これまでDIYに徹してバンドを動かしてきた5人にとって、メジャーレーベルとタッグを組んでの活動によって開かれる扉は数多くあるはずだ。その中で何を新たに得て、何を守っていくのか。依然として怒涛の勢いが続く昨今の活動からいくつかの印象的なシーンを振り返りながら、新曲“Bouquet”がどのようにできあがっていったのか、この先のNELKEはどんな道を歩んでいこうとしているのか、岐路の上で抱く心境に迫った。
インタビュー=風間大洋
──昨年末にROCKIN’ON JAPANで取材させてもらって以降も、いろいろと動き続けていますよね。まずCOUNTDOWN JAPAN 25/26のCOSMOステージの大トリがあって。Zepp DiverCityのライブは、自分たちは変わっていくんだろうな、変わらなきゃいけないな、って強く思った(Kei)
RIRIKO(Vo・G) CDJは、ライブ中は堂々とできた印象だったけど、出番が朝3時50分だったのに(フロアの)全員が元気に活動しているから「本当に3時50分!?」って頭がバグってハイになっちゃって(笑)。頭の中は真っ白だったのに言葉とか歌詞は勝手に出てくる、みたいなゾーンに入って、ちょっとフワフワしてたかもしれないですね。
ちゃんしお(Key) 始まった時の景色もそうだし、終わったあとも「なんだったんだ、今の!?」みたいな。これまでキャパを増やしながらワンマンライブをやってきた中で、全く次元の違う景色が見えている状態でした。
──ああいう大きなステージでライブをする自分たちって、想像と比べてどうでした?
RIRIKO 想像以上の自分たちだったと思います。特番(YouTubeのJフェスOFFICIALチャンネルで実施したCDJのライブ特番)で観返しても「やっぱりかっこいいな」みたいな感覚はあって。
伊藤雅景(G) あのキャパは、頭の中で思い描いてたフェスの光景そのものだったもんね。
RIRIKO そうそう! 憧れてたフェスのアーティストに本当になってる!みたいな感じでした。
──その後、Zepp DiverCityでツアーファイナルがあって。前のめりでアグレッシブであると同時に、しっかり自信を持って地に足をつけたライブだったなと思うんですが、今振り返るとどうでしたか?
Kei(Dr) やっぱりZepp DiverCityって特別な場所というか。高校、大学の時に観に行ってたバンドがワンマンやってる舞台に、この2~3年で来てしまったので、本当に大丈夫かな?って気持ちもありつつ⋯⋯バンドをやっていると節目や分岐点みたいなものが定期的にあると思っていて。僕のイメージだと去年のJAPAN JAM、その前のLIQUIDROOMのワンマンが、見える景色が一気にグワッと変わった場所だったなって。今回のZepp DiverCityも、ここから自分たちは変わっていくんだろうな、変わらなきゃいけないな、みたいなことを強く思う会場だしライブだったなと思います。
タケダトシフミ(B) メジャーデビューの発表があるライブでもあったので、「お客さんの反応はどうなのかな」「自分はメジャーデビューするアーティストとして相応しいのか」とか、半分はこれからのことを考えてやってましたね。それだけNELKEにとって大事なターニングポイントだったんだと思います。
──実際お客さんからの反応はどう受け止めましたか。
RIRIKO 発表した瞬間にワーッとお客さんがアガってくれて⋯⋯ちょっと出鼻を挫かれた時用のMCとかも考えてたんですよ(笑)。「メジャー行っちゃったかぁ」みたいな反応だったらこれを言おう、みたいな。でもそういうのは取っ払って、素直に喜んでくれるみんなのためにNELKEは大きくならないといけないな、と思ったのが正直な感想ですね。
──ポジティブに受け取られない懸念自体はあったと。
