LAMP IN TERREN、最新アルバム『FRAGILE』を語る。音と言葉の調和で描く「個」と「世界」はどのようにして生まれたのか?

LAMP IN TERREN、最新アルバム『FRAGILE』を語る。音と言葉の調和で描く「個」と「世界」はどのようにして生まれたのか?

自分の音楽を聴いてもらっている間は、前を向いてもらいたいという大きな責任を背負おうと思っています(松本)

――「手を繋ぐ」と並んで、もうひとつこのアルバムでよく使われている表現を挙げるならば、「生きる意味にとらわれすぎない」という描写ですね。この描写は、先ほど松本さんがおっしゃった「自分と向き合って自分を改善していくという気持ちをやめる、攻撃しない」とも繋がると思うんですけど。

松本 なるほど。確かにそうですね。でも、「自分と向き合わなくていい」って歌ったとしても、結局、考えてしまうものなんですけどね。だから自分の音楽を聴いてもらっている間は、前を向いてもらいたいという大きな責任を背負おうと思っています。

――色々起きるなかで前向きであり続けるのは、非情な現実に対する反抗でもありますからね。

松本 そのテーマはずっと自分の中にあります。僕、偉人の格言集みたいなのが好きなんですけど、ヘンリック・イプセンの言葉でも「この世の中で幸せを探すこと それこそ本当の反逆の精神だ」というのがあるんですよね。

――“風と船”からも、その言葉で示されているものと繋がるものを感じます。

松本 この曲と“ワーカホリック”は、4年前に作ったんですよ。“ワーカホリック”は、サラリーマンの友だちに曲を作ろうと思って。“風と船”は、ずっと作業をしていくなかで作ったのを覚えてます。両方ともメンバーが気に入ってくれて、このアルバムの話になった時に「これ、アレンジしたんだけど」って、ひょこっと出してくれたんですよね。

大屋 僕が言い出しっぺみたいな感じで大喜と健仁とアレンジしたんです。電話でわちゃわちゃ話しながらやったんですけど。この3人で1個の正解を作るのって珍しい体験だったので、それはそれで楽しかったです。

――大屋さんは、アレンジの勉強をかなりするようになったそうですね。

大屋 感覚的にやっている部分もあるので、「勉強してる」って言うと「理論上、普通はこうだろ?」って言われちゃうんですけど(笑)。でも、昔のアルバムに比べたら、ややこしいコードが増えたと思います。“Enchanté”なんて、ほんとにややこしくなっちゃいました。

中原 でも、そういうコードが鳴っているから、すごく雰囲気があるんですよね。デモで聴いていたものに、さらに色が付いたと思います。

大屋 大の場合は曲が先にあって、歌詞を後から付けることが多いんですけど、今回はデモを聴かせてもらった段階で歌詞を入れていることが多かったんですよね。だからアレンジをするうえで意図を汲みやすいというのがありました。

普段やっていることの中で起こった特徴的なことって、この先も別の何かに移り変わっていくだけなんですよね。世の中は異常だと、ずっと僕は思っているので(松本)

――“EYE”も、とても心地好いサウンドですね。柔らかな響きを感じながら、大人になって見えなくなっていくものについてじっくり向き合える曲だと思いました。

松本 これは「子供の純粋無垢な気持ちで駆け回りたい」という気持ちから始まった曲です。

――子供の頃の方がちゃんとできていたことって、意外とありますよね。

中原 そうなんですよね。「こんなこと、子供の頃は考えなかったのになあ」っていうのがありますから。

――たとえば、大人が器用にやれないことの代表格が恋愛ですが、幼稚園児の頃とかのほうが素直に「好き!」っていっぱい言えていましたよね?

中原 僕、婚約者がいっぱいいました(笑)。

川口 子供ってすごいですよね。大人は何か物がないと遊べなかったりしますけど、子供は公園とかで何かを見つけて勝手に遊びだしますから。そういうことを若干忘れかけてたなって、僕は外出自粛期間中に考えたりもしてました。

――この自粛期間に感じたことは、今作にかなり反映されているんじゃないでしょうか? 先ほど挙がった“宇宙船六畳間号”もそういう曲ですが、他にもあります?

松本 “チョコレート”は、コロナ離婚が増えてるっていうところから生まれた曲です。「自分がもしも一生誰かと密室で暮らすことになったら諍いが起こった時の対処法って何かな?」って考えて、「嘘を気付かれないってことは、仲がいいまま進んでいけるってことなのかな」と思ったんですよ。それはいいことだし、お互い様ですからね。

――このアルバムは最近の世の中の空気感みたいなものも、すごく入った作品ということですね。

松本 そうですね。でも、ずっと言えることでもあるのかなと思ってます。普段やっていることの中で起こった特徴的なことに引っ張られるように曲を書いてきたけど、その特徴的なことって、この先も別の何かに移り変わっていくだけなんですよね。世の中は異常だと、ずっと僕は思っているので。

――“Fragile”の《今更 気付いたよ/異常である事が普通だと/変わりながらも続いていく》って、そういうことですよね?

松本 はい。そういうことをずっと思っています。

――このアルバム、表現したかったことを形にできた手応えがあるんじゃないですか?

松本 ありますね。LAMP IN TERRENは、やりたいことがいっぱいあって、それが自分たちの音楽になってるって、すごく感じるんですよ。今回も今回で楽しかったし、ちゃんとこれを伝えていける自分たちでありたいです。

――次のツアーも、今回の曲たちを伝える場ですね。

川口 そうですね。コロナ前の通常のライブとは違った形になりますけど、「すみません」っていう感じでやるよりも、これはこれで楽しんでいったほうがいいって考えてます。

大屋 来てくれた人に楽しんでもらえるように、精一杯工夫して臨みたいですね。

中原 今、オンラインライブが主流になってきてるので、それとの違いみたいなこともちゃんと伝えられたらいいですね。

松本 ツアータイトルが「Progress Report」っていうんですけど、この期間、自分たちが過ごした日々の結果みたいなものを報告しに行く感じなのかなと思ってます。セットリスト、空気感、演奏のニュアンス、音で圧倒する、そこにいるだけで何かを体感できる時間にしたいです。

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