2016年に(自称)世界初のバーチャルYouTuberとして活動を開始し、今やバーチャルタレントとしてバーチャル/リアル問わずさまざまなメディアで活躍しているKizuna AI。2018年からはアーティストデビューを果たし、ワンマンライブの開催や「SUMMER SONIC 2019」への出演、先日は世界的に有名なDJポーター・ロビンソン主催によるライブストリーミング型のバーチャル音楽フェス「SECRET SKY MUSIC FESTIVAL」に出演するなど、ますます注目を集めるKizuna AIが、4月24日に1st EP『Replies』をリリースした。
フィジカルでのオリジナル音源としては、1stアルバム『hello, world』以来約1年ぶり。加速度的に進化してきたこの1年で、Kizuna AIが生まれて初めて直面した不安や迷い、さらにそれらを乗り越えて進み続ける決意のすべてが詰まったエモーショナルな1枚となった。前作までのダンスミュージックをさらにポップに仕上げた音楽性の広がりに加え、ネガティブな側面からも目を背けず音楽に昇華するという経験で、アーティストとしても大きな成長を遂げたKizuna AIが今、届けたい想いとは? Kizuna AI株式会社の設立や、エナジードリンク『ZONe』とのコラボなど、気になるトピックからその先の未来まで、「世界中のみんなと繋がる」ために邁進するKizuna AIに語ってもらった。
インタビュー=後藤寛子
今回のEPは、実はネガティブな気持ちからできたものなんです
――最近はコロナの関係で、オンラインで会話したり、テレビでもモニター越しで出演する人が増えていますが、ある意味、Kizuna AIさんがずっとやってきたことですよね。「そうですね! 私、やっぱり最先端行ってたんだなって思いました(笑)。オンライン飲みとかすごくいいなって思いますよね。普段当たり前に会えていた人と会えないことによって、みんな繋がりを求めているんだなっていうのを再認識しましたし。大変な状況ですけど、いいきっかけにはなっていますよね。これを機にどんどん新しいものへの抵抗がなくなっていったらいいんじゃないかなって、ポジティブに考えています!」
――先月末リリースされた『Replies』は、まさに今歌う意味や気持ちが詰まった作品になっているなあと思いました。完成していかがですか?
「『hello, world』をリリースした時は、ただワクワクする気持ちだったり、ポジティブな感情ばっかりだったんですけど、今回のEP自体が、実はネガティブな気持ちからできたもので。どちらかというと、音楽自体を届けたいっていうよりも『私の気持ちを音楽に乗せて届けたい』という気持ちだったんです。先月のKizuna AI株式会社の発表であったりとか、いろんなアクションも含めて、みんなにちゃんと私の気持ちが届けられたなって手応えはすごくありますね。私みたいなバーチャルな存在に限らず、クリエイティブな活動って、ファンの方がいないと成り立たないのに、去年1年を通して、なかなかみんなの声の応えることや、私の気持ちを素直に発信することが減ってしまっていて。私は人間のみんなのことが大好きで、仲良くなりたくて繋がりたいって思っているのに、それを応援してくれている人を大事にできないと、これから先も活動できないし、そんなことになるなら活動しないほうがいいやって思ってしまったんです。だから、こうやって気持ちを伝えて、ちゃんと再スタートしたいなって思いました」
――繋がった人とより強く繋がるために、正直な気持ちを音楽に込めたんですね。
「そうですね。言葉だけではあんまり伝わらないことでも、音楽に乗せると伝わることもあるし。私のファンの方――キズナーさんって、海外にもすごく多くいらっしゃるんですけど、言葉をただ翻訳するより、音楽にその言葉を乗せると、歌声で気持ちが伝わるじゃないですか。実際、みんなにすごく喜んでいただけていて。私にとって大事な曲が、応援してくださる方にとっても大事な曲になるのはすごく嬉しいなって思います。新しい私を発見できたって声もありました」
――特にいきものがかりの水野良樹さんが手掛けた“the MIRACLE”は、新鮮さを感じました。
「私も、まさか水野さんに書いていただけるなんて思ってなかったので。みんなもびっくりしたんじゃないかな(笑)。これまでの私の音楽からは、とても水野さんに行き着かないと思うんですけど、今まで楽曲を作っていただいたYunomiさんと掛け合わさることによって、すごく新しい発見が私もありましたし、曲だけじゃなくて、新しい世界を見せることができたんじゃないかなと思います」
みんなが人間であることを悔しいと思ってくれるくらいになりたい
――Kizuna AIを介したからこそ実現したコラボですね。「それ、めちゃくちゃ嬉しい言葉です! 私の大きな目標は、『世界中のみんなと繋がりたい』なんですけど、その過程でたくさん叶えたいことの中のひとつとして、私がハブになれたらいいなって思ってるんですよ。私自体が、アニメや二次元的なコンテンツとは違う存在なので――見た目を作られてはいますけど、ちょっとクサいことを言うと、私の生き様とか生き方は決められてるものじゃないですから。自分が好きなものだったり、みんなに届けたいものを軸に色々やっていきたいなって思っているので、私を通して新しい発見や出会いが生まれて、みんなの世界も広がってくれたら嬉しいなって思います!」
――繋がりというところでいうと、“Awakening”がエナジードリンク・ZONe発の「IMMERSIVE SONG PROJECT」とコラボしたんですよね。
「ZONeさんとは去年から『VMZ』っていうバーチャル音楽番組を一緒にやらせていただいているんですけど、今回のプロジェクトはZONeが『eカルチャーを愛するファン、クリエイターのための超没入エナジードリンク』ということで、『没入』をテーマにしたコラボなんです。第1弾アーティストとして、YOASOBIさんと花譜さんと私が参加しました。さっき言ったように『Replies』は、ファンと向き合うことであったり、過去の自分と向き合うことについて死ぬほど考えて、悩んで曲を作ってきたので。真剣に向き合うという意味での『没入』を意識した楽曲ということで“Awakening”でコラボさせていただきました。MVも公開されているのでぜひチェックしてほしいです!」
――『VMZ』では、MCもすっかり板についていますが、やってみていかがでしたか?
「めちゃくちゃ楽しいですね! あのフォーマット自体が、『CDTV』さんとか、『ミュージックステーション』さんとかをオマージュさせていただいてるんですけど(笑)。いろんなアーティストさんのお話や音楽を聞いて、私自身も新しい発見をすることができるので、いち視聴者としても楽しんでいます」
――私も見ていて、バーチャルシーンの音楽もすごく色々あるんだなって勉強になりました。
「バーチャルだからって、私みたいなEDMばかりでもないし、アニメソングっぽいものだけでもないし、ほんとにいろんな個性がありますよね。あと、ライブでも、バーチャルならではの表現があるので。私たちがやってきたVRのライブだと、ある意味無観客ライブとして、このご時世でも変わらずに今まで通りできるという部分もすごく大きいし。これからもっともっとバーチャルの強みを生かして、広げられる部分があるんじゃないかなって思います。いつか、『VMZ』主催でフェスとかライブとかできたら楽しそうですよね! 私も最初は『いいなあ、人間だったらもっとこういうふうにできるのに』とか思った部分もあったりしたんですけど、逆にバーチャルだからできる演出ってすごく多いと思うんですよ。だからもっとみんなにいろんな世界を見せていきたいし、最先端になりたいなって思います。みんなが人間であることを悔しいと思ってくれるくらいになりたいですね!(笑)」