。あ、これって普通じゃないんだなって。じゃあ私はどこにいるんだろうって思いました」

もう作れないかもしれないって言いながら毎回作ってるんです。自分の先が見えないなって。だからこそ楽しみというか、音楽やめられないんだなって思います


――けど、やっぱりそれってアーティストに不可欠な視点だと思うんですよね。“最終章おまえは泣く”みたいな曲はそうじゃないと書けないと思うんです。教室の社会がみんなにとってはすべてなんだけど、それすらも相対化しちゃっているっていうか。そこで感じる居心地の悪さとか居場所のなさが音楽の原動力のひとつなんでしょうね。

「でも、学校にいるからこの曲ができたんだなって思うと、やっぱり卒業が寂しい(笑)。学校生活が本当に楽しいって思ったのはほんのちょっとの期間だったりするんですけど、高校生のうちにメジャーデビューできると思ってなかったし」

――この2枚でKarin.の高校生編は終わるわけですよね。だから、ここからはわからないよね、自分が何を歌うのか。

「うん、ネタなかったらどうしようかなとか思います(笑)。でもデビューしてから曲を作るたびに、『もう曲が作れなくなるかもしれない』って思うんですよ。曲が増えて自分に自信がつくとともにどんどんそれが大きくなっていって。もう作れないかもしれないって言いながら毎回作ってるんです。やっぱり自分の先が見えないなって思います。だからこそ楽しみというか、音楽やめられないんだなって思います」

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