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    人間模様を多彩な切り口で表現するMOSHIMO。メジャー1stアルバム『化かし愛』について4人が語る

    人間模様を多彩な切り口で表現するMOSHIMO。メジャー1stアルバム『化かし愛』について4人が語る - Photo by かわどうPhoto by かわどう

    「こっちのほうがいいんじゃない?」とか、みんなでアイディアを出し合って作っていくことができました(汐碇)

    ――各楽器の音も、すごく作り込んでいますよね?

    高島 そうですね。たとえば“化かし愛のうた”だったらお化けっぽいテイストにしたくてドロッとした音にしたし、そういうのは歌詞からのインスパイアなので、やっぱり歌詞は大事ですね。あと、アコギの音が入っている“青いサイダー”は、そのアコギと同じ材質のドラムを使ってシンクロ率を上げています。“3年前に別れた彼はどっかの誰かと結婚したらしい。何とも言えない何とも言えない何とも言えない敗北感の歌”は、修正ができない「せーの!」で、みんなで勢いで録ったんですけど、そんなトライもできたレコーディングでした。

    汐碇 「こっちのほうがいいんじゃない?」とか、みんなでアイディアを出し合って作っていくことができましたね。

    ――サウンドと歌詞の言葉の響きも、絶妙に融合させていますね。

    岩淵 「どのメロディで韻を踏むか?」とかも考えますから。最近、楽曲提供をさせていただく機会もあるので、より、そういうことも考えながら作るようになっていますね。他の人が歌う時に合う言葉やサウンドについて考えることを経て、自分たちに向けて作れたのがこのアルバムなんだと思います。

    一瀬 楽曲提供をさせていただく時は、その人たちの活かし方を考えて作っていくんですけど、そういう経験も自分たちにフィードバックできています。あと、MOSHIMOに関しては岩淵が経験してきたことを表現するバンドにしたいというのもあるんですよね。「岩淵の経験から滲み出てきたものを、どう具現化していくか?」ということです。そこで見つけたフックから広げていくんです。

    ――岩淵さん、作品を出す度に人生を公表していますよね?

    岩淵 そうですね。恥ずかしいですけど(笑)。“断捨離NIGHT”とか。

    高島 “断捨離NIGHT”、歌詞が好き。《4年半付き合った感情》とか、リアルだよね。

    岩淵 いい人でしたね……。

    汐碇 思い出してる(笑)。

    一瀬 “蜂蜜ピザ”は、元彼がクアトロフォルマッジの蜂蜜ピザが好きだったんでしょ?

    岩淵 そう。一緒に頼んで、「食べきれない!」ってなって冷凍して、次の日に解凍してみたいなこと……してたねえ! これ、“断捨離NIGHT”と同じ人です。ひとりの人に関することをいくつも切り刻んで曲にしているんです。

    ――このアルバムを作って改めて感じた自分の作風みたいなものはあります?

    岩淵 メンバーに言われて気づいたんですけど、私は感情の起伏が激しいみたいで。ライブのMCとかではまっすぐに「フラれた!」って言っちゃうんですよね。楽しい時は「楽しい!」って言うし、「何事にも全力!」みたいな感じが曲にも表れているんだと思います。そういう曲を聴いて元気になってもらえることがあるみたいです。「私もフラれたけど、勇気をもらえました」とか言ってもらえるので。みんなが生活している中で感じる一部始終に前向きに溶け込める音楽を作り続けたいっていうのは、すごくあります。

    きれいにまとまってるんですけど、きれいごとじゃない曲がたくさん入れられました(岩淵)

    ――昔からの知り合いの高島さんから見て、このバンドの変化は何か感じます?

    高島 俺、たぶん、前身バンドのCHEESE CAKEの頃のポチと喋ったことないんですよね。ステージではちゃんとやってるけど、普段は喋らなかったから。

    岩淵 そうですね。CHEESE CAKE時代とか、私は4年くらい引きこもりでしたから。

    一瀬 ほんと、そんな感じだったと思う。

    岩淵 もともと音楽を始めたきっかけも、人に気持ちを伝えるのが苦手だからなので。でも、今はいろんな人とコミュニケーションをとることによって、それぞれの人生と触れ合いながら歌詞を書いたりするようになったんです。視野が狭いと、楽曲提供をする相手が思うことを想像できないですからね。「もうひとりの自分になって客観的に考える」みたいな作業が必要だと感じるようになりました。そうなったことによって今のMOSHIMOがあるんだと思います。いろんな人と触れ合ったことによって「ネガティブなんだけど、笑顔でまっすぐに進みたい」、「不器用だから、そんなにきれいなことは描けない。じゃあ、自分をそのまま歌詞にしよう」ってなっていったんです。そういうことがより凝縮されたのが、今回のアルバムですね。

    ――理想通りではない人生のことを描いている“調子どう?”も、そういう曲ですね。

    岩淵 はい。理想通りになったことは、まあないですから。他者に理想を求めると押し付けになるし、調和もズレるし。とはいえ、「バンド以外で生きていけますか?」と訊かれたらたぶん、社会不適合者だから無理なんです。だから、落ち込んだとしても柔軟に対応して生きていくことが大事。人にはそれぞれの生き方、好きなものがあるし、そういう人たちがライブに集まってくれたら、「めんどくさいね? 何も考えずに楽しもう!」って一緒に楽しんで、次に進みたいんですよね。そうやって泣いたり笑ったり、人生を共にしながら生きていけるバンドでいたいから、「みんなどう? 元気? ウチらもちょっとヤバいけど(笑)。でも、みんなで乗り越えよう!」みたいな感じで作ったのが“調子どう?”です。これをアルバムの最後にしたことできれいにまとまってるんですけど、きれいごとじゃない曲を(このアルバムには)たくさん入れられましたね。

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