新進気鋭バンド・インナージャーニーにインタビュー。原点となる代表曲に、今の4人が注ぎ込んだ美学と哲学とは?

新進気鋭バンド・インナージャーニーにインタビュー。原点となる代表曲に、今の4人が注ぎ込んだ美学と哲学とは?

このバンドはカモシタサラの楽曲と歌声が大前提にあるので、それを活かすアレンジを最重要に考えている(Kaito)


――とものしんさんのおっしゃるように、カモシタさんの歌詞は、色濃い思想が表現に姿を変えているんですよね。特に“グッバイ来世でまた会おう”は「僕が死んだらのら猫になって会いに行く」という高い物語性があるので、いろんな捉え方ができるし、その見せ方は映画表現と通ずると思うんです。

カモシタ わ、うれしい(笑)。映画好きだから、自然とそういうものが出てきたのかな。映画に含まれている物語は身の回りにも起こり得ることだし、「死」も絶対にみんなに回ってくるものですし。この曲はずっと信じて歌い続けていきたい……でもこの曲が生まれてから今までの3年間で、心変わりもあって、「来世なんてない」という曲を作ったりもしていて(笑)。来世はないかもしれないけど来世を信じていたい、と今は思っています。

Kaito サポートを頼まれて歌詞を読んだ時に、彼女にしか出せないニュアンス――あんまりこういう言葉は使いたくないですけど、天才的なセンスを感じたんです。この子すごいなって。このバンドはカモシタサラの楽曲と歌声が大前提にあるので、楽器隊としてはそれを活かすアレンジを最重要に考えています。

――今回再録された“グッバイ来世でまた会おう”は、アレンジを大きく変更することはせずとも、音色の奥深さが増している印象がありました。

本多 インナージャーニーというバンドになって初めての“グッバイ来世でまた会おう”の録音だったので、個人的には前の音源より自分のクセが感じられる音を入れたいなって。ギタリスト感を意識しました。

Kaito サポートを頼まれたタイミングで、サラちゃんが“グッバイ来世でまた会おう”のバンドアレンジの打ち込みデモを送ってくれたんですけど、彼女はドラムの打ち込みがあんまりうまくないので(笑)、そこは僕がある程度考えました。それからアレンジやフレーズはほとんど変えていないんです。

とものしん 僕もサポートを頼まれて初めてスタジオに入った時から、フレーズを一度も変えてないかな。そもそもサラはベース経験者なので、デモには自分で弾いたベースを入れてたんですよ。そんなにうまくない……というか下手なんですけど(笑)。

――カモシタさん、リズム隊からかなりズバズバ言われてますけど(笑)。

とものしん (笑)。でも、「こんなフレーズ思いつかないな」とハッとする、いいベースを弾くんですよ。だからほぼほぼ採用して、それ以外のところで自分なりに遊んでみました。サポート時代の“グッバイ来世でまた会おう”と今回の“グッバイ来世でまた会おう”の大きな違いは、ピック弾きに変えたところかな。音を止めてみたり、アタックを出してみたり、ピックをペンチで切って変形させて弾いてみたりして。音色に対して試行錯誤しましたね。

Kaito 僕も今回のレコーディングではグレッチのビンテージモデルをレンタルしたり、いろいろシンバルを持っていったりして、テックさんと一緒に細かいところまで音作りにこだわりました。

メンバーの音に対する美学を感じなければ、わたしはこんな歌歌えなかった(カモシタ)


――アレンジを劇的に変えてアップデートするのではなく、音色を磨くことに注力した、ということですね。

とものしん “グッバイ来世でまた会おう”はサラのデモの時点である程度完成されていたし、バンドの代表曲でもあるので、大きく変えすぎるのもな、と。だから音作りや、バンドのグルーヴ感を出すことに重きを置いていましたね。バンドとして動いてきたことで、曲に対してもバンドに対しても取り組み方は深くなっていきました。

カモシタ 前に録音した時は、感情を抑えた歌のほうが聴いてくれる人の心にすんなりと入ると思っていたんです。でもバンドになってからみんながそれぞれ試行錯誤しながらどんどんグッとくる音で演奏していて、この3人の音に乗るからこそ伝わる歌い方がもっとあるんじゃないかと思って。だから今回は、今までのようなぽそぽそとした歌を歌いつつ、聴いてくれる人に伝えたい!という気持ちを込めました。

――楽器隊に感化されて、バンドでなければ歌えない歌が歌えた。まさにバンドマジックですね。

カモシタ 作った当時の気持ちも、今の気持ちもどちらも込められました。会えない人も多かったり、人との関わり方について考えることが多いご時世ですけど、だからこそこの曲に書いたことをみんなに知ってもらうことが大事なんじゃないかなって。メンバーの音に対する美学を感じなければ、わたしはこんな歌歌えなかった(笑)。バンドだからこそ、説得力を出せたんじゃないかと思います。

――今回の再録で“グッバイ来世でまた会おう”は深みが増して、リスナーに発見を与えてくれる曲に成長したんじゃないかと思います。それは各メンバーがこの曲と向き合い続けてきたからでしょうね。

Kaito 今僕らができる最大限のことはできたかな、とは思ってますね。

本多 今回、「こういうふうに弾きたい」って迷いなくレコーディングできたんです。何度も演奏してきたからこそ、自分にとってのこの曲の正解に辿り着けた。自分の好きなことをどんどんぶつけていって、最終的にかたちにできるのはバンドだからこそだと思う。サラのサポートという立場ではできなかったことが、どんどん実現できていると思いますね。

とものしん ずっと演奏し続けていた曲だから身体の一部みたいになっていて、新鮮味があるわけではないんです。でも、再録した音源を聴いて、「ああ……いい曲だなあ」と素直に思って(笑)。それは、「いいものを録れた」、「カモシタサラの音楽が届けられた」ってことなんだろうなと思ってます。

カモシタ このメンバーはみんな聴いてきた音楽も、考え方も性格も全然違うんです(笑)。まとまらないことも多いし、だからこそこの2年、このバンドはとんでもない化学変化が起こっているのかなと思っていて。この先どうなったとしても面白いものを作れる気がするので楽しみなんです。メンバーを信じて、これからも進んでいきたいです。

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