伊藤 メジャーデビューしたバンドを外から見て抱く印象として「このバンドがこうなるんだ」と思うこともあったので、メジャーに行って離れるお客さんの心理もわかるっちゃわかるというか。でもNELKEに対しては、逆にメジャーが似合うバンドになるんだろうなって最近は思えてます。周りからはトントン拍子に見えていてもみんな下積みが長くあったから、自分たち的にはずっとやっててやっとメジャー、やっとZeppに立てたという感覚でもあるので。だからこそ自信を持ってやれると思うし、自分たちに対してはポジティブな未来を想像できてます。
ちゃんしお 始めた頃はメジャーレーベルに所属するのは想像もできなかったけど、徐々に周りに力を貸してくれる人たちが増えて。グラデーション的にみんなの意識も変化してきて、気づいたら一致していた感覚でした。
RIRIKO チームが大きくなったことで「この人たちとNELKEの曲はもっと広まるべきなんじゃないか」と思ったりもして。Zepp Shinjukuを目標に始まったバンドだけど、もっと大きな景色をこのチームは見るべきなんじゃないかって思ったのが、メジャーを選ぶうえで結構大きくて。
Kei 作るもののクオリティとしても、自主制作だと限界はあったりするので。自分たちだけでミニマムに完結させようとすると、言ってしまえばなるべくお金をかけないようにとか、そういう思考が働くし。今の段階でも多くの人に届けることができているけど、レーベルの力を借りることで、さらにそのもの自体のクオリティが上がったら、次はどういう広まり方をしていくんだろう?って。
──アウトプットの仕方を変えるのではなく、これまでの動きや作品に上積みをすることに価値を感じたということですね。
RIRIKO はい、進化って感じですね。そこもグラデーションで考えていて、インディーズの最後にリリースした『Continuum』の新曲3曲からレコーディング環境とか機材のクオリティでは力をお借りしていたけど、その曲たちには少しこれまでの要素を入れたりして。急に変わった感じよりも「この曲のここに似てる」というような部分を大事に、みんなが気づかないうちにクオリティがどんどん上がってる、そんなイメージです。
──その『Continuum』に続くメジャー第1弾リリースの“Bouquet”は、まさにここまで話した中で出てきた、それぞれの想いや葛藤、そのうえで「大丈夫だ」と先に進もうとする意思がそのまま曲になっている曲ですね。これまでの話であり、これからの話でもあるという。“Bouquet”はタイアップ曲ではないから、NELKEのオープニング主題歌にしちゃおうと思って(RIRIKO)
RIRIKO そうなんですよね。タイアップ曲とかではないから、それならNELKEのオープニング主題歌にしちゃおうと思って。ここから始まる物語の曲というのと、これまでの2年という短い時間の中ですごく密度の濃い経験をさせていただいた、その物語もちゃんと表したくて。出会って初めて5人で作った曲の歌詞を入れたし、NELKEが節目節目の曲で使ってきた「花」を全部掻き集めて“Bouquet”=花束にするイメージで。
Kei 本当にこの節目に相応しい曲だと思いました。最初から応援してくれる人から見ても、始まりのあの時のことをまだ大切にしてるんだなって感じてもらえるような、過去と今っていうか⋯⋯なんだろうね?
RIRIKO 過去があって今があって、出会ってくれたみんなと未来を目指したい、そんな想いです。曲のテンポ感で言うとNELKEの中ではかなり速い曲で挑戦ではあったんですけど、歌詞で希望とか夢とか歌うのはあんまりNELKEらしくないなと思って。ちょっと文学的というか、情景が浮かぶと言われる部分は大事にしながら、新しいことに挑戦できた曲なんじゃないかと思います。
タケダ ⋯⋯速すぎだなとは思いましたけどね。
RIRIKO どう弾くんだろう、これ?と思いながら作りました(笑)。
ちゃんしお 最速だもんね、テンポとしては。
RIRIKO ただ、めっちゃ疾走感を出すというよりはしなやか、伸びやかみたいな部分を大事にしたかったんですよ。だから音価が長いフレーズやメロディを取り入れたりという意識でした。